〈問い〉 二〇〇〇年に企業・団体献金を禁止するかどうかの「見直し」がされるそうですが、経団連会長が「企業、個人としても社会の一員として、こうしたコストを負担していかなければいけない」と、企業献金の存続を主張しています。どう考えますか。(埼玉・一読者)
〈答え〉 企業が「社会の一員」であることを否定する人はいませんが、それを理由に企業献金を合理化することはできません。現行法でも、たとえば、企業と同様に法人でありながら、公益法人やNTT、JRなどのいわゆる公企業の政治献金は禁止されています。「社会の一員」であるかどうかは、政治献金が許されるかどうかの根拠や基準にはもともとなりえないものです。
選挙などで支持する政党に政治献金をおこなうことは、憲法で保障された国民の参政権の一つで、国民代表を選ぶ選挙権、投票権と結びついたものです。ですから、問題の核心は、憲法によって選挙権、投票権を保障された国の主権者に企業がなりうるのかどうかにあります。いうまでもなく、企業は主権者ではなく選挙権ももっていません。その企業が、政党や政治家に金をだして政治に影響をあたえれば、主権者である国民の基本的権利が侵されることになります。企業の政治献金は、国民主権という憲法原則と相いれないものです。
企業は、利益を得ることを本来の目的にする営利団体です。そういう企業が政治に金をだせば、”投資”にみあう”見返り”を要求することは避けられません。現に、企業のトップ自身が、企業献金は「どうしても利益誘導型になってしまう」(熊谷直彦・三井物産社長、「日経」一九九三年六月二十四日付)と認めるように、企業献金は「事実上のワイロ」という性格を免れません。
このように企業献金は、どの面からみても国民主権、議会制民主主義と相いれないものです。だからこそ、リクルート事件や佐川急便事件など「政治とカネ」をめぐる腐敗事件が問題となった「政治改革」国会(九四年)で、政治資金規正法が改められ、二〇〇〇年までに、政治家にたいする企業・団体献金は「禁止する措置を講ずる」、政党にたいするものも「見直しを行う」とされたのです。この課題をずるずる先送りすることは許されません。(重)
〔1999・3・29(月)〕
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