私のマンションに暴力団幹部が賃借人として入居してしまいました。退去を求めたいのですが、どう対処すればよいですか。(S生)
中村 暴力団幹部はどのような人ですか。
――現在対立する暴力団との抗争が問題となっている組の幹部クラスの人です。
中村 迷惑の度合いはどのようなものが?
――抗争中ということで、長期間にわたって二十四時間パトカーがマンション前に常駐し、警官がマンションの中にも入って防弾チョッキ着用のうえ警戒している状況です。
また警察がその住戸の前の共用廊下に監視用のビデオカメi奄設置し、その廊下を歩く人は住民も含めて写ってしまいます。
しかし管理組合としては、安全のために警察の要請を承諾せざるを得ませんでした。退去を管理組合として求めたいのですが、一方その暴力団幹部の人は家族と住んでおり、特に組事務所として使用しているわけでもありません。しかし、住民も長期にわたる警戒態勢にまいっています。
中村 あなたのマンションの事案の場合に、区分所有法の迷惑居住者の排除の規定が適用できるかが問題となるでしょう。
区分所有法五七条以下には、迷惑居住者の行為に対する制裁条項があります。賃貸住戸の場合、管理組合から裁判所に対して契約解除ならびに立ち退きを求めることができるという規定があります(区分所有法六〇条)。
これまでこの規定を適用して暴力団組長、オウム真理教教団施設などの排除を認めた判決がいくつか出ています。オウム関係の判決では、周囲の居住者に対する強度の不安感、恐怖感などの心理的悪影響をもととして契約解除を認めています。
私はたとえその使用形態が純粋に住居としての使用であっても、暴力団幹部の使用により、住民が現実的な迷惑を被っていることによって解除請求は認められると考えます。
管理組合としては、住民の方々の不安を取り除くためにはこのような法律の定めなどを指摘して、その住戸の貸主や当該暴力団幹部に対して退去を求めるように断固働きかけることが必要です。
特に貸主の方の対応は、カギを握ります。貸主は暴力団と知って貸したのでしょうか。
――いえ、隠されていたようです。
中村 すると、貸主と借り主の間の信頼関係に関わることです。貸主も契約を解除することが可能と思いますし、契約の更新を拒絶する方法もあるでしょう。現実的にはこれらの方法が一番解決に結びつくでしょう。貸主にも暴力団を恐れない対応をするように求めてください。貸主が説得に応じない場合は、管理組合総会で特別決議を行い、区分所有法六〇条の訴訟提起をすることとなります。
この問題は各地の弁護士会の民事暴力担当の部署に直ちに相談してください。
(2001年08月22日)
|