2001年3月11日(日)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 最近、母性保護条約という条約が話題になりますが、どういう条約なのですか。(東京・一読者)
〈答え〉 女性労働者の平等、母子の健康と安全を促進するための母性保護にかんする国際的なとりきめには、ILO(国際労働機関)の三号条約(産前産後における婦人使用に関する条約、一九一九年)を先駆として、いくつかの重要な条約があります。第二次大戦後、国連の採択した世界人権宣言は、二五条で「母と子は、特別の保護及び援助を受ける権利を有する」と、基本的人権を守る立場から明記。この流れの中で、ILOは、四八年、女性の夜間労働にかんする八九号条約を採択、続いて五二年、産前産後の休暇などについて詳しく定めた一〇三号条約(母性保護に関する条約)を採択しました。
この一〇三号条約が昨年、女子差別撤廃条約をはじめとする国際的なとりきめをふまえて四十八年ぶりに改定され(一八三号)、二〇〇〇年の母性保護条約といわれています。
条約には、女性は十四週間を下回らない出産休暇を受ける権利をもつこと、休暇中の女性は金銭及び医療の給付を受ける権利を有することをはじめ、哺育(ほいく)中の労働時間短縮の権利と相応の報酬を求める権利、業務の中断は労働時間として計算され報酬が与えられること、等々が規定されています。
改定条約では、所得保障についてこれまでと同様に、従前の所得の「三分の二を下回ってはならない」としていること、条約が適用されるのは「いかなる差別なくすべての女性」としていることなどが注目されます。日本では産前産後休暇中の所得保障について、労働基準法などに規定がなく、健康保険から出産手当金として賃金の六割が支給されているにとどまっています。また女性労働者の四割をパート労働者が占めるなどの現実があるからです。
日本政府は改定条約の採決に棄権し、従来の母性保護条約も批准していません。労働基準法の女子保護規定が撤廃されるなど国際的な流れに反する事態が進んでいるだけに、母性保護条約の早期の批准と、その内容に即した母性保護の拡充を要求していくことが重要になっています。(龍)
〔2001・3・11(日)〕
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