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2000年10月30日(民主党、社民党とともに各党の法案を提出しました)
今次の大戦及びそれに至る一連の事変等に係る時期において、旧陸海軍の直接又は間接の関与の下に、多くの女性に対して組織的かつ継続的な性的な行為の強制が行われ、これにより、それらの女性は、その尊厳と名誉を著しく害されるとともに、心身にわたり生涯いやすことのできない傷を負うこととなった。
しかるに、我が国は、戦後五十年余を経た今日に至るまで、このことに対し国として十分な対応を行ってきたとは言い難く、そのような中で、被害を受けた女性の高齢化が進んでいる。
このような状況を踏まえ、我が国が、それらの女性の切実な要求と我が国の対応に対する内外の批判にこたえるべく、誠意をもってこの問題の解決に取り組むことは、緊要な課題であり、また、関係諸国民と我が国民との信頼関係をより強固なものとしていく上で不可欠なことでもある。そして、そのような取組を主体的かつ積極的に進めることは、女性に対する暴力の撤廃に向かって努力している国際社会において、同様の過ちを繰り返さないとの我が国の決意を改めて明らかにし、ひいては女性に対する暴力の撤廃の問題に対する我が国の姿勢を示すことにもつながるものであると信ずる。
ここに、戦時における性的強制に係る問題の解決を図ることを目指して、戦時における性的強制及びそれによる被害の実態を明らかにしつつ、当該被害を受けた女性の尊厳と名誉が害された事実について謝罪と償いの意を表すための措置を我が国の責任において講ずるために必要な基本的事項を定めるため、この法律を制定する。
第一条 この法律において「戦時における性的強制」とは、今次の大戦及びそれに至る一連の事変等に係る時期において、旧陸海軍の直接又は間接の関与の下に、その意に反して集められた女性に対して行われた組織的かつ継続的な性的な行為の強制をいう。
2 この法律において「戦時性的強制被害者」とは、戦時における性的強制により被害を受けた女性をいう。
第二条 政府は、できるだけ速やかに、戦時における性的強制により戦時性的強制被害者の尊厳と名誉が害された事実について謝罪と償いの意を表すために必要な措置を講ずるものとする。
2 前項の措置には、戦時性的強制被害者に対する金銭の支給を含むものとする。
3 政府は、第一項の措置と併せて、戦時における性的強制及びそれによる被害の実態を解明するために必要な調査を行うものとする。
第三条 政府は、前条第一項の措置を講ずるに当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束との関係に留意しつつ、関係国の政府等と協議等を行い、その理解と協力の下に、これを行うよう特に配慮するものとする。
第四条 政府は、第二条第一項の措置を実施するに当たっては、戦時性的強制被害者の意向に留意するとともに、その人権に十分に配慮しなければならない。
第五条 政府は、第二条第一項の措置を講ずるに当たっては、国民の理解を得るよう努めるものとする。
(財政上の措置等)
第六条 政府は、戦時における性的強制に係る問題の解決の促進を図るため必要な財政上又は法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
第七条 政府は、毎年、国会に、戦時における性的強制に係る問題の解決の促進に関して講じた施策について報告するとともに、その概要を公表しなければならない。
第八条 総理府に、戦時性的強制問題調査会(以下「調査会」という。)を置く。
2 調査会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 第二条第三項の調査を行い、その結果を内閣総理大臣に報告すること。
二 内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、戦時における性的強制に係る問題の解決の促進を図るための施策に関する重要事項を調査審議すること。
3 調査会は、前項第二号に規定する重要事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。
4 調査会は、第二項第一号に規定する調査及び報告を行うに当たっては、関係国等における戦時における性的強制に係る問題の状況等を踏まえつつ、その迅速な実施に努めるとともに、戦時性的強制被害者その他の関係人の名誉を害しないよう配慮しなければならない。
5 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長に対して、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めることができる。
6 調査会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
7 内閣総理大臣は、第二項第一号に規定する報告を受けたときは、これを国会に報告するとともに、その概要を公表しなければならない。
第九条 調査会は、委員十五人以内で組織する。
2 委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
4 調査会の事務を処理させるため、調査会に、事務局を置く。
5 前各項に定めるもののほか、調査会の組織及び委員その他の職員その他調査会に関し必要な事項は、政令で定める。
1 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次項及び附則第三項の規定は、公布の日から施行する。
(内閣府設置法の一部改正)
2 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
附則第二条に次の一項を加える。
3 内閣府は、第三条第二項の任務を達成するため、第四条第三項及び前二項に規定する事務のほか、戦時における性的強制に係る問題の解決の促進に関する法律(平成十二年法律第 号)が同法附則第四項の規定により効力を失うまでの間、同法の規定による戦時における性的強制に係る問題の解決の促進を図るための施策に関する事務をつかさどる。
附則第四条に次の一項を加える。
3 戦時における性的強制に係る問題の解決の促進に関する法律が同法附則第四項の規定により効力を失うまでの間、同法の定めるところにより内閣府に置かれる戦時性的強制問題調査会は、本府に置く。
(中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
3 中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第百二号)の一部を次のように改正する。
目次中「第三十条の二」を「第三十条の三」に改める。
第四章中第三十条の二の次に次の一条を加える。
(戦時における性的強制に係る問題の解決の促進に関する法律の一部改正)
第三十条の三 戦時における性的強制に係る問題の解決の促進に関する法律(平成十二年法律第 号
)の一部を次のように改正する。
第八条第一項中「総理府」を「内閣府」に改める。
4 この法律は、附則第一項の政令で定める日から起算して十年を経過した日にその効力を失う。
今次の大戦及びそれに至る一連の事変等に係る時期において旧陸海軍の関与の下に女性に対して組織的かつ継続的な性的な行為の強制が行われ、これによりそれらの女性の尊厳と名誉が著しく害されたこと、このことに対し我が国として十分な対応を行ってきたとは言い難い状況にあること等を踏まえ、我が国が誠意をもってこの問題の解決に取り組むことが緊要な課題となっていることにかんがみ、戦時における性的強制及びそれによる被害の実態を明らかにしつつ、当該被害を受けた女性の尊厳と名誉が害された事実について謝罪と償いの意を表すための措置を我が国の責任において講ずるために必要な基本的事項を定めることにより、戦時における性的強制に係る問題の解決の促進を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い、戦時性的強制問題調査会の設置に関し必要となる経費は、初年度約一億二千八百万円の見込みである。
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