天照大神は戦前どう教えられた?


 〈問い〉 森首相の「神の国」発言に出てくる天照大神は戦前どのように教えられたのでしょうか。神棚に初もうでで買ったお札がありますが、天皇とかかわりのあるものなのですか。(千葉・一読者)

 〈答え〉 戦前、天皇は「現人神(あらひとがみ)」として神格化され、明治憲法は、「大日本帝国ハ万世一系(ばんせいいっけい)ノ天皇之(これ)ヲ統治ス」(第一条)、「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」(第三条)と定めました。この絶対的な天皇主権の国家体制を維持するために、日本は天照大神(あまてらすおおみかみ)を祖先神とし、代々続く(万世一系)天皇が治める「神の国」だという教育が徹底しておこなわれました。

 一九三四年当時の国定教科書『尋常小学国史』では、最初に「天照大神」の項目が置かれ、「天皇陛下の御先祖を、天照大神と申し上げる。大神は御徳のたいそう高い方で…萬民(ばんみん)をおめぐみになった」等々と教えています。これらの記述は、古事記、日本書紀の神話をもとにしているものの、天皇中心の「神の国」思想を植えつけるため、さまざまに脚色されています。「建国」神話もその一つで、戦前は天照大神の命を受けて、孫のニニギノミコトが高天原(たかまがはら)から高千穂の峰に下ったと教えられましたが、日本書紀の本文では、命令を下すのは天照大神でなく、タカミムスビノ神という別の神です。これらの神話の内容に子どもが疑問を抱くことは許されませんでした。

 日本古来の神社神道(しんとう)は、事実上国教化され(国家神道)、天照大神を祭る伊勢神宮を頂点とするピラミッド型の神社体系に再編され、国民は神宮、神社への参拝を強制されました。神国思想とその教育は、戦前の侵略主義・軍国主義の精神的推進力の役割を果たしました。

 神棚のお札は、大麻(たいま)といって、神社が、災厄をはらい幸いをまねくためとして氏子や崇敬者に授与する護符です。伊勢神宮の大麻は、かつては天皇崇拝に利用されました。(豊)

〔2000・6・5(月)〕



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