2001年11月20日「しんぶん赤旗」
与党と民主党などによって国会に「文化芸術振興基本法案」が提出され、近く審議入りします。戦後、芸術・文化にかかわる個別の法律は作られてきましたが、芸術・文化を国が振興するよう定める全般的な枠組みをもった法案は初めてです。
文化の基本法を求める声は、長年の運動のうえに、今年に入って舞台芸術分野の関係者を中心に広がりを見せました。日本共産党は、先の参院選の重点政策で、創造・表現の自由を守り、国民の文化的権利を実現するという基本的な考え方を明確にし、「文化振興基本法」(仮称)の検討を掲げました。
法案には、関係者の要望もあり、基本理念として国民の文化的権利と専門家の地位向上などが記されました。
しかし、法案が、芸術・文化活動に不当な介入をもたらしはしないか、という声もあります。関係者からは、十分な議論を求める声もだされています。そおため、日本共産党は、法案の提出には加わりませんでした。
法案は、芸術・文化「芸術」「メディア芸術」「伝統芸能」などにわけ、その振興策を講じることを27カ条にわたってこと細かに列記しています。そこには、「国語についての理解」「日本語教育の充実」も含まれています。
芸術・文化活動は、自由に営まれてこそ発展するものです。戦前、国は文化を統制し、その内容に介入することで、「戦意高揚」に奉仕させました。その反省にたって、戦後は、憲法に表現の自由が明記されました。
同時に、芸術・文化活動のなかには、商業的には成り立ちにくく、市場の採算性だけに任せられない分野があります。そこには国や自治体による公的支援が必要です。
世界でも、これは大事な問題として探求され、芸術・文化活動の内容に行政は介入しないという考え方や第3者機関を設けるなどの仕組みが試行されています。
芸術・文化は、豊かな人間性をはぐくみ、21世紀の日本社会の発展に欠かせません。その自由で多面的な発展を保障するため、公的支援のあり方を検討することは大事な課題です。
日本共産党は、公的支援の原則として、国および地方公共団体は、自由な創造と享受を国民の権利として保障するために、必要な諸条件の整備確立に努め、芸術・文化活動の内容への行政的介入はしないこと、芸術家・芸術団体に差別を持ち込まないことが大事だと考えます。
法案は、この問題について“自主性の十分な尊重”ということにとどめています。社会教育法や東京都の文化振興条例では“不当に統制的支配を及ぼさない”ことや“文化の内容に介入しない”ことを明記しています。
法案は、各分野の振興策を国に求めていますが、その具体的内容は今後にゆだねられています。具体的な振興策は、それぞれの実態に即し、関係者・国民の意見を十分に反映して、個別に解決をはかるべきです。
日本の芸術・文化のこんごのありように大きな影響をもたらす基本法だけに、そうした問題点をよく検討する必要があります。
日本共産党は、芸術・文化活動の自由で豊かな発展のために、関係者・国民と力をあわせてとりくんでいきます。