「円滑化」する仕組み必要/築年数だけで判断は問題多い
マンションには一千万人以上が居住するようになっています。マンションの老朽化問題や、このほど成立したマンション建て替え円滑化法について、日本共産党衆議院議員の瀬古由起子さん(国土交通委員、党団地・マンション対策チーム責任者)に聞きました。
衆院議員 瀬古由起子さんに聞く5分の4こす合意が必要
――最近、分譲マンション関係者のなかで、マンションの建て替え問題が話題になっていますね。
瀬古 マンションにしても戸建て住宅にしても、建築後一定の年限が経過したら、いずれは建て替えに直面することになります。戸建て住宅であれば、持ち主の判断で建て替えることができますが、分譲マンションは複数の区分所有者(各戸の所有者)がいるため、老朽化などで建て替える場合は区分所有者の合意が必要です。現行は区分所有法で、五分の四以上の賛成で建て替えができるという制度が設けられています。
では、老朽化とはどういう状態をいうのか。現在では、この点は区分所有者の判断にまかされています。いざ、建て替えの合意をはかるうえでもこのことがネックになり、マンションの管理組合の連合体である日本住宅管理組合協議会(日住協)はもう十年以上前から、この問題のシンポジウムを開き、検討を重ねています。
ところが、昨年になって、小泉内閣の「都市再生プロジェクト」にマンションの建て替えが盛り込まれたことから、政治や行政の問題としてクローズアップされてきました。
新しい市場化ねらう業者ら
――いま「三十年」とか「四十年」といわれているのはどういうことですか。
瀬古 法務省の諮問機関である法制審議会の区分所有法部会で、老朽化の決議ができる建築後の年限など、基準案の検討が進められ、三月に中間試案として公表されました。このなかで、一つの基準として、建築後三十年あるいは四十年経過したら建て替えの要件が整う、とする案が公表されました。部会の最終結論で年数などがどうなるのかは、まだ定かではありません。しかし、デベロッパー(開発業者)などは、三十年、四十年で建て替えるのが当然であるかのような既成事実をつくり、建て替え事業を新しいマーケットにしようとしています。
「三十年」「四十年」を含め、いわゆる老朽化の基準については、最終的には、区分所有法改正案として提出されたときその内容に即して判断することになります。
今日の状況からして、単に三十年もしくは四十年という年限だけで老朽化したと判断するのは問題があると考えています。
戸建てにない複雑な問題が
――日本共産党は、ことしの通常国会で成立した「マンションの建て替えの円滑化等に関する法律」に賛成しましたね。
瀬古 はい、今国会で、この法律は全会一致で成立しました。
マンションはいずれ老朽化による劣化で建て替えに直面します。しかし、最初に言いましたように、マンション建て替えには戸建てにはない複雑な問題をかかえています。
例えば、マンションには区分所有法に基づいて管理組合がありますが、建て替えのために既存の建物を取り壊すと同時に管理組合はなくなってしまい、建て替え事業の主体が不明確なまま事業を進めなければなりません。区分所有権はもとより、賃貸している人の賃借権などあらゆる権利関係を新しい建物に引き継ぐために、登記関係の複雑な手続きも必要です。また、建て替え費用がねん出できないなどの理由で建て替えに参加できない、区分所有者の居住の保障などの問題があります。
区分所有者の負担を軽減
こうした問題に対応するための措置を盛り込んだのが、この「円滑化法」です。区分所有法の問題であるいわゆる「三十年、四十年問題」とこの法律は別問題です。この建て替え円滑化法は、建て替え組合の設立などマンションの老朽化による建て替えをおこなううえで、区分所有者の負担を軽減するために、一定有効な内容となっていることから賛成しました。
管理・修繕で“長寿化”が基本/管理組合への行政支援が必要
――マンション建て替え円滑化法案審議のなかで、日本共産党はどんな態度をとったのですか?
瀬古由起子衆院議員 「円滑化法」は、この法律によって設立で きるマンション建て替え組合にデベロッパーの参加を可能とするなどの問題点をもっています。日本共産党は区分所有者(各戸の所有者)や建て替え不参加者の権利を守るための質疑を行いました。衆議院では大幡基夫議員が「老朽化」の判断基準の問題点について、私がマンションを長寿化するための法整備の検討を要求しました。参議院では富樫練三議員が行政のマンション相談窓口の整備について、大沢辰美議員が阪神大震災の倒壊マンション建て替えについて質問しました。
民主的議論と専門家の援助
――共産党は、マンションの長寿化をはかるべきとの立場ですね?
瀬古 マンションの長寿化の問題は、委員会でもとりあげており、行政はもちろん区分所有者自身も、真剣に取り組む課題だと思います。また、ほとんどのマンションは、管理と修繕をきちんとおこなうことにより、三十年、四十年よりはるかに長持ちさせることが可能だろうと考えています。
しかし施工、立地、管理などの諸要因から、それほど遠くない時期に建て替えに直面するマンションが存在することも直視しなければなりません。建て替えを検討する場合、そのマンションの状況を正しく把握することや、建て替える場合と修繕する場合の費用を比較して検討すること、区分所有者の合意形成など、民主的な議論と専門家の援助が必要です。その結果、建て替えすることになった場合は、建て替えを円滑にすすめるための措置が必要なことはいうまでもありません。
区分所有法の改正も議論に
――今後の動きや課題はどうでしょうか。
瀬古 昨年成立した「マンション管理適正化法」は今年五月から完全実施されています。今国会で「マンション建て替え円滑化法」が制定され、区分所有法の改正も秋の国会で議論になるといわれています。これら一連の立法は、マンションが都市型住宅の主流となるなかで、国も一定の対応を迫られているということもあります。一方、デベロッパーやゼネコンの要求にこたえたという側面もあります。
今後必要なことは、日常の管理や建て替え問題について管理組合が主体性をもって管理に当たれるように行政が支援することです。そのためには、「マンション管理適正化法」などを含めて、適切な見直しも必要だと思います。(おわり)
しんぶん赤旗
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