「私学助成は憲法違反」か?


 〈問い〉 石原慎太郎東京都知事が、「私学助成は憲法違反」と発言したことが報道されました。これまでも自民党内などにこういう意見があると耳にしたことがあります。どういうことなのでしょう。(東京・一読者)

 

 〈答え〉 東京都の石原慎太郎知事が、全国都道府県知事会議で「私学助成という、どう考えても憲法違反の制度がとられている」(毎日新聞、九月十日付)などと発言したことが波紋を呼んでいます。

 これは、私学助成は、憲法八九条の「公金その他の公の財産は…公の支配に属しない慈善、教育…に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」という規定に違反しているからというものです。

 この憲法八九条の趣旨は、私的な教育などにたいする公権力の干渉を排除し、公共の利益に反する事業に公金を支出しないためであって、公教育をになう私立学校への助成を禁止する趣旨ではありません。

 すでに一九四六年の憲法制定議会において金森国務大臣が、私立学校は「公の支配」に属するので私学助成は憲法違反でないと言明しています。それは、私立学校についても学校教育法、私立学校法、私立学校振興助成法など各種の監督規定のもとにあるという考えからです。

 私学助成は、公教育の大きな部分を占める私学経営の健全化、父母の学費負担の軽減化、教育水準の向上のためにおこなわれるもので、当然です。

 九八年の参議院文教科学委員会で町村文部大臣(当時)は、「そういう意味で公の支配にこれは属している…現行の私立学校に対する助成は憲法上問題ない、こういう解釈を伝統的に文部省はとっている」と答弁しています。

 また、八六年の千葉地裁の判決では、公の支配に属する事業とは「教育基本法、学校教育法、私学法等の教育関係法規」により法的規制を受けていることとしています。これは、私学助成が―現状ではまだまだ不十分ですが―憲法二六条等の教育の機会均等を裏づけるためになされた措置だからです。

 私学助成を憲法違反だとする議論は、ためにする議論といわざるをえません。(潤)

〔1999・9・23(木)〕



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