2002年12月1日「しんぶん赤旗」
日本共産党の石井郁子党副委員長・衆院議員、畑野君枝、林紀子両参院議員は11月25日、東京・渋谷の新国立劇場を視察し、栗山民也演劇芸術監督と懇談しました。
栗山さんは、演劇の魅力、新国立劇場が果たすべき役割などを大いに語り、石井議員らは、文化を支える政治の役割について、最近の国会論議にもふれながら語り、なごやかな懇談となりました。
栗山民也芸術監督は、「国民に開かれた劇場にしたい。世界的に文化予算削減という問題が起こっていますが、日本はもともとの予算が非常に少ない。日本はこれからだと思います。パリには五つの国立劇場があって、ここは古典、ここはコンテンポラリー…と特色があります。文化が国を支えているんだという自覚があります。日本は一つだけです。演劇界全体を支えることも考えてほしい」などと語りました。
栗山さんは、新国立劇場の演劇の人材養成にふれ、「養成・研修機関の調査費を要求するにいたり、具体的内容について検討をすすめています。スウェーデンへいってきました。映画監督のベルイマンが演出したイプセンの『幽霊』をかけていて、見た後、研修の話になった。スウェーデンの俳優たちはものすごくいい。国立の俳優養成所が五つあって、その生徒たちを五年間マンツーマンで教えているのです。日本ではどうですか? と聞かれた。『日本には演劇大学さえないんです』というと、『じゃ、だれが舞台にでているんですか』と質問されました。だれがでているんだろう?(笑い)日本には種も光も水もあるけれど、(演劇大学などの)畑がないんです。この点が日本の遅れているところです」とのべました。
石井議員は新国立劇場の運営にかかわる日本芸術文化振興会を独立行政法人にしようとする動きを批判しながら、「文化庁と話していて思うのは、そういう土壌を育てるという感覚がない、欠けている。国が『目標』をたてたり、『評価』しようとしています」。栗山さんは、「だれが評価するのか、評価する人間の選択が問題になると思います」と語りました。石井議員は「国会で、新国立劇場にたいする内容についての『評価』はやめるべきです、と質問しましたが、やめる、とはいわなかった。表現の自由を守るために、国会でも頑張ります」とのべました。
栗山さんは日本の勤労時間の問題にふれ、「ヨーロッパの人は五時に仕事が終わり、家族で食事をした後、劇場へでかけ、その後パブへ寄って帰るのが、ごく普通になっています。日本は残業でおそくなるのがあたりまえですからね。演劇を楽しむことが日本人の生活のプログラムに入るようになってほしい。それには、単に法律を作るだけではすまず、長い道のりが必要かもしれませんが、努力が必要じゃないでしょうか」とのべました。
栗山さんは、「新国立劇場が二十一世紀において、演劇ってどういう力をもった芸術なのかを示す、そのモデルになることができたら、と思っています。芸術は人間をどれだけ柔らかくし、大きくしていくかを示していけるように」と、新国立劇場の将来像について熱っぽく語りました。