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介護保険実施から1年余がたちましたが、サービス不足や認定問題、福祉現場の労働条件悪化など、危惧されたとおりのさまざまな矛盾が浮きぼりになっています。とりわけ、この新しい制度のもとで、真に介護を必要とする低所得の高齢者が、利用料や保険料の重さから十分なサービスを受けられない事態は最大の矛盾です。
政府は、「介護サービスの利用量は増加した」から、「順調」であると強弁していますが、これは高額所得者や新規利用者の利用拡大をふくむものであり、低所得者だけをみれば、各種調査でも明らかに利用が抑制されています。しかも、高齢者の76%が住民税非課税者であり、こうした低所得者ほど要介護率が高いにもかかわらず、サービスが受けられないことは、事態をいっそう深刻にしています。在宅サービスの利用者が、政府が当初予測した人数よりも70万人も下回ったことは、この事情を反映したものです。
10月から高齢者の保険料満額徴収が始まれば、保険料は2倍に、年間の保険料負担は一気に昨年度の3倍に増えます。このままでは、負担にじっと耐えながら、かろうじてサービスを利用しているお年よりも、次々と脱落せざるをえません。
日本共産党は、政府が高齢者・国民の現状を直視するとともに、介護保険実施1年で明らかになった次の諸点について、速やかに改善措置をとるよう、申し入れるものです。
利用料……1割負担がサービス利用の妨げになっていることは、いまやどの調査でも明白です。だからこそ、全国の5つに1つの自治体が独自の減免制度を実施しているのです。
国の制度として、在宅サービスの利用料を、住民税非課税者まで無料にすることをあらためて要求します。当面の緊急対策として、政府の「特別対策」を拡充し、新規利用者もふくめて、すべての在宅サービスを3%にすることは最小限の措置です。
保険料……10月からの満額徴収を前に、住民税非課税者の保険料を免除する恒久的な対策をとることは、介護保険存続の前提条件です。厚生労働相も、「耐えられない人もあるだろう」(4月3日、参・厚生労働委)とのべています。ならば具体的な低所得者対策を国民にしめすべきです。それができないというのであれば、10月からの保険料満額徴収を凍結し、低所得者対策の確立を先行させるようもとめます。
介護保険料の滞納と連動した国民健康保険証の取り上げが不安を広げています。国保証の取り上げは命の危機に直結します。これを中止すべきです。
特別養護老人ホーム……介護保険が始まってから待機者が急増していると、各地から報告されています。この「契約違反」の現状を打開するために、政府は実態を緊急に調査するとともに、特養ホームの整備に全力をつくすべきです。また、特養ホームから入院した場合も、再び元のホームに戻れるよう、制度の改善、拡充をもとめます。
グループホーム……痴呆性高齢者のためのグループホームは、いまだ1122ヶ所(6月2日現在)にすぎず、整備目標を大きく割り込んでいます。量とともに、質の面でも、政府が財政支援を抜本的に強化することを要求します。
ショートステイ……利用枠の一定の改善がはかられましたが、もともと在宅サービスの利用限度額の上限が低いため、在宅とショートステイの併用が困難になっています。要介護度別の利用限度額の弾力的な運用をふくめ、利用しやすい仕組みに改善すべきです。
“介護保険の1年”が、ホームヘルパーなど福祉・介護労働者の犠牲のうえにあるといっても過言でないほど、現場の労働条件が悪化しています。介護報酬の見直しをふくめ、早急に改善策を講じるべきです。また、サービスの提供を民間まかせにせず、自治体としても必要な人を確保するなど、自治体が公的責任を果たせる方向で、指導を強化することが重要です。
介護保険の要であるケアマネージャーの努力に報いるために、介護報酬を適正に引き上げ、自治体とケアマネージャーとの協議、懇談ができる機関を設置するようもとめます。
要介護認定の一次判定コンピューターソフトは、痴呆の状態を反映できないなどの欠陥が指摘されています。現在、見直し作業が行われていますが、今もなお「欠陥」ソフトによる認定が続けられており、一刻も放置できません。ただちに見直しを実現するように求めます。
そもそも、経済条件や家族、住宅事情など、高齢者の生活実態をコンピューターにより判定することには無理があります。コンピューターによる機械的な一次判定をやめることも視野に入れた条件整備を開始するようもとめます。
以上
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