2002年4月20日「しんぶん赤旗」
畑野君枝議員は11日の参院文教科学委員会で、DVD(デジタル多目的ディスク)が急増するなか、俳優・声優の経済的権利を守るよう求めました。
畑野氏は、今回の著作権法改正で、著作隣接権者の人格権が創設され、歴史的に大きな意義をもつが、財産権である報酬請求権は認められず、音楽CDと違ってビデオ、DVDの売り上げが急増する反面、俳優や声優は、「売れているのに一円も請求できない」範囲が広がっていると指摘。「文化芸術振興基本法」が施行されたこともあり、権利として創設できるよう求めました。
銭谷真美文化庁次長は、世界知的所有権機関で新条約の検討がなされているが採択されず、実演家の財産的権利の付与については「暫定合意」がされていることを明らかにし、国内での「将来の権利付与を前提として、その場合に必要な契約システムをよく協議していくため映像懇で国内法での対応を検討していく」と答弁しました。
畑野氏は、アメリカでは組合との契約で、ヨーロッパ諸国は権利として保障されているのに、日本だけDVDが売れても報酬がえられないために優秀な俳優が外国に流出することがないよう強く求めました。
2002年4月22日「しんぶん赤旗」
畑野君枝議員は11日の参院文教科学委員会で、著作権法の一部改正について、世界的に高い評価を受けている日本のアニメが、その制作現場は劣悪な環境にあるとし、アニメ共闘会議のアンケート調査などを紹介しながら質問し、実態調査を求めました。
銭谷真美文化庁次長は「実態を調査していない」と答弁。石本宏昭厚生労働省制作統括官は、「労働実態の調査はあるが、アニメ制作を対象としたものはない」と答えました。また、芸団協の調査を援助していることや、厚労省として芸団協の要望も受け「相談」していくことを明らかにしました。
畑野氏は、所得税法174条にもとづいて映画などの芸能法人だけが、法人として源泉徴収されている差別的実態を明らかにし、芸団協などの要求にそって撤廃すべきだと主張しました。
大武健一郎財務省主税局長は、「確実な課税で、重い負担ではない」と答え、30年来の姿勢をくり返しました。畑野氏は「文化芸術振興基本法」が成立して、芸術・文化にたずさわる人たちの「地位の向上」を図ろうという現在、それがふさわしい姿勢かと追及。大武主税局長は、国税庁など関係者で「勉強」していくとのべました。
○畑野君枝君
日本共産党の畑野君枝でございます。
著作権法の一部改正案の内容につきましては、実演家にも第三者に著作物を勝手に改変させない権利、つまり同一性保持権や名前の表示を求める権利、氏名表示権などの人格権を創設する。放送局、有線放送局にインターネットを用いた無断再送信を防止するための権利を拡大する。CDなど、録音物の保護の起算点を録音時から発行時に変えて保護期間を延長するなどにあります。
この改正は、新たな情報伝達手段等の発達に伴って権利を適切に保護する改正であり、特に我が党も以前から要求をし、実演家にとっては四十年来の悲願でありました名誉、声望等を保護する著作隣接権の人格権が認められるということは大きな前進であり、この法案に賛成をするものでございます。
その立場から本日は質問をいたします。
まず、著作隣接権の財産権である報酬請求権についてであります。
今回の改正案では著作隣接権者の人格権が創設されました。これは歴史的に大きな意義を持っております。しかし、財産権である報酬請求権は認められておりません。ビデオやDVDの売上げは急増する反面、顔が売れているのに一円も請求できない範囲というのはますますこれも急増するという結果になっております。 日本映像ソフト協会によりますと、DVDの売上げは前年度比で約一・五倍、一千五百二十二億円にも達しているという報道もございます。DVDはビデオに比べますと三分の一の値段で購入できるということで、今後、再生機が安価になればもっと売上げが伸びると言われております。
DVDに関連した、それでは請求権があればどれぐらい請求できるのかということをアメリカのスクリーン・アクターズ・ギルドの基準、例えば配給収入の四・五%ということで仮に計算いたしますと、日本の場合は二〇〇一年度は約七十億円になるというふうにも計算できると思うんですね。ですから、歌手の方は音楽CD売上げに比例して報酬請求ができるわけですが、同じDVDの場合は映像が付いているから請求できない。
今日、私、お持ちいたしましたけれども、これどちらがどっちだかお分かりになりますでしょうか。(資料を示す)もう大きさも形も同じ。こちらが、右側がCDですね、左側がDVDというふうになっております。ちなみに、三月末の最終の週の売上げヒットチャート一位は、CDの方は宇多田ヒカルさんの「光」、DVDの方は「トゥームレイダー」、二位はちなみにジブリの「紅の豚」というふうになっている
そこで、まず文化庁にこうした問題の御認識があるのかどうか、そして今後これをどういうふうにやはり改善して権利を拡大していくのか、この点について伺いたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君)
今、先生からお話のございました映像の実演の取扱いの問題でございますけれども、実は、我が国を含む多くの国において、CDなどに録音されている歌手の歌などの音の実演とそれからビデオやDVDなどに録画されている俳優の演技などの映像の実演については取扱いに差異がございます。
具体的には、CDなどに録音されている歌手の歌などの音の実演につきましては、これを複製販売したり放送などで利用する場合には、歌手などの実演家の許諾を得るかあるいは報酬の支払が必要であるということになっております。これに対しまして、ビデオやDVDなどに録画されている俳優の方の演技などの映像の実演については、これを放送するなどに利用する場合には実演家の許諾や報酬の支払は必要がないということとされております。ある意味では実演家に権利がないということでございます。
