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三日、東京・日比谷公会堂で開かれた「2001年5・3憲法集会」での日本共産党の志位和夫委員長の訴え(大要)は次の通りです。
みなさん、こんにちは。日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。小泉内閣が登場して、タカ派の路線をむきだしにすることで、この内閣に期待を寄せている方も含めて、「どうもこれはキナ臭い」、「危ない」、こういう思いがひろがっていると思います。そのなかで、きょう憲法九条を守れという共同の集いが開かれて、みなさんが熱い思いを持って、こんなにたくさんの方がこの会場にお運びくださった。素晴らしいことだと私は思います。(拍手)
憲法9条の完全実施にむけ、違憲の自衛隊を一歩一歩変えることこそ
小泉首相は、自民党の総裁に当選した最初の記者会見で憲法九条についてこういいました。「自衛隊が軍隊でないというのは不自然だ」「いざという場合は命を捨てるというものに対しては敬意をもつような、憲法違反と言われないような憲法を持った方がいい」。こう改憲の意図をあからさまにしました。
私は、この発言をきいて思いました。「いざという場合は命を捨てる」。こういう発言が平気で口をついて出てくるというのはまず怖いことだと思いました。(拍手、「そうだ」の声)
そして私は、自衛隊が憲法違反といわれるのがいやなら、憲法九条を取り払うことでこの矛盾を解決するのではなくて、世界に誇る憲法九条の完全実施に向けて、憲法違反の自衛隊の現実を一歩、一歩変えていくことこそ政治のつとめだ(拍手、「そのとおり」の声)、こう考えるものであります。(拍手)
9条改憲の目的――アメリカの戦争に制約なしで日本を参加させること
ただみなさん、いまもちだされている九条の改憲論というのは、“自衛隊に敬意を払う”といった式の、この軍隊の憲法上の認知というところに、その真の目的があるのではありません。
私は、その本当の目的は、ずばりいいましてアメリカが地球的規模でおこなう介入や干渉の戦争に、日本がなんの制約もなく参加する、こういう体制をつくることにあると思います。(拍手)
小泉首相の発言をみると、それがよくわかります。首相は、九条の改憲と一体に、集団的自衛権の行使に踏み込む、このことをはっきりいいました。
一方で、「憲法を変えないで集団的自衛権を行使するのが無理だったら、憲法を改正するのが望ましいという考えを持っている」とのべながら、他方では、集団的自衛権の行使は憲法上許されないという従来の政府見解について、「いまの解釈は尊重するけれども、あらゆる事態について研究する必要がある」といいました。
つまり、明文改憲か、さらなる解釈改憲か、どちらの方策をとるにせよ、九条の改憲というものが、集団的自衛権の行使と一体に語られているというところが重大なところではないでしょうか。(拍手)
しかも小泉さん自身は、その危険な意味をわかっていっているのかどうか(笑い)、よくわからない(拍手)。総裁選の経過を通じても、最初は集団的自衛権に否定的でした。途中でころっと賛成に変わった。つまり、“無定見なタカ派”なんですね。危険性がわかった人だったら、ある程度のブレーキもききますよ。しかし、危険なことを危険だとわからないでやっているのは、一番危険だと、私は思うのです。(拍手、「そのとおり」の声)
戦争法の制約をなくし、“使い勝手”をよくすることがねらい
それではみなさん、集団的自衛権の行使というのは、一体どういうことでしょうか。
私は二つの点を指摘したいと思います。
一つは、一九九九年にガイドライン法=戦争法ができましたけれども、この使い勝手が悪いんですよ。つまり、集団的自衛権は行使できないという建前から、制約があるのです。すなわち、ガイドライン法では、米軍が「周辺事態」への対応として、海外での武力行使をする、そのとき自衛隊がおこなう活動は、「後方地域支援」に限られる。つまり前線に出ていって米軍といっしょになってドンドンパチパチの戦闘行為をやることは、建前上は許されないということになっているのです。
私たちは、「これはでたらめだ」と随分追及しました。“だいたい戦争に前方も後方もあるものか。海の真ん中に道路標識が立っているわけでもあるまいし(笑い)、後方支援だって兵たん活動といって戦争の立派な一部なんだから、ごまかしだ”ということをやりましたけれども、しかしなお、そういう制約があることは事実なんです。
