2000年4月29日(土)

 サービス残業を批判した最高裁判決とは?


 〈問い〉 最高裁が、過労自殺訴訟で、サービス残業容認の企業姿勢にきびしい判決をくだしたそうですが、判決の内容と意味を詳しく教えてください。(神奈川・一読者)

〈答え〉 お尋ねの最高裁判決は、三月二十四日に出された電通過労自殺訴訟の判決です。訴訟は、大手広告代理店・電通の社員・大嶋一郎さんが、月八日の徹夜残業など常軌を逸した長時間労働のはてにうつ病になり、自殺した事件で、両親が「睡眠時間もとれない労働条件でうつ病になったのが原因」として、同社に損害賠償を求めたものです。

 判決は、企業の責任を明確に認め、「使用者は業務の遂行に伴う疲労や心理的負担等が過度に蓄積して、労働者の身心の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」と指摘。大嶋さんの職場(ラジオ局ラジオ推進部)では「長時間にわたる残業を行うことが常況となって」おり、従業員の申告する労働時間が実情より少ないことを会社側は知りながら放置していたこと、会社側は「大嶋さんの健康状態が悪化していることに気付いていた」のに「業務の量等を適切に調整するための措置を取ることはなく」、その結果、大嶋さんは疲労こんぱい状態になり、それが誘因になってうつ病にかかり、自殺するに至ったことなどを認定しました。

 いま、多くの職場では、労働者の「自主申告」を名目にしての無償のサービス残業が常態化しています。これは、労働基準法に違反するものです。

 最高裁判決が、過労自殺をめぐり、サービス残業を批判し、企業の責任を認めたことは、企業側に労働者の身心状態の健康を損なうことのないように責任をとらせ、過労自殺を防止する上で積極的意義をもつものです。

 日本共産党は、リストラによる横暴な解雇への規制措置とともに、サービス残業の一掃、労働時間短縮による雇用拡大の提案をしてきました。サービス残業で企業側の責任を厳しく断罪した最高裁判決は、企業の横暴への社会的規制が避けられないということを司法も認めざるを得なくなってきたことを示しています。(豊)

 〔2000・4・29(土)〕



機能しない場合は、上にあるブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。