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首相の青写真が実行されては
2001年5月28日(月)「しんぶん赤旗」、「主張」より転載
小泉首相が医療保険の改悪に意欲を燃やしています。
「せっかく総理大臣に就任したので実現に向けて全力をつくす」(十五日、衆院予算委員会)と約束したのは、一九九七年八月に、小泉厚相のもとでまとめた「二十一世紀の医療保険制度(厚生省案)」です。国民の負担を重くする改悪が盛り込まれています。
改悪は三本柱からなっており、第一は、お年寄りにも医療費の一割か二割を負担してもらうこと、第二に健保本人負担を三割にすること、第三に、すべてのお年寄りから保険料をとりたてる高齢者医療保険づくりです。
このうち、第一の柱の高齢者の一割負担はすでに森内閣時代に決定され、今年一月から実施されています。小泉首相は、あとの二つの柱をこれからの「医療改革」の下敷きにして、「実現に全力を」あげると公言しているのです。
小泉首相には、すでに医療改悪で実績があります。厚相だった四年前、健康保険の本人負担を一割から二割にし、薬剤費負担を二重にするなどの患者負担増を実行しました。
この負担増による受診抑制はすさまじく、厚生労働省の患者調査でも、三十五歳から六十四歳までの患者数は改悪前の九六年と改悪後の九九年を比較すると一二・四%も減っています。
今年一月からの高齢者医療の一割負担でも、外来患者が減ったという医師が四七%にものぼっています。
負担増によって国民が医療から遠ざけられ、いのちと健康が脅かされている事実をつきつけられても、小泉首相は、「必要な改革だった」といいます。そして、これまでは世論の批判でできなかった青写真=医療保険制度改革・厚生省案の本格的実行をはかるといいます。
「自民党を変える、日本を変える」といって首相になった小泉氏ですが、これでは、これまでの自民党政治と何ら流れが変わらないし、国民の“期待”とはあまりにも反するのではないでしょうか。
医療改革をめぐる国会論戦では、民主党議員が小泉首相に厚生省案について「今回はできるのか」と実現を迫り、“意気投合”し、「ともに改革をやりたい」と表明する場面が目立ちました。
小泉首相とともに答弁にたった坂口厚生労働相は、「次の改革に向け、今度は鉄かぶとをかぶって、雨あられが降っても突進していく覚悟だ」(二十一日、参院予算委員会)とのべています。
全国保険医団体連合会の調査によると、政府がすすめる患者負担増・医療改悪に、七割以上の医師・歯科医師が反対しています。社会保障の給付減・負担増などの将来不安から消費を手控える人が増えています。
いま必要なことは、日本共産党が緊急経済提言で提案しているように、医療改悪計画をいったん凍結することです。改悪を凍結している間に、国民が安心でき、頼りにできる社会保障体系を国民合意でつくりあげることは、将来不安をなくすためにも重要です。
小泉内閣は、医療改悪計画の実施時期について、「二〇〇二年度」と明言し、すべてのお年寄りからの保険料徴収と負担増をねらう高齢者医療制度の創設は、政府・与党の論議にのぼっています。
生命と健康に直結する大問題です。こんな青写真を“鉄かぶとをかぶって”強行されてはたまりません。
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