〈問い〉 ダイオキシンが問題になっていますが、これはどういう毒性をもっているのですか。(埼玉・一読者)
〈答え〉体重の減少、皮膚炎、肝臓障害、神経症、生殖毒性、免疫力の低下、発がん性、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)作用など、ダイオキシンの毒性は多岐にわたります。生殖毒性では、精子の減少、排卵の停止、子宮内膜症などで妊娠できなくなったり、流産や早産が起きます。生まれてくる子どもに奇形を生じさせる作用もあります。
毒性の現れ方には、急性毒性と慢性毒性とがあります。急性毒性は、毒物を摂取すると短期間のうちに現れる毒性で、その強さは、実験動物に摂取させたときに半数が死ぬ量(半数致死量)で表されます。ダイオキシン類のなかでもっとも毒性の強い2、3、7、8TCDD(四塩化ダイオキシン)のモルモット(オス)の半数致死量は体重一キログラム当たり〇・六〜二・一マイクログラム(一マイクロは百万分の一)。これは、青酸カリの約千倍、サリンの二倍の毒性に相当します。
慢性毒性はごく微量を長期間摂取したときに現れる毒性です。一生にわたって毎日摂取しても慢性毒性が現れないと考えられる量を「耐容一日摂取量(TDI)」といいます。世界保健機関(WHO)は昨年五月、ダイオキシン類のTDIの見直しをおこない、一日に体重一キログラム当たり一〜四ピコグラム(一ピコは一兆分の一)とし、究極的な目標としては一ピコグラム以下にすることを決めています。
厚生省はTDIを一〇ピコグラムとしています。日本共産党の「ダイオキシン類の未然防止と汚染除去にかんする特別措置法案大綱」では、人の一日最大摂取量の基準を体重一キログラム当たり一ピコグラムとしています。
同じような毒性をもつ物質としてダイオキシン、ジベンゾフラン、コプラナーPCB(いずれも多種類の総称)があり、ダイオキシン類と呼んでいます。毒性の強さは種類によって異なるため、ダイオキシン類の濃度を問題にするときは、種類ごとに量を測定し、毒性の強さから2、3、7、8TCDDの量に換算したうえで加算して算出します。(前)
〔1999・4・24(土)〕
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