2000年11月16日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 審議が始まった船舶検査法案は、昨年成立したガイドライン法(戦争法)にかかわる法案だそうですが、どう関係するのですか。(三重・一読者)
〈答え〉 船舶検査法案は、アメリカがアジア・太平洋地域で介入・干渉行動を起こす「周辺事態」に際し、自衛隊が公海上で民間船舶への乗船・検査をおこなえるようにする法律です。戦争法の政府原案にもりこまれていましたが、当時与党だった自由党が、国連安保理決議を船舶検査活動の根拠にしている原案では拒否権が行使されると検査活動ができなくなる、それではアメリカの要請にこたえられないと主張したため、原案から削られました。
船舶検査法案はその後、与党三党で検討され、安保理決議がなくても、「周辺事態」の際、自衛隊がアメリカと一緒になって船舶検査活動ができるように改悪されて提出されたものです。
最大の問題は、アメリカと日本が、経済制裁対象国およびこの国と交易する諸国の同意を得れば、これらの国に属する船舶への検査活動ができるようにしたことです。しかし、経済制裁をうける国が「同意」するとは考えにくい話です。そこで政府は、同意には「黙示的同意」もあると強弁し、実際には、アメリカと日本が、「(船舶が所属する)旗国が同意していると判断される場合は問題がない」(衆院本会議での山口富男議員への河野外相答弁、九日)ということにしました。つまり、国連安保理決議がなくても、アメリカと日本の勝手な判断で、船舶検査を実施できるとしたのです。
「周辺事態」とは、米軍がアメリカの「国益」のために、国連と無関係に干渉・介入して軍事力を行使することです。アメリカはこれまで経済制裁を実施するための臨検をこの干渉と介入政策の有力な常とう手段としています。九四年の核開発疑惑を口実とした北朝鮮制裁のときには、アメリカの協力要請を拒否せざるをえなかった日本ですが、法案が成立すれば自衛隊は米軍作戦の一環としての船舶検査活動をおこない、米軍を大いに助けることになります。
自衛隊の艦船による「接近・追尾・伴走・進路前方における待機」等の強制的な停船活動が、憲法九条の禁じる武力による威嚇・武力の行使にあたる、危険な軍事作戦であることは明らかです。
(山)
〔2000・11・16(木)〕
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