実は、このような音の実演と映像の実演の差異をなくして、ビデオやDVDなどに録画されている映像の実演について音の実演と同様の権利を付与することについて、現在、世界知的所有権機関、WIPOにおきまして新条約の検討がなされております。
ただ、この条約はまだ採択に至っておりませんで、一昨年になりますか、平成十二年の十二月にジュネーブで開催されました外交会議においてすべての条項について合意が得られなかったということはございます。ただ、実演家に財産的権利を付与するということについては暫定合意が行われたということでございます。
ただ、具体の国内における適用については、将来、映像の実演家の方に権利を付与するということを前提といたしまして、その場合に必要な契約システムの在り方などについてよく協議をしておく必要がございますので、文化庁では映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会というのを設けまして、国内法での対応について検討を行っているところでございます。
我が省といたしましては、こういった国際的な動向を踏まえながら、映像の実演家のこの財産権の問題について適切に対応してまいりたいと考えております。
○畑野君枝君
成立いたしました文化芸術振興基本法の中では、初めて「地位の向上」というのが入りました。これも長年の皆さんの
○畑野君枝君
先に御答弁いただいたんですが、私がここで確認したかったのは、地位の向上というものもありますから、隣接権にかかわる報酬請求権につきましても懇談会で論議されているということなのですが、それも早く結論が出るようにしていただきたいと思うけれどもいかがでしょうかということなのですが、いかがでしょうか、その点は。
○政府参考人(銭谷眞美君)
先ほども申し上げましたように、視聴覚的実演に係る実演家の方の財産権の問題につきましては、国際的な動向も十分踏まえながら、私どもとしては結論を出し得るよう更に検討を進めてまいりたいと思っております。
○畑野君枝君
是非、速やかな結論を出していただきたいと思うんです。
これは、参議院の文教科学委員会の調査室が委託調査をいたしました「主要国の知的財産法制度における著作権制度の位置づけとその概要に関する調査報告書」ということで、今年の二月に出されております。これでも、主要国にいろんな状況がありまして、各国いろんな状況がありますが、しかし、人格権あるいは財産権、報酬請求権、そういうものがそれぞれのところで進められているというふうに、イギリス、ドイツ、フランスあるいはイタリアなどであると思いますし、また、そういうものがないアメリカでも、ハリウッド映画では組合によってそういうものがきちっと報酬が保障されているということですから、本当に日本が後れて、優秀な俳優さんがどんどん外国に行ってしまうという流出のないようにきちっとしていただきたいというふうに思います。
さて次に、先ほど御説明がございました地位の向上にかかわりまして、審議のときに御答弁をいただいた点でございます。もう一回重なってしまいますけれども、芸術家の社会的、経済的な地位が向上していくことは大変大事だというふうにお答えいただきましたし、今後、芸術家の皆さんの御意見を伺って、また社会保障関係の制度のそれぞれの実態も考慮して、各関係省庁とも相談していきたいということを承りました。
今、どのように文化庁としては進められているのか。また、関係省庁としては厚生労働省になると思いますけれども、その点について併せて伺いたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君)
先ほど少し先走って答弁をしてしまったのでございますけれども、先ほどの答弁の繰り返しになるかもしれませんが、私ども、芸術家の方の社会的、経済的地位の向上につきましては、文化芸術振
それはもう本当に三十年来変わっていない御答弁なんですよね。そういう制度ができたのは三十八年前です。四十年来運動ができて、今日、著作権法でやっと実演家に人格権を認めようというときになって、いまだにそういう答弁じゃ本当にこの二十一世紀にふさわしいのかというのを私申し上げなくちゃいけないと思うんです。
文化振興と言って国では芸術団体の助成もやって、そして書類も出して申請してもらう。その一方で、税制上は信用できないから先に取る。こんな差別的なことがありますか。しかも、それはもう二十九年前の国会の審議の中で検討するというふうに言って、何にも検討していないんでしょうか。
○政府参考人(大武健一郎君)
今、先生から言われました要望といいますか、それは我々にも伺っておりますし、出されたその要望の中にも、実は一口に芸能法人といいましてもいろいろな企業があると思いますということを実はお認めになっている文書もございます。我々としては、しかしそうはいっても実態をよく聞かなければならないということで関係者の声を、特にこれは国税庁におきましても、引き続き聞かしていただこうということで、勉強していきたいと思っております。
○畑野君枝君
是非、その勉強が早く進んで前世紀の遺物にならないように改善を図っていただきたいということを強く申し上げると同時に、文部科学大臣にもそうした芸術家の地位向上が税制面あるいは著作権法含めて広がっていくように努力をしていただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。