日本共産党

2002年6月19日「しんぶん赤旗」

財産権「積極的に」

実演家の対応で文科相答弁

石井議員


 衆院文部科学委員会で7日、著作権法改正案が全会一致で可決されました。採決に先立ち石井郁子議員が、実演家の財産権について質問しました。

 石井氏が「今回、実演家の氏名表示権など人格権が法制化され、感無量だ。次の課題である実演家の財産権の充実に向け、文化庁としてどう臨むのか」とただしたのにたいし、遠山敦子文科相は「積極的に対応したい」と答弁。銭谷眞美文化庁次長は、「『映像分野の著作権に関する懇談会』等での検討は財産権実現に向けたもの。適切な契約のため、合意形成を進めたい」と答えました。

 石井氏は、「映画やアニメの製作会社と実演家の私的契約に、文化庁や経済産業省がひな型を押しつけることはないか」と質問。銭谷次長は、「特定の契約内容を文化庁が決めることは考えていない」と明言しました。

 石井氏は日本映画への支援についても質問。「『新世紀アーツプラン』では、毎年一本以上の映画を製作できる大手だけが支援の対象になるのではないか」と批判。銭谷次長は、「毎年一本以上というのは原則。そうでなければ支援を受けられないものではない」と答えました。石井氏は、「プラン」の映画支援の規定に「商業的、宗教的、政治的な宣伝意図を有しないもの」とあることについて、「恣意(しい)的な選択が生まれる」として削除を求めました。


○石井(郁)委員

 日本共産党の石井郁子です。 実演家の氏名表示権、同一性保持権など、実演家の人格権の創設は実演家の皆さんの長年の願いでございまして、今回大きな前進だというふうに思います。

 既にちょっと議論にもなっておりますが、二〇〇〇年十二月にWIPOの視聴覚的実演の保護に関する外交会議が開かれておりますが、そこで、新条約の採択には至らなかったけれども、十九の条項の暫定合意によって、実演家の人格権の創設とあわせて実演家の財産的権利の充実についても合意がされております。  私はこの件で、私自身、百三十九臨時国会、六年前でございますけれども、やはり著作権の改正が審議されましたときに、実演家の人格権の保護ということにもう日本も踏み出すべきだということを強く申し上げたことがございまして、今それを思い起こしてもいるわけですけれども、こうして今日、我が国において実演家の人格権が法定されるということ、大変感慨無量の感がございます。  今もたまたま話題になっているわけですが、次のやはり大きな課題として、この実演家の財産的権利について、今後、文化庁としてどのように臨もうとしていらっしゃるのか、これは大臣に、見通し等含めて御見解をお聞きしたいと思います。

○遠山国務大臣

 今お話しのように、実演家の権利につきましては、現在審議いただいております著作権法改正案によりまして、映像の実演についても人格権が付与されますので、人格権については音の実演との差異はなくなるわけでございます。  財産権については、生の実演については、音の実演と映像の実演について差異はないわけです。ただし、現在我が国を含みます多くの国におきまして、CDなどに録音された歌手の歌などの音の実演と、ビデオに録画された俳優の演技などの映像の実演との間に、権利付与に関する差異がございます。  具体的には、CDなどに録音された歌手の歌などの音の実演につきましては、これを複製販売したり放送などで利用する場合には、歌手などの実演家の許諾を得るか、あるいは報酬の支払いが必要であるわけでございます。これに対しまして、ビデオなどに録画された俳優の演技などの映像の実演につきましては、これを放送するなどの利用をする場合には、実演家の許諾や報酬の支払いは必要ないこととされているわけでございます。  このような差異をなくしまして、映像の実演についても音の実演と同様の権利を付与するということが必要と考えるわけでございますが、この点、現在、世界知的所有権機関、WIPOにおきまして新条約が検討されております。  平成十二年十二月にジュネーブで開催されました外交会議におきまして、録画された映像の実演について財産権を付与することが暫定合意されましたけれども、実演家の権利の映画製作者への移転、先ほども御説明しましたが、ああいう問題がございまして、実演家の権利の行使方法に関する条項について合意が得られておらず、条約採択には至っていないわけでございます。  この点については、委員も十分御存じだと存じますけれども、こうした映像の実演についての財産権については、次に取り組むべき重要な課題と認識しておりまして、私どもとしてはWIPOにおける議論を促進したり、我が国としてもその方向についての主張をしたり、積極的に対応してまいりたいと考えているところでございます。

○石井(郁)委員

 そのWIPOの視聴覚的実演の保護に関する外交会議の暫定合意を受けて、我が国でも、昨年七月に映像分野の著作権に関する懇談会が開催されているということで、そこでもう実演家の財産的権利の付与の方向は打ち出したというふうに聞いているわけでございますけれども、もう少し詳しく、どういう内容をもってその方向を打ち出しているのか、財産的権利の付与をどういうふうに行おうとしているのかについて、少し立ち入ってお聞かせいただければ幸いでございます。お願いします。 ○銭谷政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、映像の実演に係る権利の拡大に関しましては、文化庁に、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会、通称映像懇というものを設けてまして、国内法の整備について検討を行ってきたわけでございます。  この映像懇におきましては、従来は権利を拡大することの可否について議論が行われてきたわけでございますが、平成十二年の十二月に、先ほど来お話のございますいわゆる視聴覚的実演に関する新条約について、人格権、財産権の双方に関して権利を拡大することを内容とする暫定合意がなされました。このため、映像懇におきましても、それ以降は権利拡大の方向を目指すということを前提として検討が行われております。  まず、その後とり行われましたのは、関係者間の合意形成が達成された人格権の付与について、審議会での審議を経た上で、本日、法改正の御審議をお願いしているということでございます。  残る映像の実演の財産権につきましては、現在行われおります映画などの流通、利用を阻害せずに実演家の権利を保護するには、やはり適切な契約システムの開発が不可欠であるということで、この映像懇の場で、実演家の団体の方々、それから映画製作者の団体の方々、それぞれにおいて契約システムの案を作成し、これらを持ち寄ってさらに検討を進めるということが合意をされております。  これまでのところ、先ほど申し上げましたように、人格権の創設に関する協議等が中心に行われていたため、まだ実演家の団体、映画製作者の団体から契約システムのそれぞれの案というのは提示されていないわけでございますけれども、双方の案が提示された段階で、映像の実演の財産権の実現に向けて関係者の合意形成を促進してまいりたいというふうに考えております。

○石井(郁)委員

 かなりいろいろ議論が進展しているなというふうに伺いましたけれども、俳優や声優の実演家の皆さんに、私はやはり速やかに財産権を付与すべきだというふうに考えるんですね。  そのやり方、契約等々が今後の課題だというふうに伺いましたけれども、例えば映画製作会社と実演家団体、あるいはアニメ製作会社と声優などの実演家団体、こういうところの契約をどういうふうにするかということだろうと思うんですが、しかし、そういう実演家の権利を行使できるような条件を整えていくということが大きな課題となってくるかなというふうに思うわけですね。  そうした際に、私的契約ですから、その私的契約に係るひな形というようなものを、文部科学省やあるいは経済産業省がつくったり押しつけたりするというようなことは、よもやないでしょうねというか、そういうことはないということを言明できるでしょうか。

○銭谷政府参考人

 先ほども申し上げましたように、映像の実演の財産権の付与については、適切な契約システムの開発が不可欠であるわけでございますので、映像懇の場で、実演家団体、映画製作者団体の双方において契約システムの案を作成し、これらを持ち寄ってさらに検討を進めていくということが合意されております。  文化庁といたしましては、契約はあくまでも当事者の自由意思によって行われるべきものであると考えておりまして、特定の契約内容を文化庁が決めるというようなことは考えておりません。

○石井(郁)委員

 文化庁がそういうふうにきちんとした立場に立っていただくということは大変大事だというふうに思うんですが、ところが、これは経済産業省文化情報関連産業課長の私的諮問機関で、アニメーション産業研究会がございます。そこが、テレビ放送番組の製作及び放送に関する契約書という契約のひな形を作成しているわけですね。  これはもう一部新聞にも報道されましたから、おわかりのことと思いますけれども、それによりますと、株式会社何々テレビ局と株式会社製作会社とのテレビ放送用アニメーション・シリーズ作品の製作及び放送に関する契約に関するものとなって、その第四条に、権利関係でこう書かれているんですね。本作品に係る著作権、所有権その他のすべての権利は、別段の定めのある場合を除き乙に帰属している、この乙というのは製作会社でございます。  また、第六条には、「本件作品のプロデューサー、監督、演出家、キャラクターデザイナー、声優等の実演家その他本件作品の製作に参加した者が、本件作品の製作に参加することを約束しており、本件作品にかかるすべての著作権が有効に乙に帰属していること。」としている。  つまり、すべての著作権及び著作隣接権が、これだと製作会社に帰属するということと読めるわけですね。  私は、一般原則からいっても、そして文字どおり受け取る感じとしても、これでは実演家の権利保護ということにならないのじゃないか、逆行するのではないかというふうに考えるわけですが、文化庁、いかがでしょうか。

○銭谷政府参考人

 繰り返しになろうかと存じますけれども、著作物そのものやその利用形態が大変多様化が進んできておりますので、著作権についても明確な契約を交わすということが非常に重要になってきております。日本の場合は、文書により明確な契約を交わすということを避ける傾向があって、そういう状況のもとで、契約システムの構築というのはやはり喫緊の課題だと思っております。  こういう問題意識が広く持たれてきたために、さまざまなコンテンツの制作や利用に関しまして、関係する企業、団体、省庁等の間で契約システムに関する研究開発、実験などが活発に行われるようになってきていると存じます。  ただ、このこと自体は意義あることではございますけれども、先ほど来繰り返しておりますように、契約はあくまで当事者の自由意思によって行われるべきものでございまして、文化庁におきましては、例えば映像懇における視聴覚的実演に係る契約システムの検討におきましても、権利者、利用者それぞれが案を持ち寄って双方の合意の上でこれを進めるということにいたしているわけでございます。

○石井(郁)委員

 アニメーションの場合でいいますと、これまで実演家がアニメの製作会社と団体協約を結んでいた。それによって、ギャラは幾らとか、リピートの場合幾らとか、CSにかかわった場合幾らとか、テープの場合幾らと定めてきた。だから、既にもうそういうちゃんと団体協約、契約が行われているということなんですよね。にもかかわらずというか、今後その著作権一切が製作会社に移すというか、移るというか、こういうことが、今、WIPOで暫定合意をして、そのための法準備も進めようとしているというときに、これはやはりそういう流れに反するのではないかと。  今、私、ちょっと内容に関係して言っているわけです。文化庁は、契約システムを構築する、このこと自身は必要だ、しかもそれは絶対合意の上だということですけれども、この内容をどう読むかということに若干かかわってもいますので、もう少し御見解をいただければというふうに思うんですが、いかがですか。

○銭谷政府参考人

 現在、文化庁が映像懇等で進めております検討も、映像の実演の財産権の実現に向けての合意形成の促進ということでございますので、そういう観点から御理解を賜りたいと存じます。  確かに契約システムというものは、先ほど来申し上げておるように当事者の自由意思によって行われるものではございますけれども、当然のことながら、市場の中には、権利者側にも利用者側にも強者と弱者が存在する、そういう弱い立場にある方々自身が結束して、交渉力を高める必要、これもまた必要になってくるのかなという感じは持っております。  例えばJASRAC、現在ございますけれども、これも、当初は弱い立場と言われておられました作詞家、作曲家の方などが結束をしてああいう組織をつくって強い交渉力を持つに至ったということもございますので、基本の方向は私ども踏まえますけれども、ひとつ当事者間のそういう合意形成に向けての御努力ということも必要になってくるのではないかというふうに思っております。

○石井(郁)委員

 次の問題に移ります。  日本芸術文化振興会、ずっとこの間進められてきましたけれども、この芸術文化振興会の事業の見直し、また独立行政法人化の問題についてぜひ伺っておかなければならないわけです。  当委員会でも、文化芸術振興基本法、いろいろ真剣に取り組みまして、昨年臨時国会で成立しました。十二月七日に公布されているわけですが、この内容では、もう繰り返しですが、憲法の表現の自由を前提として文化芸術関係者の自主性を尊重する、それから文化芸術活動への公的支援を充実させていく、やはりこの二つは大きな柱として確認されたというふうに私は思っています。  ところが、その直後、十二月十九日です。特殊法人等整理合理化計画、閣議決定されておりますね。この中で、日本芸術文化振興会の事業の改革と組織の独立行政法人化が打ち出されているわけであります。その事業の改革というところを見ますと、一定期間後には助成措置を終了することを明記する、新国立劇場の国費投入の抑制を図る、だから、公的支援はもう抑制し、削減しようとする、こういう計画になっているということで、私は大変驚いたわけです。芸術文化振興基金による助成というのは、幅広い団体への助成として本当に大きな役割を果たしましたし、また大変関係者の皆さんに期待をされているところでしょう。  まず、文化庁として、この芸術文化振興基金の役割というのはもう終わったというふうに考えているのかどうか、この役割をどう認識しているのかということをぜひお聞かせください。 ○銭谷政府参考人 芸術文化振興基金の意義ということでございますけれども、芸術文化振興基金は、平成二年の三月に創設をされまして、現在、政府出資金五百三十億円、民間からの出捐金百十二億円、合計六百四十二億円の資金による運用益をもちまして、多彩な芸術文化活動を幅広く助成いたしております。平成十三年度の助成実績は約十二億円でございます。  私ども、国民が芸術文化に親しみ、みずからの手で新しい文化を創造していける環境の醸成を図り、文化振興の豊かな広がりを実現していくというこの芸術文化振興基金の役割は引き続き重要であり、今後とも適切に対応していかなければならないというふうに考えております。

○石井(郁)委員

 私は、本当にますますこれから役割は重要になっていくというふうに考えるわけですが、さらにこの合理化計画を見ますと、芸術文化活動に不当な介入をしないという大きな前提というか原則というか、こういうことがないままに、国が明確な政策目標を定めるとありますね。こういう点では、芸術文化活動の内容に政府が関与、介入しかねない危険があると多くの関係者から御意見が上がっています。  例えば、森繁久彌さんが理事長を務める日本俳優連合は、三月十一日にこのような意見を発表されています。「「特殊法人の整理合理化計画」に対する日本俳優連合の意見」という形で、芸術、芸能、文化活動に国の介入や規制が加わると危惧するという指摘でございます。  計画では、芸術文化活動に対する助成事業で、国が明確な政策目標を定めるとある、また、新国立劇場運営業務についても、果たすべき役割、政策目標を明確にとある。こういうふうになりますと、やはり表現の自由の確保と、あるいは国は条件整備を役割とするということが不明確にされたままで国がその目標を決める。これは私は、芸術文化活動の内容に触れることだし、介入できる仕組みをこれでつくってしまうことになるというふうに考えるわけですが、文化庁の御見解はいかがですか。 ○銭谷政府参考人 日本芸術文化振興会につきましては、先ほどお話がございましたが、平成十三年十二月十九日の閣議決定におきまして、独立行政法人に移行することが決定されたところでございます。  御案内のように、独立行政法人制度は、国とは別の自律的な法人格を設けまして弾力的な組織業務運営を可能とし、効率性や質の向上、透明性の確保を図ることをねらいとするものと理解をいたしております。  独立行政法人になりますと、中期目標の設定を行うわけでございますけれども、これは、例えば入場者数を劇場については何人にするとか、そういった数値のみに着目する、つまり効率性のみを追うということではなくて、芸術が文化の向上に大きく寄与するという目的にかんがみまして、文化芸術活動の性質に応じた適切な目標の設定が今後必要になってこようかと考えております。  なお、昨年、文化芸術振興基本法を議員立法で成立をさせていただきまして、その第二条に、文化芸術振興の基本理念というものを八項目お示しをいただいているわけでございますが、私どもの文化芸術行政は、今後ともその基本理念にしっかり即して行っていかなければならない

○石井(郁)委員

 今述べられましたけれども、その中期目標というのは文科省が決めることになるんですよね。これは既に独立行政法人となっているところがあるでしょう。国立美術館、博物館等々がありますけれども、そこに課されている中期目標を見て、果たしてどうなのかということがあるんですよね。  ちょっと申し上げますと、毎事業年度、一%の業務の効率化を図ると。今答弁で効率化のみを追わせないと言われましたけれども、効率化を図るとありますよ。また、主催事業に参加した者、参加者のうち、毎年度平均で八〇%以上の者から有意義だった、役に立ったと回答されるような内容の充実を図る、そういうことまで言っているわけでしょう。だから、内容にかかわって目標も定められている。  これでは、あなたが今答弁では効率は追わせないんだと言いましたけれども、事実、違うじゃないですか。だから、芸術分野にやはり政府がこんな形で目標を与える、文科省が決める、このことは、私は文化芸術振興基本法の精神にも反するというふうに思います。そしてまた、こういう支援のあり方というのは世界に例がないんじゃありませんか。そこをはっきりどう御認識されていますか。 ○銭谷政府参考人 日本芸術文化振興会は、現在、組織形態としては特殊法人という形態でございます。これを国全体の一つの方針として、独立行政法人という非常に法人の自律性を持ってかつ弾力的な組織運営業務が可能となり、さらに効率性や質の向上、透明性の確保を図った、そういう法人の形態に変えていこうとするのが今回の閣議決定の内容と理解をいたしております。  したがいまして、法人についてその運営の効率というのは当然必要でございますけれども、それだけではなくて、例えば法人の行いますさまざまな文化芸術活動について、これは国費が運営交付金という形で今後投入されることになるわけでございますけれども、きちんと評価をするとか、その事業の透明性を確保するとか、そういうことを通じまして本来の文化芸術振興を図る、そういう日本芸術文化振興会の目的が達成されるように私どもは努めていかなければならないというふうに考えております。

○石井(郁)委員

 私は、この問題は大変重大な問題をはらんでおりますので、もっともっと議論をしなきゃいけないんですが、きょうはちょっと別のもう一つ尋ねたいことがありますので、また後の機会に回したいと思いますけれども、当委員会としても、せっかく全会一致で文化芸術振興基本法をつくったということですから、本当にそれが生かされるのかどうかということで、私は今後もっと議論が必要だというふうに考えているところです。  きょうは、もう一点、映画の問題で伺いたいというふうに思います。  新世紀アーツプラン、この新世紀アーツプランも大変いろいろな問題を抱えているというふうに思って、私も前にもちょっと触れたことがありますが、結局、文化庁はトップレベルへの直接支援を強めているということではないのかという問題があるわけですが、その中に映画が入っておりますので、ちょっときょうはこの問題で具体的にお聞きをします。  映画は、今実際に日本映画の大半を占めているのは独立プロとか作品ごとにつくられる製作委員会などで進めているわけですけれども、新世紀アーツプランではこの支援を受けられないんじゃないか、活用できない制度になっているんじゃないかということが言われるわけです。つまり、そこでは、毎年一本以上の自主制作映画の実績及び製作計画を有することというふうにあるんですよ。つまり、毎年一本映画をつくらなきゃいけない。そういう会社というのはどれほどあるのか、まず、文化庁はそこをどうつかんでいますか、ちょっと数字で具体的にお示しください。

○銭谷政府参考人

 新世紀アーツプランにおきましては、トップレベルの映画製作について三年間継続的に重点支援を行うということを考えておりまして、支援の対象となる団体が一定の製作能力を持っているということを前提に事業を考えております。このため、原則として毎年一本以上の創作をしている団体を助成の対象、こう考えたわけでございますが、私どもが承知をしておる限りでは、毎年一本以上の映画製作をしている映画団体は、大手の映画会社や独立プロダクションなど、これは平成九年度から十一年度までの状況でございますが、少なくとも二十社はあると承知をいたしております。  なお、この毎年一本以上の創作をしているということは、先ほど申し上げましたように、あくまで原則としているものでございまして、映画製作団体の実態にかんがみ、必ずしも毎年一本以上の実績がなければ支援を受けられないものではございません。ただ、製作能力というものを持っているということがやはりこのアーツプランの支援としては非常に大事な要素であるということも事実でございます。

○石井(郁)委員

 やはり実態に合わないことを条件に書くというのは、これは本当にお役所仕事そのものだというふうに私は思うんですね。やはり実態を解決するのが政治の仕事ですから、行政の仕事ですから、そういうことをやっちゃいけないというふうに思うんですね。  日本では毎年三百本近い映画がつくられていると言われています。その多くが大手以外の独立プロとか製作委員会の作品なんですよね。文部科学省も選定作品にしました「アイ・ラブ・フレンズ」がありますけれども、その映画監督の大澤豊さんはこうおっしゃっています。お金を集めるのに一年、つくるのに約一年、それから回収に一年から一年半だ、だから、三年に一本できれば一番いいペースだと。これがやはり実態じゃないですか。だから、先ほど二十社と言われましたけれども、やはり資金もある大手だけが対象となって、そしてその大手はさらに国からの助成支援も受けるということになっていくわけで、そういうトップレベルの育成だけでいいのかという問題なんですよ。  私は、本当に映画が好きでいいものをつくりたいといろいろな方々が本当に必死に努力している、そういうところを支援するのが本当のボトムアップにつながる支援だというふうに思うわけですので、この点は、先ほど原則ではないなどということを言われましたけれども、その程度にとどめないで、もっと真剣に考えていただきたいということがあります。  それから、きょうはもう一点、映画の分野で重大な問題が一つございます。  それは、助成を受けるための特別の条件が映画の中にあるんですが、それはこういうものなんですね。商業的、宗教的または政治的な宣伝意図を有しないものであること、映画だけにこういう条件がつけられているという問題なんです。ここはまさに政治ですけれども、何をもって政治的というのか、これこそ大変な議論があるところでしょう。  そして、私はこれまでもずっと確認してきましたように、やはり芸術文化活動は、自主性を尊重する、これがかなめだということを言いながらも、結局、政治的だということで恣意的な選択あるいは介入をする、こういう余地を残しているんじゃありませんか。この点はいかがですか。 ○銭谷政府参考人 新世紀アーツプランの重点支援というのは、現代舞台芸術、伝統芸能、大衆芸能、映画の分野におきまして、我が国の芸術水準の向上を図るためにその直接的な牽引力となることが期待される芸術団体の自主的な公演あるいは

○石井(郁)委員

 私は、今の御答弁どおりだったら、この条項というか条文というか、これはもう削除すべきですよね。今、そういう考えは持っていないとはっきりおっしゃったんですから、これはもう削除してください。  実は、かつて大変大きなことがこの条文のためにあったわけです。これは、芸術文化振興基金ができる前に、優秀映画製作支援というのが行われていましたときに、政治的だということで申請さえ門前払いにされたという例がやはりあるんですね。だから、私たちは、そういう例にかんがみて、本当にこういうものを残しておいてはいけないというふうに思うわけです。  これは、ちょうど私ちょっと持ってきましたけれども、文化庁の名の入った便せんにこういうふうに書いてある映画なんです。これは、劇場用長編アニメーションで有名になりました「白旗の少女琉子」という沖縄の話なんですけれども、この映画は日本軍の住民に対する暴力行為を中心に描いたものであり、この映画を見る観客にとって当時の日本軍のすべてが沖縄住民に暴行を働いていたという印象を与えかねず見る者に健全な憩いを与えるものとは言いがたいと。見る者の立場でそういう制約も課している。しかも、沖縄戦の事実をどう見るかという問題だってはらんでいる。これは、文化庁はやはりこういうことに介入しているんですよ。  だから、そういう介入の根拠となるようなこういう条項はやはり残すべきじゃありません。私は、この点では、映画だけにあるんですから、それで他の分野にないわけだから、こういう特別な条項は削除すべきだということを強く求めたいと思います。  ちょっと一言御答弁ください、時間が参りましたので。

○銭谷政府参考人

 繰り返しになりますけれども、映画について、自主制作映画以外に企業等の依頼によるコマーシャルフィルム等が現実にあるために、特にこのような条件を付したものでございまして、映画について他の分野と異なった取り扱いをするものではないということを御理解いただきたいと存じます。

○石井(郁)委員

 終わります。


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