2002年7月12日「しんぶん赤旗」
不良債権処理の大幅前倒しなど、くらしと経済にいっそうの破たんをもたらす小泉内閣の“骨太方針”第二弾が六月、閣議決定されました。そこでは、新たに芸術・文化活動への公的支援にも立ち入った内容がもりこまれています。
“骨太方針”第二弾のなかで芸術・文化にかかわる部分は、「第二部 経済活性化戦略」と「第五部 経済財政の姿と一五年度経済財政運営の基本的考え方」の中です。
とくに、「経済活牲化戦略」では、「産業発掘戦略」として文化・スポーツ・健康等の産業化」という項目が設けられ、「健康、スボーツ、ファッション、娯楽、音楽といった分野は今後世界規模で市場が拡大すると見込まれ、その産業化を推進する」とされています。そして、「日本の文化の産業化を推進する」ことや、「ゲームソフト、アニメーション、放送ソフト等コンテンツ産業を育成する」ことを掲げています。
このように、“骨大方針”は、文化を「経済活性化」という観点から位置づけ、「市場」での新しい利潤追求の対象だとしています。しかし、芸術・文化活動は、「市場原理」だけにまかせられない分野であり、これでは、文化に大きなゆがみをもたらすのではないでしようか。
“骨太方針”がそうした立場から芸術・文化活動への公的支援の内容変更を求めていることも問題です。たとえば、「文部科学省は、文化芸術振興における団体に着眼した支援から事業に着眼した支援への転換を進める」ことが押し出されています。来年度の予算編成に直接影響する「一五年度経済財政運営の基本的考え方」では、文化芸術振興については、心豊かな活力ある社会の形成及び地域社会の活性化を念頭に置いた振興、事業に着眼した支援に重点化」するとしています。
「団体に着眼した支援から事業に着眼した支援への転換」は、文化庁の看板事業であり、舞台芸術や伝統芸能、映画のトップレベルの団体を支援する「新世紀アーツプラン」を“標的”にしたものです。文化庁の直接支援である「新世紀アーツプラン」は、行政が芸術団体を「トップレベル」かどうか選択するなど、活動に介入しかねない問題があり、あり方をめぐって議論がすすんでいます。
だからといって、もし、市場の拡大という「経済効果」だけから、そうした「転換」をはかったり、「重点化」を促進したら、市場競争になじまない分野は切り捨てられかねず、短期間に利潤をあげる事業=イベントに偏重した支援になりかねないでしよう。
昨年末制定された文化芸術振興基本法を受けて、現在、文部科学省が文化行政の「基本方針」案を策定する作業がすすんでいます。現場で苦労している文化関係者の要求をふまえて、これをどう充実させるかをふくめ、全国各地で公的支援のあり方と充実をめぐって議論が活発に行われています。しかし、すでに“骨太方針”は閣議決定されており、その枠内で文部科学省は案を作成することとなります。これでは、文化関係者や国民の議論を無視し、上から方針を押しつけることになってしまいます。
このように、“骨太方針”は、芸術・文化活動への公的支援をゆがめ、後退させかねないものです。
辻慎一(党学術・文化委員会事務局)