集団的自衛権の行使というのは、この制約すら取り外して、戦争法の使い勝手をよくして、日米共同の海外での武力行使を、なんの制約もなく、自由勝手にやるところにねらいがあるということを、きびしく告発したいと思うのであります。(拍手)
「集団的自衛」の名による「集団的軍事介入」を許すな
いま一つの問題は、「集団的自衛」といいますから、なにか侵略から守るみたいな印象もあるんですけれども、実際は違うということなのです。
アメリカがいま世界でとっている戦略はどういうものか。「侵略への自衛反撃」とは無縁の、一方的な軍事力行使、介入と干渉の戦争を、アメリカの国益とあらばためらわずおこなうというのが、アメリカのやり方じゃありませんか。(「そうだ」の声)
一九九九年のユーゴに対する空爆にそれはあらわれました。
ブッシュ政権が誕生して、二月にイラクへの攻撃がありました。これはまさに、「就任あいさつ」がわりに、一発みまってやるよというような乱暴さでしょう。まさにそういうことをやっている。
ガイドラインというのは、そういう戦争をアメリカがおこしたさいに、日本が応援する。ここにねらいがありました。そういう危険なしくみをさらにエスカレートさせて、集団的自衛権の行使に踏み込むということは、アメリカといっしょに日本が国連憲章のルールを破る無法者になってしまう。そして介入・干渉の戦争に乗り出してしまうことになります。
私は、「集団的自衛」の名での「集団的な軍事介入」の道を許すなという声を、はっきりあげようということを訴えたいと思います。(大きな拍手)
アメリカ仕込みの危険な動き
しかもみなさん、これは偶然に出てきた動きではありません。背景には、アメリカの大きな動きがあります。アメリカ仕込みの危険な動きであります。
昨年十月に、アメリカ国防大学の「国家戦略研究所」というところで対日提言がつくられました。これは民主・共和両党の外交・軍事の首脳陣が集ってつくったリポートです。中心になってつくったのは、アーミテージさんという、今度の新しいブッシュ政権の国務副長官になった人で、「アーミテージ報告書」ともいわれているものなのですが、この報告書では、日本にたいして集団的自衛権の採用ということを迫りました。その後、いろいろな動きが起こりました。
ことし一月に、自民党の山崎拓さん、中谷元さん、この両氏が訪米して、アーミテージさんと会っている。そして、先方から、「集団的自衛権を行使できるようになることを望む」といわれて、山崎さんは「集団的自衛権の行使は限定的におこなわれるべきだ」と応じています。「限定的」という言葉はついていますけれども、集団的自衛権の採用を事実上対米公約として帰ってきているわけです。
そして、この二人が、山崎さんは自民党幹事長に、中谷さんは防衛庁長官になった。党と内閣の中枢に座った。小泉さんはよく分かってやっていないかもしれないけれども、この二人は筋金入りの人たちで、危険なことを本当に百も承知ですすめようとしている人たちです。そういう人たちが中心に座ったということはたいへん重大です。
「米軍の軍事作戦のため」という軍事の論理が一人歩きをして
こういう流れの中で、自民党の国防部会が三月に「わが国の安全保障政策の確立と日米同盟」と題する提言を発表しています。
この提言づくりの過程を調べてみましたら、ちゃんとアメリカがかかわっているのです。アメリカの元国防総省日本課長のジェームズ・アワーという人が、自民党の国防部会で講演しているんですね。そこでアワー氏は、「日本が集団的自衛権を行使する権利をなかなか明確にしないために、アメリカの軍事計画は、きわめて複雑なものになっています」(どよめき)。こういっているのです。そして“米軍が戦闘に入ったときに、日本が、F15やイージス艦を動員するのか動員しないのか、政府の見解でははっきりしない。これではアメリカの軍事計画が立てようがないじゃないか”。こういって集団的自衛権の採用を迫っているのです。
そして、自民党の国防部会がまとめた提言には、なんと書いてあるか。アワー氏のこの言葉がそのまま入っています。読み上げてみますと、新ガイドライン法について、「これには限界がある。それは、わが国が集団的自衛権の行使を禁じていることで、米軍の軍事作戦がきわめて複雑なものとなってしまい(大きなどよめき)、有事の際に、日米が共同で紛争の抑止にあたる場合に支障をきたすことが懸念されることである。…いまこそ、この問題を真正面から取り上げていくべき」である。こういっているんですね。
