2000年5月1日(月)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 掛け算の九九を小学校二年で教えるような授業は、昔と比べ難しいと思います。教える内容はどのように決まるのですか。(大阪・元教員)
〈答え〉 小学校二年生で「掛け算九九」をすべて教えるようになったのは、一九七〇年代からです。五〇年代では、三年生で、その後も二〜三年生にかけて教えていました。低学年からの「詰めこみ教育」が進行してきたのです。
こうした教育内容の変更は、文部省の学習指導要領の改訂によるものです。学習指導要領は、幼稚園、小・中・高等学校の教育内容を定めるものとして、学年・教科ごとの学習内容を詳細に記しています。文部省は、ほぼ十年ごとに変更し、その際、教育課程審議会での教育内容の検討と答申を受けた形で改訂してきました。
教育課程審は、文部大臣任命の委員で構成され、「こういう検討をしてほしい」という文部大臣の諮問を受けて、教育内容の検討をします。諮問にあたっては、文部省の担当官より詳細な説明が加えられます。このように構成も内容も、文部省主導の審議会であり、実際、これまでの答申は、諮問する文部官僚の意向を具体化したものとなっています。また、審議会には必ず大企業や経済団体の代表が数名加わり、経済界の意向が反映されるようになっています。経済界は、自らの「人づくり」の育成をめざし、詰めこみと過度の競争による「差別・選別」を教育に求めてきました。これが、難しすぎる教育内容に結びついています。
ある文部省関係者が小学校の教育内容について「三割の子どもがわかればいい」(NHKの特集番組)とのべたことがあります。こうした発言が生まれるのも、学習指導要領の作成が国民不在でおこなわれているからにほかなりません。
「授業がわからない」ことが、学級崩壊の一因との指摘もあります。それだけに、深刻な子どもの教育の現状を解決するためにも、子どもたちの人間的成長を真に保障する教育内容をつくるためにも、どう国民の英知、諸科学の成果などを結集していくかが、求められているといえます。(田)
〔2000・5・1(月)〕
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