〈問い〉 「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書検定合格の問題で近隣諸国から批判の声が出ていることにたいし、「内政干渉だ」という議論があります。どう考えたらよいでしょうか。(福島・一読者)
〈答え〉 「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書の検定合格について、日本のアジア侵略や植民地支配を正当化しているとして、被害を受けたアジア諸国が批判の声を上げるのは当然であり、「内政干渉」だとの批判はあたりません。
韓国の「東亜日報」社説(三月一日付)は、「日本の近代史歪曲(わいきょく)は、すなわち韓国と中国の近代史を歪曲することを意味し、韓国、中国の政府が『当事者の資格』として異議を申し立てているのだ」とのべています。
同時に、問題の教科書の検定通過は、日本がそれら諸国にたいして明らかにしてきた、過去の侵略・植民地支配への反省の姿勢にも反するものであり、それらの国が日本の言行不一致を問題にするのを「内政干渉」というのは的外れです。
教科書検定で「侵略」から「進出」への書き換えがおこなわれたことが問題化した八二年、日本政府は「アジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、…二度と繰り返してはならないとの反省と決意」をのべ、その精神は「学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重」するとの談話を発表。それをうけ検定基準に近隣諸国の意向に配慮するとの条項が加わりました。
九五年、戦後五十年にあたって、当時の村山首相は、“国策を誤り、植民地支配と侵略によって、アジアの諸国民に多大の損害と苦痛を与えた”とし、「痛切な反省」と「心からのおわびの気持ち」を表す談話を発表。このような日本側の歴史認識と反省の基本的姿勢は、九八年に訪日した韓国の金大中大統領や中国の江沢民主席と、小渕首相(当時)との間で調印された「日韓共同宣言」「日中共同宣言」で、国の最高首脳間の約束となりました。
日本の外務省も「内政干渉だと認識するのは無理」(槙田邦彦・アジア大洋州局長)と、日本共産党の石井郁子議員にたいし答弁しています。(寿)
〔2001・5・6(日)〕
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