中高一貫校をどう考える?


 〈問い〉 文部省は、全国に中高一貫校を五百校つくるといっていますが、これをどう考えたらいいのでしょうか。(埼玉・一読者)

 

 〈答え〉 中高一貫教育を部分的に導入するという構想は、橋本前内閣の六つの改革のうちの一つである「教育改革」の目玉の一つとして打ち出されたものです。現行の六・三・三制とは別に六年一貫教育の学校を創設することによって「学校制度の複線化」をねらったものでした。

 中高一貫教育の制度は、一九九九年四月にスタートしました。ところが、現在準備されているものをあわせても公私で三十四校にすぎません。そこで文部省は、昨年九月の「改訂・教育改革プログラム」で、高等学校の通学範囲に少なくとも一校(全国で五百校程度)整備されるようにと書き込み、この一月十七日にその方針を具体化して「中高一貫教育の推進について〜500校の設置に向けて〜」をまとめました。

 文部省は、それを推進するための予算を、来年度は今年の四割増しの二十三億二千六百万円計上するとともに、各都道府県などの生徒数の減に対応した高等学校再編整備計画などで中高一貫教育校の整備計画も位置づけよとはっぱをかけています。

 「中高一貫教育」には、(1)六年制の「中等教育学校」、(2)同一の設置者が設けた中学校と高校をつなげる「併設型」、(3)既存の市町村立中学校と都道府県立高校で連携する「連携型」の三つの方式があります。これらのうち前者二つは、中学校区を高校程度にあるいはそれ以上に拡大して中学校の入り口で選抜をおこなうものです。これらの方式は、選抜競争の低年齢化を招くものとして関係者から批判がでています。連携型も、高校段階での選抜を残すなど、青年期教育を分断しているという問題を解決していません。

 いま求められているのは、学校制度の複線化を招き、受験競争の低年齢化に拍車をかけることではなく、選抜を排してすべての青年に高校教育を保障することです。そのためにも、現在の高校教育の「多様化」に再検討を加えると同時に、中高一貫した教育課程による中等教育の実現が図られるべきです。(楠)

〔2000・2・20(日)〕



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