「現在十二学級(児童数約三百六十人)の小学校が、二〇〇八年度には二十七学級(約九百五十人)になりそう」――。東京・江東区のある小学校の話です。マンション建設ラッシュで、居住者が急増したことに伴うものです。小学校の教室や保育園が足りないなど、全国的にも異常な事態が起こり始めています。新入生の教室は... 江東区は、この五年間で二万五千人の住民が増加し、さらに五万戸規模の建設が予想されています。
枝川小学校は、十九学級から二十九学級(〇八年度)への学級数増加が予測されています。今年度は、予想を上回る入学があり、急きょ体育館の日陰になるPTA会議室を教室にあてるという事態が生まれました。さらに学級増となれば、次はランチルームなどを教室にせざるをえません。
区の推計によると、来年度は二十学級、再来年は二十一学級、その後も二十二学級、二十四学級、二十七学級、二十九学級と増え続けます。枝川小学校の普通教室は十九なので、来年度から新たな策が必要です。
普通教室が十四ある豊洲小学校は、現在の十三学級が二十四学級(二〇〇八年度)に、普通教室が十二の東雲(しののめ)小学校は十二学級から二十七学級に、普通教室が十三の第五砂町小学校は十三学級から十八学級など、ほかのいくつかの小学校でも学級増が予測されています。
これは、すでに計画が進行しているものや、建設中のもの以外のマンション建設がないという前提での数字です。待機児多いのに 江東区は、保育園に入れない幼児(待機児)も多く、今年四月時点で三百九十二人。その一方で、区民の声を無視して公立保育園が廃園になっています。枝川小学校区内に住む北野裕子さん(仮名)も、零歳の息子が区立保育園に入れず、認証保育所に預けています。「園庭もなく、道路を横切って遊びにいくので不安。来年四月から区立に入れたらいいんですが、厳しそうです」と話します。六年後に入る小学校の教室不足のことは「そんなことまで考える余裕がない。まずは保育園です」。一方で大型開発 江東区は、都心に近く比較的安く買える、工場移転などで広い用地が生まれたことなどでマンションが急増しています。
同区は、マンション急増対策として、学校などへの受け入れが困難な地域での建設中止・延期要請などを四月に決定しました。
「緊急避難的な方策としては理解できます。しかし、そもそも区自体がIHI(石川島播磨重工業)や三菱製鋼の跡地に数千戸〜万単位の大規模な開発を呼び込んでいます。それでいて小学校の新設計画は一校だけ、公立保育園は作らないなど、『街づくり』についての基本的な考えができていないことが重大です」と大嵩崎(おおつき)かおり区議(日本共産党)は言います。
「マンションに引っ越してくる人は、近くに保育園や小学校があるのを見て、当然自分の子どもも入ることができると思っています。直ちに対策を立てることが必要なのに、区は"財政難だから""集合住宅は居住者がやがて高齢化し、子どもも少なくなるから"と保育園や学校の増設に消極的です。事業者に『福祉や教育への十分な配慮』を求めるだけでなく、区の責任で学校や保育園、学童保育などを整備すべきです」開発だけでなく 国や東京都は「都市再生」政策で、開発をいっそう進めようとしています。さきの通常国会では建築基準法が改悪され、マンションも建てやすくなりました。
大嵩崎さんはこう言います。「これ以上に無秩序なマンション急増が起きたら大変です。区がちゃんとした街づくりの計画を持つこと、それにもとづく必要な規制ができる権限を自治体に認めることが必要です」
しんぶん赤旗
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