私は市内で十六戸のマンションの管理組合の理事をしています。管理費を滞納している人がいて、内容証明郵便で支払いの督促をしたいのですが、支払ってもらえません。どうしても管理費を支払ってもらいたいのですが、裁判所で支払い命令を出してもらえるのでしょうか。(兵庫県・O生)
高畑 支払い督促(新民事訴訟法第三八二条)の申し立てを裁判所に出した場合、最終的に仮執行の宣言を付した支払い督促に対し督促異議の申し立てがないときには、この支払い督促に確定判決と同一の効力が与えられます。異議申し立てがあると通常の訴訟となります。ところで、滞納している人は実際にその場に住んでいるのですか。
――いいえ、ここには住んでいません。その部屋を賃貸ししているのです。
高畑 内容証明郵便は誰あてに。
――持ち主あてに管理費月額一万二千円を七カ月分支払ってほしい旨を書いて出しましたが、返事がありません。私のところは自主管理ですが、十六戸のうち十戸が施工業者が賃貸ししており、残りは個人の所有です。施工業者からは、住んでいる賃借人から管理費を取ればよいではないかといわれました。
高畑 賃借人は持ち主の賃貸人に管理費あるいは共益費を支払っているのでしょうか。
――払っているようです。できれば今住んでいる人から管理費をもらうようにしたいのですが。
高畑 そうできれば便利ですね。確かに賃借人が支払っている管理費あるいは共益費と、マンション所有者が管理組合に支払っている管理費とは、内容的にはほとんど同じです。
しかし法律的には別個の権利ですので、話し合いをして持ち主の承諾を得て賃借人から管理費の支払いを受けるようにすべきです。
支払い督促を行って持ち主が異議を申し立ててきた場合、多少時間はかかりますが、その裁判の中で話し合いをして賃借人からの支払いを認めてもらえばよいと思います。
もし、話し合いで認めてもらえなければ、やむを得ないので確定判決をもらい、持ち主の財産に対して、強制執行していくことになります。この際には、賃借人の支払っている賃料についても強制執行の対象となります。
――少額訴訟との意見もありますが。
高畑 少額訴訟は、新民事訴訟法第三六八条以下において認められた制度で、訴訟の目的の価格が三十万円以下の金額の支払いを目的とする場合に可能です。少額訴訟では一期日審理の原則がとられていますので、早期に紛争を解決することが期待できます。
しかし注意しなければならないのは、相手方が通常の手続きへの移行を求めたときには、通常の裁判になる点です。この場合には支払い督促で異議申し立てがなされた場合とそう変わらないことになります。
(2002年03月20日)
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