2001年6月1日「しんぶん赤旗」で発表
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青年の自立は、青年自身の問題であるとともに、社会の健全な発展にも大切です。ところが、日本社会の現実は、青年に安定した仕事がない、大学進学には親の重い負担と援助が不可欠、十八歳選挙権でも世界の大勢から立ち遅れているなど、青年の自立に多くの障害をつくってしまっています。この克服は、政治に課せられた大きな責任です。
大卒者の就職率は五五%、高卒求人数は十年前の八割減など、きびしい就職難が続き、青年の失業率は約一〇%と全世代の二倍になっています。定職がなく、アルバイトなどで暮らしをつなぐ「フリーター」は、働く青年の五人に一人にまで急増しています。その平均月収はわずか十二万円程度、多くが年金、健康保険などの社会保険にも未加入という、自立した生計を営むのは困難な状態に置かれています。
こうした事態は日本の企業、産業の将来にとっても重大です。長期の新規採用削減で、労働者の年齢構成が「逆ピラミッド型」になったり、若い世代の不安定就労の増大は、仕事や技術が受け継がれない、という深刻な問題をもたらしています。十年後、二十年後の企業や産業はどうなってしまうのでしょうか。こんな未来のないリストラ経営から、日本企業がぬけだすこと、そのために政治が役割を発揮することが必要です。
ところが自民党と公明党の政府は、自らの責任を棚上げして、青年失業の増大は「若者の職業意識が不十分だから」(森前首相 参議院本会議)、フリーターの急増も「経済的豊かさの影響」(『労働白書』)などといっています。
日本共産党は、二月十三日に青年雇用政策「深刻な就職難を解決し、青年に働きがいのある仕事と、安心して働ける権利を保障するために」を提案しました。日本経済と日本社会は、ほんとうは若い力を大いに必要としています。サービス残業を根絶し、残業を減らすなどの労働時間短縮をすすめれば、新たに二百六十万人もの雇用が生み出されることになります。教育や福祉、消防などの分野でも、百万人以上の人手を必要としています。この実現に全力をあげます。
私立大学の学費(初年度納付金)は百二十八万円、国立大学でも七十七万三千八百円となり、一九七五年と比べると、国立大学が九倍、私立大学が四・六倍にもなってしまいました。十八〜二十代前半の「子ども」を大学に行かせるために親が長期のローンを組むという日本の現状は、学生になると奨学金などで経済的にも自立していく欧米では、信じられないような事態です。
ヨーロッパでは、大学の学費は基本的に無料で、最近、学費を導入したイギリスでも上限が千ポンド(約十八万円)です。アメリカでも、学生の六割が通う州立大学の学費は平均二千八百ドル(約三十五万円)です。大学など高等教育にかかる費用を、ヨーロッパ諸国はほぼ九割、アメリカでも半分以上を公費でまかなっていますが、日本は四割にもなりません。そのうえ日本の奨学金制度は、質、量ともに先進国での最低のレベルです。自民党政治の教育予算がいかに貧困なものであるかは明白です。
国際人権規約は、大学の学費を漸進的に無償にするとしています。この世界の流れに反して、政府は、国立大学の学費を十五年連続で値上げしてきました。これをあらため学費の値下げへと転換します。希望者全員に無利子の奨学金を支給するとともに、給付制の奨学金も導入します。これらは憲法・教育基本法が保障する教育の機会均等からも当然ですし、日本の科学・技術の将来や人材の育成を、まともに考えるなら、先進国の中で最低、最悪の大学教育予算の大幅増額と、負担の軽減を国政上の重要課題と位置づけるべきです。
選挙権の問題でも、日本は世界から大きく立ち遅れています。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどは、一九六〇〜七〇年代に選挙権を十八歳に引き下げ、すでに、世界で百五十カ国以上が十八歳選挙権(一部でそれ以下)となっています。二十歳または二十一歳という国は、二十一カ国にすぎません。
日本共産党は、長年にわたって十八歳選挙権の実現をもとめつづけてきましたが、青年の権利と自立という面からも避けることのできない問題になっています。
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