マンションを購入しようと、手付金および中間金を支払って後で南側隣地に十一階建てのマンションが建築されることがわかりました。中間金は返してもらったのですが、手付金も返還してもらいたいたおのです。可能でしょうか。(神奈川県・Z生)
高畑 マンションを購入する目的は、どのようなものですか。
――郷里から母親を呼び寄せて同居するつもりで、日照がよいことがこのマンションを買う条件だと、不動産売買大手のこの販売業者には念を押しました。
また、担当者も隣地の空き地は相続税の物納で財務相の管轄となった土地なので、相当期間、高層建物は建たないし、建つにしても変なものは建たないでしょうと言っていました。
高畑 隣地にマンションが建つと、日照はどうなりますか。
――冬至の時には、一日に二時間しか日照がないことになります。これでは母親を呼び寄せてもかわいそうです。
高畑 そうですね。隣地にマンションが建たないという担当者の説明は書面にしているとか、テープにとってあるとかはしていますか。
――いえ、こんなことになるとは思ってもいませんでしたので、ありません。
高畑 その説明はほかのマンション購入者の前でもしているのでしょうか。
――いえ、皆さんへの説明が終了後、私が個人的に質問したときのことですので、ほかの皆さんにしているかどうか分かりません。
高畑 わかりました。
あなたとほぼ同様の事案には、東京高裁平成十一年九月八日の裁判で「手付金の一部を返還することを認めた」ものがあります。その要旨は次のようになっています。
「売り主は不動産売買に専門知識を有する株式会社で、買い主は専門知識を有しない一般消費者であるから、売り主は売却物件の日照などに関し正確な情報を提供するとともに、誤った情報を提供して、本件建物の購入に関する判断を誤らせないようにする信義則上の義務」があります。
「売り主は、財務相が何らかの用途に供給する目的で取得した土地ではないから、早晩財務相がこれを処分し、中高層建物が建築され、本件建物の日照が阻害されうることを当然予想できた」から、「本件販売に当たり、その旨営業社員に周知し、そのような可能性があることを買い主に告知すべき義務があった」というものです。
まず、この最高裁判決を指摘して、販売業者と交渉することです。
(2002年11月20日)
|