2000年4月27日(木)「しんぶん赤旗」
一九九七年、日米審判交流で来日しジャッジを務めたアメリカの審判員が、中日の選手、監督に暴行を受け、身の危険を感じて辞任、帰国した事件が起きた後、両リーグ会長は「審判にたいする暴力行為の根絶を期し、(リーグ)会長が強い態度でのぞむ」という声明を出しました。今回の事件が起きたことで、球界全体で暴力を許さない自己規律を確立することの重要さがあらためて指摘されています。
野球規則は、「審判員の判断に基づく裁定は最終のものである」と定めています。球界自身が審判を重んじ、その地位の向上に努めることが重要です。元セ・リーグ審判員の谷村友一さんは、「グラウンドから暴力をなくすためにも、審判のもつ重みを球界の総意にしなければなりません」(本紙五月十一日付)と語っています。
今回の事件では、審判労組がリーグに厳重に申し入れたほか、ファンからも暴力問題を告発する動きが出ています。それだけ“暴力を許さない”世論は大きな流れになっています。暴力事件が後を絶たない裏には、ゲームに過度の白熱化を演出する傾向があるという問題があり、それが選手や審判員への人権軽視を生み出しています。
もともと近代スポーツは、野蛮な暴力を根絶し、民主的な人間関係を生み出す文化として発展してきました。スポーツは、暴力を排除し、選手・審判の人権を保護してこそ成り立つ文化です。子どもたちのあこがれでもあるプロ野球が、そうした自覚をもつことがつよくのぞまれます。(豊)
〔2000・6・1(木)〕
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