2002年5月1日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 政府の有事法制案をめぐり、テロや不審船問題に対処するために必要だという人がいますが、どうなのでしょうか。(新潟・一読者)
〈答え〉 一見もっともらしい口実です。しかし実際出された法案はどうでしょうか。
有事法制案が最優先するのは米軍の戦争への協力です。法案の「武力攻撃事態」は、武力攻撃の「おそれ」が「予測」されるだけの段階まで含みます。米軍の戦争のたびに武力攻撃の「おそれ」が「予測」され有事法制が発動されるしくみです。
これは中谷防衛庁長官も認めたように、三年前の周辺事態法と重なります。アメリカが介入戦争をおこせば周辺事態法で自衛隊が参戦する、そこに有事法制の発動で国民を総動員するのが真のねらいです。
実際、米軍と自衛隊の軍事作戦に必要な土地・人・物を命令一つで提供させるのが法案の核心です。法案は国民に「協力」を義務づけ、「自由と権利」の「制限」を宣言し、命令拒否に罰則を加えるものもあります。
そのうえ首相が全権限を握り国会は無視されます。首相は有事法制発動も、国民動員計画など「対処基本方針」も決定し、基本方針を諮問する安全保障会議議長も、国民動員を行う対策本部本部長も務めます。国権の最高機関の国会は「基本方針」の事後承認しかできません。
そもそも「テロ対策のため」という口実のごまかしは、今のイスラエルの武力攻撃でも明白です。イスラエルは、テロに対して「有事」「自衛反撃」だとパレスチナ自治区に侵攻し、激しい国際的非難を浴びています。有事法制は「テロ対策」に役立つどころか、事態をより危険な泥沼に追いやるものです。
政府・与党関係者も認めているように、テロや不審船は警察や海上保安庁が法に基づいて取り締まり、法の裁きに付すべき事柄です。有事法制案でテロや不審船をもちだすのは、自衛隊や米軍の行動のために国民の権利・自由を制限する「戦争国家」づくりという法案の本質を隠すためです。
(博)〔2002・5・1(水)〕