2002年4月12日「しんぶん赤旗」
二○○一年十二月の文化芸術振興基本法公布を受けて、文化庁はこの夏にも同法第七条に定められた「基本方針」の策定をめざしています。「基本方針」は、政府が文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図るため」につくるもので、少なくとも数年にわたる文化行政の基本を示すものとなります。それだけに、「基本方針」が、関係者・国民の意見を十分に反映し、その要望や期待にこたえて実のあるものとして策定されるかどうかが問われています。
振興基本法は、国民の文化的権利をもりこみ、文化芸術の振興にあたっては、国民の意見の反映への十分な配慮を強調しています。文化行政の今後のあり様に深くかかわる「基本方針」の策定にあたって、そうした精神が生かされるのは当然です。振興基本法では、「基本方針」について、文部科学大臣は、文化審議会の意見を聴いて」案を作成する、としています。同時に、文化庁は、民間の文化団体のシンポジウムなどで、それにとどまらず、広く国民の意見を反映する方向で努力する旨を語っています。
日本共産党国会議員団は、二月に芸術・文化団体との懇談会を開きました。ここでは、労災問題や地方での文化予算の削減など、芸術・文化の現場のリアルな実情と切実な要求が出されました。また、芸能開係や研究者による各種シンポジウムが相次いで開かれ、これまでの文化行政を問い、振興基本法の運用をめぐって、熱心な討議が続いています。「基本方針」も、「文化庁は現場の意見を聞くべきだ」と厳しい指摘が出されています。
ところが、文化庁は、民意をきく点では、わずか四力所の地方「文化芸術懇談会」を計画しているだけです。文化審議会も、四月末に最終答申を出しますが、一月に発表された「中間まとめ」では、「今後の社会」において文化は大事な役割を果たすとしてはいるものの、現実の芸術・文化活動のおかれた状況や、これまでの文化行政についての分析はほとんどありません。芸術・文化活動への支援についての記述もごくわずかです。
そのなかで、国の役割については、「我が国の芸術文化水準の向上の直接的な牽引力となる芸術文化団体の活動に対して、…国としての重点的な支援を」行うとしています。国の役割を重点支援に「限定」することは、従来の文化庁行政の流れの追認でしかなく、関係者から強い疑念が出されているものです。これでは、現場の切実な要求や意見にこたえることはとてもできないでしょう。
党国会議員団が開いた懇談会で、石井郁子副委員長が述べたように、「基本方針」策定にあたって、政府任せにせず、現場の声を反映させるとりくみの必要性がくり返し強調されなければならないと思います。
辻 慎一(党学術・文化委員会事務局)