日本共産党

2003年3月14・15日「しんぶん赤旗」

地方の文化を支える政治の実現を


 2001年12月に制定された文化芸術振興基本法は、芸術・文化をつくり、楽しむことが国民の権利であることを明らかにし、「国民がその居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない」(第2条)と宣言しました。

 東京から劇団などを呼んで、地方で公演すれば、遠隔地ほど、上演経費以外の交通費や宿泊費などに莫大(ばくだい)な経費がかかります。地域格差をなくすには、特別な対策が必要です。

 そこで振興基本法は、国は「各地域における文化芸術の公演、展示等への支援」など、「必要な施策を講ずるものとする」(第14条)と明記しました。

 しかし、この一年、国はこの分野でまともな施策を何もうちだしませんでした。それどころか、全国各地で「等しく」鑑賞できる機会を保障しようと自主的に活動している、演劇鑑賞会や労音などの団体に、営利企業と同列に、法人税・消費税を課税しているのです。

 一方、地方財政の困難を理由に、文化団体への助成を打ち切ったり、施設利用料を値上げする地方自治体が増えています。
 振興基本法の精神を生かし、地方の文化活動を支えるために、国も地方自治体も、もっと本腰をいれた支援をすべきです。いっせい地方選挙にさいし、その実現をせまる運動を、全国で大きく発展させたいものです。

「効率性」や「受益者負担」の名で、文化予算を切り捨てたり、
利用者負担を押しつけることをやめさせ、公的支援を充実させる

 地方自治体では、自民、公明中心の「オール与党」が、振興基本法などどこ吹く風と、文化活動への支援を切り捨てています。財政難を口実に、芸術・文化団体への補助金を一律にカットし、芸術・文化活動への予算は九〇年代の最高時にくらべ半減しています。東京都などは、行政が「効率性」を優先した「評価」をおこない、経済性が悪いといった理由で、文化施設の廃止や支援の「抜本的な見直し」をすすめています。また、「受益者負担」の名のもとで、行政の都合で値上げができる「利用料金制」の導入がすすめられています。
 こうした文化切り捨ては、専門家や利用者に負担をしわ寄せします。オーケストラでは楽団員の給与カットや人数削減などが押しつけられ、東京都美術館では、多くの美術団体が値上げ反対の要望をしたにもかかわらず、使用料が18%も値上げされました。

 日本共産党は、国政でも、地方政治でも、文化芸術振興基本法を生かし、芸術・文化活動を支える政治の実現をめざしています。

自主的な創造・鑑賞の活動を支えるため、練習場・けいこ場などの条件を整備し、
施設利用料の軽減や活動への援助を行う

 芸術・文化の主役は、専門家・住民であり、その自主的な活動がのびのびとおこなわれてこそ、文化の花が開きます。住民誰もが自由に創造し、享受できる環境を整えることを中心にすえた、公的支援の充実が肝要です。

 合唱団や劇団の活動にとって切実な要望の一つが、練習場・けいこ場を確保することです。地方自治体のなかには、公設の練習場・けいこ場をつくり、夜間の練習や長期予約を認めるなど、利用者が使いやすい運営をすすめ、若者からも歓迎されている例や、廃校となった学校を、文化団体に運営をまかせ、練習場・けいこ場として活用する例も生まれてきています。こうした条件整備をすすめ、民間で練習場をもつ団体には、固定資産税の減免などの支援をおこなう必要があります。

 地方で、演劇・音楽・映画などの自主的な鑑賞運動がすすめられています。これらの活動は、芸術・文化を鑑賞する機会を全国どこにでも保障する大事な役割を果たしていますが、ほとんど公的支援を受けていません。鑑賞団体への法人税・消費税の課税をやめ、文化施設の使用料減免や、創造団体への交通費・宿泊費補助など、具体的な支援を充実させましょう。

閉鎖が相次ぐ民間の劇場や映画館への税制支援をすすめ、
住民の身近な鑑賞の場を守る

 昨年、大阪で民間の小劇場が相次いで閉鎖を発表するなど、民間の劇場の困難が伝えられています。また、映画館も郊外型のシネマ・コンプレックス(複合型映画館)は増えていますが、地域で日本映画を上映してきた映画館の閉鎖が相次いでいます。

 こうした民間の劇場・映画館は、住民のもっとも身近な鑑賞の場となってきたにもかかわらず、なんらの公的支援もありません。それどころか、他の商業施設と同様に扱われるため、収入の大半を固定資産税や法人税などの支払いにあてる事態となっています。ようやく来年度から、日本政策投資銀行による融資制度が実現することになりましたが、固定資産税の減免や改築のための支援をすすめる必要があります。

映画、演劇、音楽の学校公演などへの支援をすすめ、
子どもたちが豊かな芸術・文化に接する条件をととのえる

 子どもの権利条約31条にある「子どもの文化的権利」に光をあて、すべての子どもたちが、最低年一回、生の舞台芸術や映画などを鑑賞できるよう、条件を整備することが求められています。文化庁の事業は、全国で四百カ所程度の重点事業に限られ、すべての子どもたちに保障するものとなっていません。これまで大きな実績と成果を生んできた、民間の児童青少年演劇・音楽団体による学校公演事業や、子ども劇場、親子映画など地域の自主的な文化活動への支援が大事になっています。自治体では、大阪市や名古屋市で実現している、学校運営費(学校維持運営費)で鑑賞活動を保障する事業を、全国に広げることがいよいよ大事になってきています。

公設文化施設の運営や、公的支援の立案・実行に、
芸術・文化団体や住民が直接参加し、文化活動への支援を充実させる

 文化活動の主役である芸術・文化団体や住民の知恵と力を積極的に生かしてこそ、公的支援も本当に役立つものとして充実させることができます。文化庁による懇談会が開かれるようになっていますが、出された声が公的支援の充実に生かされていません。公的支援の立案・実行に、芸術・文化団体や住民が直接参加することが必要です。

 公設文化施設のなかには、企画や運営を、住民に任せる例も生まれてきています。文化施設を地域での芸術・文化の拠点として位置づけ、芸術・文化団体や住民の積極的な参加を保障させましょう。

 芸術・文化活動を支えるこうした政治を実現するためには、地方自治体の文化活動への予算を大幅に増やすとともに、文化庁予算を倍化し、予算の半分を地方にまわすなど、思い切った予算のきりかえが必要です。

諏訪 勝久(党学術・文化委員会事務局次長)


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