「シナ」ということばが差別的とは?


 〈問い〉 東京都知事になった石原慎太郎氏が中国を「シナ」と呼んだことについて、「差別的だ」という批判がでました。このことばは、なぜ差別的なのでしょう。(和歌山・一読者)


 〈答え〉 「シナ(支那)」ということばは、中国古代の王朝の一つ「秦(シン)」が語源といわれ、英語の「チャイナ」も同じ出所だとされています。日本にも、仏典を通じてこの名称が伝えられ、江戸時代にしだいに普及し、明治時代にも引き継がれました。

 このように、「シナ」は、外国人が中国を呼ぶ用語として、それなりの歴史的根拠をもっています。しかし、問題は、それが、戦前・戦中、日本の中国侵略と結びついて、中国にたいする侮蔑(ぶべつ)語として使用されたことであり、中国国民はこの呼称を拒否しています。当時、日本政府は、「中華民国(中国)」というその時期の正式国号を無視し、ことさら「シナ」、「シナ人」などと呼んで、中国と中国人をさげすむ態度をとりました。これは、中国侵略戦争のさい唱えられた「膺懲(ようちょう)支那」(「支那を懲罰せよ」)などというスローガンに端的に示されています。

 戦後は、侵略戦争への反省を重要な柱とする憲法が施行され、中国(一九四九年十月以降、正式名称=「中華人民共和国」)との関係でも、日本は「戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」(七二年の日中共同声明)ことを確認しています。

 こうした歴史の真実を直視すれば、中国を「シナ」と呼ぶことは、単に時代錯誤というだけでなく、過去の侵略戦争への無反省がその根底にあることは明らかでしょう。

 中国の当局やマスコミは今いっせいに石原氏の一連の発言を批判しています。三月十二日の新華社(中国の国営通信社)電は、「戦時中日本が中国を侮辱するために使った『支那』」を口にしている石原氏は「大日本帝国の思想を持った」人物である、と指摘しました。(平)

〔1999・4・29(木)〕 



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