「神の国」発言は「特定宗教と無関係」か?


 〈問い〉 森首相は、「神の国」発言は特定宗教に肩入れするものではないという趣旨のことをいっていますが、どう考えたらいいでしょう。 (宮城・一読者)

 

 〈答え〉 森首相は特定宗教についてのべたものではないとか、自然の中に人間を超えるものを見るという考え方についていったのだなどと国会で弁明しましたが、これは国民をあざむくものです。

 森発言は、「日本の国」は「天皇を中心とする神の国」だ、このことを「国民にしっかり承知していただく」というもので、戦後、日本が新しく出発するにあたって否定した戦前の天皇崇拝の思想=皇国史観そのものです。発言は、神社本庁の政治団体・神道政治連盟(神政連)の国会議員の集まりでのべたものです。神政連の綱領は、「神道の精神を以(もっ)て、日本国国政の基礎を確立せんことを期す」といい、「神意」(神の意思)を奉じて「安国(やすくに)」=国を治めるとうたっています。森発言は、その本音をのべたものです。

 戦前、天皇は主権をにぎるだけでなく、「現人神(あらひとがみ)」とされ、明治憲法で「神聖ニシテ侵スヘカラ」ざる存在として神格化されました。一方、国民は天皇に仕える「臣民」(家来)とされ、教育勅語をはじめ、天皇のために命を投げ出す道徳思想が押しつけられました。学校では天照大神(あまてらすおおみかみ)から現天皇に至るまで日本は「万世一系」の天皇が治める「神の国」だという虚偽の歴史が教えられました。神社神道は事実上、国教とされ(国家神道)、天皇の絶対的権威と「神の国」思想を根拠づけ、国民は神社参拝を強制されました。「神の国」思想は、天皇の威光を世界に広める(八紘一宇=はっこういちう)として、侵略戦争を正当化しました。

 戦後の日本は、この歴史の教訓にたって、主権は国民にあること(主権在民)、信教の自由と政教分離の原則を憲法でうたい、出発しました。森発言は、この憲法のもっとも根本的な原理と理念を否定するものであり、首相の資格はありません。(豊)

〔2000・5・22(月)〕



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