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2001年2月9日 日本共産党国民運動委員会
「同じ仕事をしているのに、なぜ男性より賃金が低いの?」――多くの職場での女性労働者の不満と怒りの声です。とくに、九九年四月から労働基準法の「女子保護規定」がなくなって残業や深夜労働などが男性と同じにされ、ますます男性並みのきびしい労働が強いられているのに、女性の賃金は相変わらず低いままです。女性労働者の平均賃金は、パートを除いても男性の約六割強にすぎません。国際的にみても、男性の九割のオーストラリア、八割のフランス、イギリス、オランダ、七割強のドイツなどと比べてきわめて低い水準です。
労働者の四割が女性です。高学歴化もすすんでいます。女性正社員がこれまでより幅広い仕事や高度な仕事、男性と同じ仕事をし、圧倒的に女性が占めているパートや派遣労働者も、正社員と同じ仕事や責任のある仕事をするようになっています。このように女性労働者は、社会的にも企業内でもますます重要な役割をはたしています。
性別による経済的、社会的差別は、憲法第一四条で明確に禁止され、とくに賃金の男女差別については、労働基準法第四条で懲役または罰金刑で禁止されています。募集・採用、配置・昇進についても、男女雇用機会均等法が九七年の改正で禁止規定をもうけました。雇用の全般にわたって女性差別は禁止されています。
にもかかわらずこれほどの男女賃金格差がつづいているのは、異常というほかありません。
男女雇用機会均等法の改正とあわせて、女性の残業を規制し深夜労働を禁止していた労働基準法の「女子保護規定」をなくしたことは、母性保護の立場からみてきわめて不当なものです。しかも、これは、男女の雇用機会を均等にし、女性のはたらく場、活躍の場をひろげるためには「女子保護規定」をなくすことが必要だという企業側の主張にそったものでした。
残業や深夜労働などの法的規制をとりはらったにもかかわらず、一方では賃金や昇進・昇格、配置などの男女差をそのままにしていることは、二重の意味で不法・不当だといわなければなりません。
たしかに、法的には、男女別賃金体系など古い形の女性差別は禁止されています。しかし企業は、仕事と能力の査定(人事考課)による昇進・昇格差別や「コース別雇用管理」(昇進・昇格、賃金に大きな差のつく総合職と一般職などを別々に採用する制度)などの労働者支配のやり方を女性差別に活用しているのです。
ある精密機械企業では、昇格差別によって勤続三十六年で年収百七十万円の男女賃金格差があります。こういう実態を労働組合が具体的に明らかにして「女性差別がないというなら、おしなべて女性の能力が劣っているのか」と企業側にせまり、昇格差別と賃金格差を是正させました。
ある都市銀行では、女性一般職も男性総合職と同じ仕事をしていますが、年収で二百〜三百万円の格差があります。そのため女性のあいだで、総合職に移れるようにしてほしいとの要求が高まっています。労働省は、コース等の区分が実質上男女別雇用管理になっているならば見直しが必要だとしています。総合職女性でも、労働省の外郭団体の調査では、その五割が「昇進に男女差があると感じる」と答えています。
女性労働者のあいだから、せめてこれだけは解決してほしいという、次のような切実な共通の要求がだされています。
(1)仕事の内容、熟練度、労働時間、勤務形態が男性と同一の場合、賃金でのあらゆる格差を抜本的に是正させる
――交代制ラインをはじめ、男性とまったく同じ仕事をしている女性労働者が増えています。同一職種・同一年齢の男女賃金格差は、通信機器組立工(三十五〜三十九歳)で五割強、プログラマー(同)でも七割です。年齢があがると格差はさらにひろがります。ある自動車の職場では、多くの女性労働者が夜勤を含む交代制ライン作業につき、残業・休日出勤を含め男性とまったく同じ仕事をしています。
(2)同期同年齢男性との同一昇格をさせる
――初任給は男女同じでも、昇進・昇格には差がつけられています。ある繊維の企業では、女性は二十五歳で一律昇給をストップされ、男女格差は平均五割にもなります。芝信用金庫の昇進・昇格差別による賃金差別事件で、東京高裁は、「同期同給与年齢」の男性との昇格差別による賃金差別は労働基準法違反だとして是正を命じました。
(3)昇進・昇格は、仕事内容に即した試験など、だれもが納得できる客観的で透明な制度で行うようにさせ、結果の本人への開示原則を確立する
――芝信金判決はまた、昇格のための学科・論文試験は不公正・不公平ではなかったが、男性に対してのみ人事考課(査定)で優遇し昇格させていたとしています。多くの企業で、恣意(しい)的な査定で昇進・昇格が左右されるとともに、昇格試験があっても女性は受験を制限されたり、仕事内容と直接関係のないものが多かったりして、受かりにくいものになっています。
(4)中途採用初任給について、資格・専門性、経験・熟練度を性差別なく正当に評価させる
――結婚・出産・子育てでいったん退職し再就職する女性も少なくありません。東京都の調査では、中途採用初任給は、経験五年以上で男性二十六万五百円に対し女性は十九万五千八百円にすぎません。このことも、賃金を低くおさえる要因になっています。
(5)同一労働のパートなどの賃金は正社員との時間比例をめざし、少なくとも判例のある八割まで引き上げさせる
――正社員とまったく同じ仕事をしているパート・派遣労働者も増え、その低賃金が正社員の低賃金の重しになっています。ある電機工場の半導体ラインでは、正社員、期間工、パートの区別なく十二時間二交代勤務についていますが、時給にして正社員千六百円に対し期間工一千円、パート七百九十円にすぎません。丸子警報器の女性臨時社員の賃金差別事件で、長野地裁は、臨時社員の賃金が正社員の八割以下の場合は「公序良俗に反し違法」として、損害賠償を命じました。
日本では、労働者全体の賃金もきわめて低水準です。民間労働者の三分の一が年収三百万円以下で、労働者の七割が年収に不満をもっています。国際的にみてもドイツの六割、アメリカの七割、フランスの八割にすぎません(購買力平価での比較)。
このような低賃金構造を維持するうえで大きな役割を果たしているのが、さまざまな賃金格差です。“中小よりまし”“高卒だから”“パートよりまし”などと、格差が低賃金の重しとなっています。労働者全体の低賃金を打破するためにも、男女賃金格差是正は重要な意義をもっています。
同時に、地域最賃がパートの最低賃金の基準になっているように、男女の賃金格差を是正する要求は、地域最賃の大幅引き上げや、国民春闘で全労連がかかげている「誰でも・どこでも月額一万五千円」「時間額百円」引き上げなどの賃金底上げ要求と固く結びついています。
男女賃金格差是正の要求は、賃金底上げ要求と結びつき、財界・日経連の総額人件費抑制攻撃と低賃金構造を打ち破る大きな力を発揮するでしょう。広範な労働者の職場討議とともに、あらゆる傾向の労働組合の共同行動を訴えます。
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