1999年12月19日(月)

 エルサレム帰属問題とは?



 〈問い〉 中東の都市エルサレムの帰属問題は何が原因で起こっているのですか。解決にはどのような方向が望ましいのでしょうか。(埼玉・一読者)

 〈答え〉 エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三つの世界宗教の聖地です。その特別な地位をふまえ、一九四七年に国連がパレスチナをユダヤ人国家とアラブ人国家に分割すると決めたとき、エルサレムは国際管理のもとにおく、と定めました。このときの決議によってイスラエルは建国されましたが、パレスチナ・アラブ人の国家はいまだに建国されていません。これが現在の中東紛争の原因となっており、エルサレムの帰属も未解決のままです。

 エルサレムは以後も複雑な歴史をたどります。一九四八年の第一次中東戦争で、エルサレムの西側をイスラエルが、また各宗教の聖跡が集中している東エルサレムをヨルダンが占領しました(ヨルダンは後に主権放棄)。イスラエルは翌年、西エルサレムを首都と宣言し、首都機能をテルアビブから西エルサレムに移しました。一九六七年の第三次中東戦争で東の部分も占領したイスラエルは一九八〇年、東西の「統一エルサレム」を恒久的な首都とする法律を制定しました。その年の国連総会は、これを非難する決議を百四十三カ国の圧倒的多数で採択。反対はイスラエル一国、棄権は米国など四カ国だけでした。現在も、ほとんどの国がエルサレムをイスラエルの首都とは公式に認めていません。日本大使館もエルサレムではなくテルアビブにあります。

 エルサレム問題の解決のためには、イスラエルの不当な占領措置を終わらせることが不可欠です。その後については、両国への分割案、両国の共同管理案、国際管理案など、さまざまの提案が出されています。一九九三年からおこなわれている中東和平交渉では、「エルサレムは永遠にイスラエルの首都」とするイスラエルと、「東エルサレムを首都とする独立国家」を目指すパレスチナ人が真っ向から対立しています。国連諸決議など国際的な合意に沿って、この都市にふさわしい帰属とあり方を確立する努力が求められます。(尾)

〔1999・12・19(日)〕


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