2002年1月10日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 昨年十二月に女性国際戦犯法廷の最終判決が出ましたが、昭和天皇を有罪にした根拠は何ですか。 (埼玉・一読者)
〈答え〉 日本軍「慰安婦」問題の責任を追及する民衆法廷・女性国際戦犯法廷は、二〇〇一年十二月、オランダのハーグで最終判決を出しました。
判決は、同法廷憲章にもとづいて、昭和天皇について、性奴隷制(慰安婦制度)に関し「個人としてまた上官としての責任で有罪である」とのべています。またフィリピンのマパニケ村で一九四四年十一月におこった大量レイプ事件についても「上官として刑事責任があることを認定」しました。
「上官としての責任」とは、上官として部下が犯罪行為に関与している可能性があることを知っていたか、知る理由があり、また上官として犯罪の防止や禁止をしたり、犯罪者を処罰するための措置をとらなかったことの責任です。
日中戦争、太平洋戦争当時の国際法でも、奴隷の禁止、女性・子どもの強制労働の禁止、レイプの禁止などが定められており、慰安婦制度は戦争犯罪とみなされる行為でした。女性国際戦犯法廷判決は、昭和天皇は慰安婦制度の「犯罪性を知らなければならなかった」のであり、最高指揮官の認可がなければ女性たちを連行して慰安所を維持する業務を実行することは不可能であることから、天皇の上官としての責任を認めたのです。
同判決は、慰安婦制度は「人道に対する罪」(殺人、絶滅、奴隷化などの非人道的行為)であると認定。戦争犯罪に時効はなく、「国家元首に対する免責」もできないと判断しました。
なお、「上官としての責任」という法理を用いて戦犯を裁くことは、現在、国際法の常識となっています。旧ユーゴ(ボスニア)、ルワンダ戦犯法廷など、進行中の戦犯裁判でもこれにより有罪判決が出され、設立準備がされている国際刑事裁判所の規程にも取り入れられました。(絹)
〔2002・1・10(木)〕
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