十階建てA棟と七階建てB棟の二棟からなるマンションです。外壁補修工事を開始したのですが、A棟一階の喫茶店が工事に協力しないため、工事が一部ストップし、予定より一カ月ほど遅れています。工事妨害をやめさせることはできないでしょうか。(神奈川県・P生)
横松 その店舗が協力しないのはどういう理由からですか。
――外壁補修のために足場を組む必要があるのですが、喫茶店の経営者は、店舗の看板が見えづらくなるし、店舗がほこりっぽくなるからというのです。
横松 ほかに店舗はありますか。
――同じ一階に薬局や中華料理店、総菜店があります。受ける影響は同じですが、どの店も特にクレームはなく工事に協力しています。どの店の看板も主な部分は見えるようにしていますし、ほこりなども最小限におさえるようにしています。
横松 工事の事前説明は行われていますか。
――定期総会で工事実施を、臨時総会で工事業者を決定し、その都度説明をしています。喫茶店の経営者は賃借人ですが、家主の区分所有者は総会に出席し賛成しています。
工事の三週間前には住民向けの説明会を開いていますが、店舗の方は出席していません。
ただ、工事の決定内容や実施工程については、その都度掲示板に張り出しています。
横松 工事の影響が必要最小限の合理的な範囲であれば、足場を拒否することは正当とはいえませんね。
喫茶店側との話し合いは行われましたか。
――工事業者と担当理事が説明にいきましたが、どうしても足場を架けるなら、実力で阻止するとすごまれて帰ってきました。これでは工事がストップしたままです。何とかできないでしょうか。
横松 正当な理由がなく工事が妨害されている場合、緊急の手続きとして、賃借人を相手に工事妨害禁止の仮処分命令を申し立てることが考えられます。
――家主の区分所有者は、賃借人のいうことももっともだなどと言い出して、何の指導もしようとせずに非協力的なのですが、家主も相手にすることになりますか。
横松 区分所有者が直接妨害行為をしていなくても、賃借人に何ら指導しようとしないなど、事情によっては共同の相手方にすることも考えられます。
――命令が出るまでの時間は。
横松 通常、裁判所が相手を呼び出し、言い分を聞いた上で命令を出すかどうかを判断します。
工事の時間帯や方法などを工夫することで、家主や賃借人が工事に協力し妨害しないことを約束すれば、裁判所が間に入って和解で解決することもあります。
早ければ二〜三週間で結論が出ると思います。
( 2002年02月20日 )
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