”君が代の「君」は象徴天皇のこと”とは?


 〈問い〉 政府は国会で「君が代」の「君」とは象徴天皇のことだといっています。私は「君」とは「あなた」のことと思っていましたので驚きました。どういうことですか。(岩手・一読者)

 

 〈答え〉 「君が代」は、今から千年以上も前の『古今和歌集』に収められた「読人知らず」の和歌に始まる、親しい人の長寿を願う歌でした。ですから、もともとの歌では、「君」は「あなた」の意味で使われていたわけです。

 明治になって、ときの政府が曲をつけ、「君」とは「君主」つまり天皇の意味だと勝手に決め、「国歌」として国民に押しつけました。このことは今の政府も、「日の丸・君が代」法案を審議しているこんどの国会で、戦前の「大日本帝国憲法の精神をふまえ、『君が代』の『君』は日本を統治する天皇の意味で用いられ、『君が代』の歌詞も天皇の治める御代が末永く続き栄えるようにという意味に解釈されてきた」(野中官房長官、七月一日の衆院内閣委員会)と認めています。

 「大日本帝国憲法」下の天皇は、「神聖にして侵すべからず」(第三条)とされ、立法・行政・司法権の頂点に立ち、軍の最高指揮権、宣戦布告権、非常大権など強大な権限をもつ文字どおりの専制君主でした。「君が代」はまさに、この専制君主としての天皇の治世をたたえる歌だったのです。戦後、こうした絶対主義的天皇制が否定され、「国民主権」が憲法に明記されたわけですから、「君が代」がいまの憲法のもとで国歌にふさわしくないことは明白です。

 ところが小渕内閣は、「『君』は日本国および日本国民統合の象徴であり、その地位が主権の存する日本国民の総意に基づく天皇を指」(小渕首相、六月二十九日の衆院本会議での答弁)すなどといって、「君が代」法制化を強行しようとしています。こんなこじつけは、天下に通用するものではありません。政府がいくら”象徴天皇のことだ”と”解釈”し直してみせても、天皇の専制支配の永続を願う歌だったという歴史の事実を消せるわけではありません。しかもどう読もうと、「君が代」の歌詞が”天皇の時代、天皇の国”の意味になることにも変わりはありません。

(重)

〔1999・8・5(木)〕


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