2007年11月13日(火)「しんぶん赤旗」
民意くみ物申す村政求め
長野・南牧村 党員村長誕生
支持者と当選を喜びあう菊池村長(中)と妻の智子さん(左)=11日、長野県南牧村 |
「共産党籍首長、三人に」。地元紙の「信濃毎日」は休刊明けの十二日夕刊で、菊池幸彦村長の誕生を一面で報じました。菊池村長を生んだ南牧村は、人口約三千四百人。西に八ケ岳を仰ぎ、標高(一三四五メートル)日本一のJR小海線・野辺山駅や電波望遠鏡で知られます。「村民が村を変えた」「村民の声が生きる」と沸き立っています。
自立の道
「民意を尊重しない前村長では村の自立は危なかった」と男性(73)は語ります。本来なら前村長の陣営と目される男性(53)=農業=も「独断専行はだめだ」と批判します。二人は今回、菊池幸彦氏を積極的に推しました。
前村長は四年前二期目の当選直後に、川上村との合併を強引に進めました。「その三年前の農協合併でこりた」という村民たちは、住民投票を要求。有効投票数の87%が「合併反対」。自立の道を選んだのでした。
南北二つの小学校を二〇〇七年度に統廃合する計画も強引でした。〇五年の春、計画を知らされた保護者は、寝耳に水のことで大騒ぎに。父母有志が「見直してほしい」と署名を集めると、村は「未成年者はいないか。二重に書いた者はいないか」と、住民台帳と照らし、筆跡までチェックして集計、公表しました。
「自立にともない財政が厳しくなる」と公共事業費を削減するはずでしたが、村自らつくった財政シミュレーションの〇五年度の公共事業費が約三億六千万円に対して、実際の予算は倍以上の約七億三千万円に。その後も何倍もの不要不急の公共事業費が予算化されるでたらめぶりでした。さらに、三億円の「総合住民センター」の計画も。
「私利私欲の村長」に批判の声が渦巻きました。「対抗馬を擁立しようとしたが、だめでした。四年前にでた幸彦は、勇気がありまじめだから推した」と務さん。
「前回は『共産党だからいや』といっていた村民も、村政を変えるなら『共産党とも協力しよう』と変わった」。ある男性(60)=農業=はこう明かします。
結果は大差の勝利でした。「南牧村・自立を考える村民の会」代表の市川力さん(39)は「村民の声が届く村政に変えてほしい」と新村長への期待を語ります。
八ケ岳を背にする野辺山高原の牛=12日、長野県南牧村 |
農業再生
農家出身の菊池新村長には農業再生の願いもかかっています。南牧村の半数近い世帯は農家で、高原野菜をつくり酪農を営んでいます。
「農村はひん死の状態」と農協理事や農業委員会長を務めた男性(72)はいいます。フィリピンで敗戦を迎え、帰国して同村野辺山に入植。十八歳のとき父親を亡くし、長男として六人家族を養うために開墾してきました。数百人の入植者の三分の二が脱落した過酷さ。大根を植え、牛のたい肥を与え、耕地を広げてきました。
ところが、政府による農産物の輸入自由化が襲います。「安い輸入野菜のせいで売り上げは伸び悩み、石油高騰で資材など生産コストが上がり利益は薄い」と宏さん。
酪農も深刻です。最近一軒が廃業に追いこまれました。「借金がなければやめる農家はもっといる」と九十頭の牛を飼う酪農家(57)はいいます。
乳価は下がるのに、輸入の干し草や配合飼料は一年で一・五倍に値上がりしました。石油高騰で輸送コストや石油製資材、一日百リットル使うトラクターなど燃料費も上がる一方です。「政府は大規模化を勧めるが、日本の農業を支える家族経営を守る施策をしてほしい」と酪農家は訴えます。
「村が農家を直接救済するのは難しいが、農業切り捨ての自民党政治に物申してくれる新村長に期待します」と元農業委員会長の男性(72)は力説します。 (海老名広信)