つまり、アメリカは、「米軍の軍事作戦」のためという、軍事の論理を正面にたてて迫りました。自民党の国防部会は、それをそのまま受け入れました。私は、この経過を調べてみて、軍事の論理の一人歩きということが危ないところだと思いました。
ガイドライン法を作ったが使い勝手が悪い。F15やイージス艦を動員してくれるかわからない。こんなことじゃもうだめだ。ガイドライン法によれば、「後方地域」でしか、支援活動できないわけですから、「前方」でたたかっている米軍の艦船が戻ってきて、補給を受けて、また行かなくてはならないわけですから、米軍にとっては、たしかに「複雑」ですよ。(笑い)
これじゃ使い物にならないから、変えろという。まさに、軍事の論理の一人歩きが始まっているではありませんか。まったく危険なことではないでしょうか。
そして、まさに、アメリカ仕込みで集団的自衛権、改憲のくわだてをすすめてきた人たち、こういうことを恥とも思わない人たちが、「いまの憲法はおしつけ憲法」という。これこそ、まさにご都合主義も極まれりといわなければならないのではないでしょうか。(大きな拍手)
小泉さんが集団的自衛権の行使に踏み込む発言をやりましたが、アメリカ政府の高官は、「歓迎する。勇気づけられた」と、すぐに反応しました。
私は、訴えたい。今の動きは、アメリカ仕込みだけに、向こうも本腰です。ですから、私たちも本腰を入れて、打ち破ろうじゃないかということを呼びかけたいと思うのであります。(強い、大きな拍手)
「首相公選」論――首相を国会から独立させ、執行権力を独走させる危険
みなさん、相手のねらいは、九条改憲の一点です。しかし、国民の皆さんの圧倒的多数は、九条を守れです。そこで小泉首相は、「憲法はこうすれば改正できると、国民に理解されやすいのは、首相公選制だ」とのべて、首相公選制のための改憲から手がけようとしています。
私は、これは改憲を一回経験すれば、練習になって、憲法改悪への敷居が低くなる。憲法九条改定も容易になる。まさに結びつけていっているわけですから、そのねらいがあけすけになった。こう思います。こんな問題を、そうした党利党略でもてあそぶなど絶対に許されない話ではないでしょうか。(拍手)
私は、首相公選制というのは、簡単にいえば首相と政府を国会から事実上独立させて、執行権力を独走させる危険がある、そういう仕組みだと思います(拍手)。だいたい、いまでさえ、政府は国会を無視しているではありませんか(拍手)。いまのしくみでも、政府が主導して悪法の強行をほしいままにしているじゃありませんか。そのもとで首相公選制が持ち込まれたら、執行権力に絶大な権限が与えられて、国権の最高機関としての、国民の代表機関としての国会の地位が、体制的に脅かされるということを、私は、はっきりいいたいと思うのです。(大きな拍手)
私は、いま改革がもとめられているのは、そんなところにあるのではない。小選挙区制など民意をゆがめる選挙制度を改めること、それから、政府にたいする国会の監督機能を充実させること、国会を名実ともに、国民の代表機関、国権の最高機関にするというのが、一番大切なことではないかと思うのです。(「そうだ」の声、大きな拍手)
憲法9条は、21世紀の日本と世界の進路をしめす羅針盤
みなさん、憲法九条の値打ちというのは、いま、世界でも見直されています。ハーグの一九九九年の世界市民平和会議では、各国の議会に「憲法九条のように戦争放棄宣言を採択すること」をよびかける「行動指針」がうちだされました。
昨年五月の国連ミレニアム・フォーラムでは、憲法九条を各国の憲法に取り入れようという議論がされました。
私は、二十一世紀は、軍事力による紛争解決の時代ではもはやない。道理ある外交の力、平和外交の力こそ、世界の平和秩序を守る力になる。そういう時代が二十一世紀だと思います。(大きな拍手)
みなさん。憲法九条は、この世紀にあって日本の羅針盤であり、そして、世界の進路をも照らし出すのではないでしょうか(拍手)。私は、この九条、かけがえのない私たちの宝を、じゅうりんするあらゆるくわだてにたいして、九条を守れの一点で大同団結をし、憲法擁護の共同と運動を、立場の違いを超えて、大きく発展させることを呼びかけたい。(拍手)
そして、“憲法改悪の根源に日米安保あり”、そういうことであれば、二十一世紀の日本の羅針盤は日米安保ではなく、名実ともに憲法に切り替えようじゃないかということを最後に訴えまして、私のごあいさつにいたします。(歓声、大きな拍手)
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