2000年 8月20日 (日)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 政府は、厚生白書などで、高齢者は所得や貯蓄の水準も高くなったといって、「豊かな高齢者」像を強調しています。実際はどうなのでしょう。(宮城・一読者)
〈答え〉 ご指摘のように、七月発表の二〇〇〇年版厚生白書は、高齢者(六十五歳以上)が世帯主の世帯の一人当たり所得は、二百三万円で、全世帯の一人当たりの所得(二百二十三万円)とそん色ないとか、高齢者が世帯主の世帯の貯蓄は、その他の世帯より高い等といって、「豊かな高齢者」を印象づけようとしています。これは、商業新聞も「平均だけでは高齢者の実像をとらえきれない」と指摘したように、格差の著しい高齢者世帯の現実を「平均」にならすことでごまかすものです。
高齢者世帯の年間所得は、平均は三百三十六万円ですが、階層別に所得水準を見ると、年所得百五十万〜二百万円の階層がもっとも多く、年所得二百万円以下の世帯が全体の三七%を占めています(九九年度「国民生活基礎調査」)。生活保護基準は、一人暮らしの高齢者で年間百二十万円程度、夫婦世帯の高齢者で年百六十万円程度(二級地)ですから、保護水準以下の高齢者世帯が大量に存在するということです。
貯蓄率が高いのも、所得が多いからではなく、高齢者の多くが将来不安を抱き、生活費を切り詰めて貯金しているのが現実です。世帯主が六十歳以上の世帯の貯蓄額は、平均二千三百四十六万円ですが、ここでも世帯間の格差は顕著で、三千万円以上の世帯が八・四%ある一方、二百万円以下が三三・一%、貯金なしの世帯は一一・九%にのぼります(九八年度「国民生活基礎調査」)。
政府がこのように高齢者の現実をごまかし、「豊かになった高齢者」を宣伝するのは、高齢者に一律に負担をかぶせる方向での福祉・医療制度のいっそうの改悪をねらっているからです。
いま必要なのは、生活保護基準、あるいはそれ以下の水準の高齢者世帯が大量に存在している現実を直視し、高い利用料が払えないために介護サービスを受けられない人が続出している問題の解決を含め、国が社会保障への責任を果たすことです。(豊)
〔2000・8・20(日)〕
機能しない場合は、上にあるブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。
著作権:日本共産党中央委員会 〒151−8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4−26−7 |