五千万円のマンションを購入する契約をして五百万円の手付金を払い、残りは住宅ローンを申し込んだのですが、承認されませんでした。ローンを組まなければ買えないので契約を解除したいのですが、できるでしょうか。その場合、手付金や仲介手数料はどうなりますか。(神奈川県・F生)
横松 契約の中に融資が実行されないときは、解除できるという意味の条項がありますか。
――はい。A銀行から四千五百万円の住宅ローン融資を受けること、融資が実行されない場合は九月二十日まで解除できる、その場合はすでに受領した金員は返還するという一項があります。
横松 それは通常、「ローン条項」とか「ローン特約」と呼ばれているものです。
住宅などをローンを組んで購入しようとして承認がおりず代金が支払えない場合、本来であれば契約違反になります。その結果、手付金は没収され、さらに違約金を取られるということもあり得ます。
これではローンを組んで購入することが事実上困難になるため、売り主にとっても買い手を見つけることが難しくなります。そこでこのような特約がしばしば設けられます。
――では私も問題なく解除できますか。
横松 ローン条項の適用を受けるためには、買い主がローンを受ける努力をしたにもかかわらず、買い主の責任でない理由により承認がおりなかったという事情が必要です。
ローンについては契約後、直ちに申し込みましたか。
――契約前から下話はしていましたので、契約後すぐに正式に申し込みました。
横松 承認が下りなかった理由は。
――A銀行では、年間の返済金の年収金額に占める割合の限度が決まっていて、私の年収がそれにわずかながら足りないということです。
横松 それはやむを得ませんね。売り主側は何と?
――売り主の不動産業者に、ローンがだめなようだから解除したいといったのですが、年収が少し足りないからといって貸さないのはおかしい、解除期限を延長してほかの銀行を紹介する、それでもだめな場合は解除を認めるといわれました。
横松 この場合、金融機関の不承認の理由が妥当かどうかということは関係ありません。
また、所定の金融機関に対して速やかに申し込みを行い、期限内に承認が出なかった以上、期限を延長してほかの銀行にさらに申し込むという法律上の義務もありません。
したがって、ローン特約に基づき解除して手付金の返還を受けることができます。この場合、成約しなかったことになりますから、仲介手数料も不要になります。
(2001年09月19日)
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