私は都内で、総数八十戸で七階建てマンション七階の一戸を所有しています。今回、下の部屋の住民から私の部屋の汚水が漏れているので修理するように求められました。調べたところ、確かに私の部屋の下水の排水管が下の部屋の天井で漏水していました。私の部屋の外にある排水管まで修理費用は私が持たなければならないものでしょうか。(東京都・W生)
高畑 この排水管はあなたの住戸の専用部分にあるものですか。
――いいえ、漏水していたのは、排水管の枝管です。それは私の部屋の床下にあるコンクリートスラブを貫通して下の部屋の天井裏に配されたものです。この枝管と隣の部屋の下水の排水管の枝管が先で合流して、本管に流入するようになっています。
高畑 その枝管の修理は、あなたの部屋からできるのですか。
――いいえ、できません。下の部屋の天井板の裏に入って修理するしかありません。
高畑 昔は、本管は共用部分だが枝管は専用部分だというのが一般的でしたが、最近では違う考え方をとる学説も出てきています。
ある説では、原則として本管は共用部分、専有部分の専用に供されている枝管は専有部分に属するが、専有部分の専有に供されていても専有部分の内部に存在しないものについては共用部分であるとされています。また、別に排水管は機能の共用性および共用管理の効率性から一般に共用部分に当たるという説もあります。
――ちょっと難しくてよく分からないのです。私の部屋の外の排水管の枝管についてまで、無条件で私が責任を負わなくてはならないというのはおかしいと思うのです。
高畑 最近の学説は、あなたのいっているようなことを考慮して共用部分の範囲を広げてきています。「専用部分の専用に供されている」というのは、「あなただけが使っている」ということです。
――なるほど、それなら分かります。私のケースではどうなりますか。
高畑 こうした最近の考え方からいくと、あなたのケースでは専有部分の内部に存在しない排水管の枝管ですから共用部分ということになるでしょう。実際、自分の部屋から修理もできない排水管の責任をとるようにいわれても困りますよね。
あなたのケースと類似した事案で、区分所有者全員の共用部分に当たるとした最高裁判例(平成十二年三月二十一日判決)が出ています。
――すると、私のケースでは、だれが修理費用を負担するのでしょうか。
高畑 管理組合ということになりますね。
(2001年10月17日)
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