構造壁を取り払って20年 震災時の保障責任は誰に

回答者 弁護士 中村宏さん(横浜合同法律事務所)

 

 築二十七年のワンルームマンションで理事長をしています。新築当時は一階が二つに間切りされて売り出され、そこを店舗として購入した人がありました。その人は数年後に、間仕切りの壁と柱を取り払ったのです。最近、ある区分所有者から、「万一、震災が起きた時は理事長や管理組合理事会に損害賠償をするようになる」と言われたのですが。(岐阜県・N生)


中村 その間切りされた壁とは?
――私が当時の販売図の一階平面図を建築士に見せたところ、建築士は単なる間仕切壁ではなく、構造壁というのです。建築会社はすでに倒産しています。元に戻してもらうようにする費用は誰の負担になりますか。

中村 構造壁なら共用壁になりますね。原状回復費用などの損害賠償請求を行なうことになります。今もその人は区分所有者ですか。
――はい、そうです。

中村 それなら間仕切りを取り払った人の責任です。もし、その後所有者が代わっていれば、その人にも責任があります。
 もう二十年たっていますか。
――はい、たっています。

中村 すると時効が成立しています。
――マンション管理組合の理事会は、どこまで個人責任を負うことになるのでしょうか。

中村 取り払う行為をした人の行為によって、ほかの区分所有者が損害を被ったとすれば、それは管理組合ではなくてその区分所有者の人が責任を負うべきです。
 理事会の責任といっても、当時の理事長、理事の責任です。その後の理事は、管理組合総会で決定されたにもかかわらず執行しなかったなどの事実があればともかく、そうでなければ基本的に責任はありません。
 ただ管理組合が、知っていながら二十年放置していた、それだけの期間があれば直すことができたのに怠っていたという側面があるとすれば、管理組合が責任を果たしてこなかったともいえます。
 したがって現在の理事長であるあなたの責任が発生することはまずないと思われます。


(2002年11月20日)



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。


著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp