2002年6月19日「しんぶん赤旗」
日本共産党国会議員団は、昨年12月に施行された文化芸術振興基本法を生かし、芸術・文化活動に役立つ公的支援を充実させるため、2月26日に芸術・文化団体(37団体出席)と懇談会を開さました。この実りをさっそく国会論戦に生かすため、衆院文部科学委員会(6月7日、石井郁子衆院議員)、参院文教科学委員会(4月11日、畑野君枝参院議員)、衆院決算行政監視委員会(4月8日、瀬古由起子衆院議員)で質問。そこで貴重な答弁を引き出すとともに、問題点を浮き彫りにしました。
まず、実演家(俳優・声優等)の経済的権利について、著作隣接権のうち人格権が創設されたことを評価しつつ、まだ財産権がないことを指摘。文化庁は世界の流れを受けて「日本では将来、俳優など映像の実演家に権利を付与」、「その場合必要な契約システムの在り方を関係者で協議、国内法での対応」をすると答弁。財産権創設の方向が明確にされました(4月11日、6月7日)。
同時に、アニメ声優などの権利をすべて製作者側に取り上げる「契約書」ひな型を経済産業省が作成している問題を指摘。文化庁から、このひな型を事実上否定する答弁を勝ち取りました(6月7日)。また、振興基本法に基づく文化行政の「基本方針」作りが進んでいますが、政府任せにせず、関係者の意見・要望を反映するよう要求。文化庁から「意見交換の場を設ける」「情報公開にも適切に対応」との答弁を引き出しました(4月8日)。
さらに、税制支援について、寄付税制の改善に全力をあげると答弁させ(4月8日)、芸術関係団体から改善が求められている「芸能法人に係る所得税の源泉前納制度」についても財務省に、国税庁で「勉強してい」くと答弁させました(4月11日)。
一方で、助成のあり方や実態調査の点で、文化行政の問題も浮き彫りになりました。日本芸術文化振興会の行っている幅広い活動への助成である芸術文化振興基金について、振興基本法成立直後に、小泉内閣が特殊法人「改革」の名で「抑制」「終了」する計画を決定した問題を追及。文化庁は、その重要な役割を認めつつ、一方で独立行政法人化そのものには反対しませんでした(6月7日)。
他方、「トップレベル」の文化団体を直接支援する「新世紀アーツプラン」では、今年から映画分野が加わりましたが、「政治的、宗教的宣伝意図をもたない」との特別な条件が入り、内容に介入しかねない項目がある問題や、「毎年一本以上の実績」という事実上大手しか申請できない条件となっている問題を追及。これについては「あくまでも原則」と答弁しました(6月7日)。
また、現在、老朽化などで困難を抱える映画の撮影所について、CG技術などがあることを理由に撮影所がつぶれても「別の見方もできる」と、まともな対応を回避する答弁(4月8日)。芸術家の「地位の向上のために、映画・演劇・アニメ労働者の実態調査を要求しても(4月8、11日)、文化庁、厚生労働省は調査しないという態度に終始しました。
今後こしうした問題を打開するため関係団体の皆さんとともに全力をあげます。
(石田潤一・日本共産党国会議員団事務局)