靖国神社の特殊法人化をどうみる?


 〈問い〉 政府が、靖国神社の特殊法人化を検討していると報道されました。これをどうみますか。(埼玉・一読者)

 

 〈答え〉 野中官房長官は六日の記者会見で、靖国神社を特殊法人化することなどを検討するとのべました。特殊法人とは、本来政府がやるべき事業を法律で別法人をつくっておこなわせるものです。野中氏は「靖国は宗教法人格をはずして、純粋の特殊法人として、国家の犠牲になった方がたを国家の責任でおまつりする」とのべています。

 政府のねらいは、特殊法人化により靖国神社の宗教色を薄めることで、政教分離問題を「解決」し、首相らの公式参拝の「障害」をとりのぞこうというものです。しかしこれは実質的には靖国神社の「国営化」であり、戦前の国家神道の復活につながります。憲法で定められた政教分離の原則に反し、国民の「思想・信条・良心の自由」を侵すものです。

 仮に靖国神社を、宗教行為をおこなわない「無宗教」団体にしたとしても、靖国神社が侵略戦争推進のために果たしてきた歴史的役割を消し去ることはできません。

 靖国神社は戦前、天皇がおこなう戦争に殉じた者を「英霊」としてまつる軍事的宗教施設で、陸軍省・海軍省が管理。侵略戦争で天皇のために死ぬことを奨励・礼賛する、天皇への忠誠と軍国主義の精神的支柱でした。ですから戦後、神道をはじめいっさいの宗教に国家がかかわることを禁じた憲法のもとで、同神社は民間の宗教法人となりました。

 歴代の自民党政府は、靖国神社の役割を復活させようと、さまざまな画策をしてきました。「靖国神社法案」が、六九〜七四年まで五回にわたり国会に提出されましたが、国民の強い反対で廃案となりました。また首相らの公式参拝もおこなわれてきました。

 野中氏の会見後、新日本宗教団体連合会(立正佼成会、PL教団など六十六団体が加盟)など宗教団体からも批判がでており、アジア諸国からも強い批判があります。このような構想はやめ、首相・閣僚の公式参拝もやめるべきです。(絹)

〔1999・8・15(日)〕


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