2001年6月1日「しんぶん赤旗」で発表
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文化・学術の発展は、豊かな人間性をはぐくみ、社会の進歩に欠かせないものです。日本国憲法は、文化・学術にかかわって、幸福追求権(第一三条)、思想・表現の自由(一九・二一条)、学問の自由(二三条)、文化的に生活する権利(二五条)などの規定をもっています。この精神をまもり生かして、文化・学術が豊かに花ひらく社会をめざします。
「残業、残業で観劇の時間などない」「この不景気で高いチケットに手が出ない」――長引く不況は国民をますます文化から遠ざけています。芸術家も、「芸術活動だけの収入」で成りたっているのは、わずか一五・六%です(文化庁調査)。専門家の多くが、赤字に頭を痛め、アルバイトに頼らざるをえない状況になっています。文化を自由に創造し、享受する条件を整えることは、政治の責任です。文化は「市場原理」だけにまかせられない分野であり、公的支援を中心に民間の協力もえて、経済的に支えることで多様な発展が保障されます。ところが、自民党政治は、長年、文化に冷たい政治を続けてきました。国の予算に占める文化庁予算の割合はわずか〇・一%で、イギリスの四分の一、フランスの十分の一にすぎません。文化を国民の権利として大事にする政治へきりかえます。
そのために、だれもが安心して創造活動に参加できるよう、公的助成の大幅な拡充と、専門家の社会的地位の向上をはかります。芸術文化振興基金による助成は、超低金利政策のもとで利子収入が減ったため、最高時の三分の一まで落ち込み、しかも、公演事業の赤字補てんが中心となっています。文化の創造活動には、発表以前の調査・研究や練習に大きなエネルギーがつぎ込まれていることをふまえ、そうした日常の運営経費への助成に力点をおき、助成額をふやします。映画、演劇などの後継者を養成する公的教育機関の設立をめざします。
同時に、すべての国民が気軽に文化を楽しむことができるよう、高すぎるチケット代に国や自治体が補助することや、文化施設の低料金化と利用時間の延長など、利用者本位にたった改善をすすめます。日本の文化を支えてきた自主的な文化活動への援助を強めます。子どもたちがすぐれた文化に接する機会をふやします。
こうした支援を実現するため、文化庁予算をヨーロッパなみに拡充することをめざし、当面二倍にします。文化活動にたいする個人や企業の寄付について優遇措置をもうけるなど、文化分野にふさわしい税制面での支援を充実します。
文化にかんする国の施策の基本的な理念や枠組みを示す基本法の制定をもとめる機運が高まっています。「文化貧国」の現状を打開し、抜本的、継続的な文化支援をおこなうために「文化振興基本法」(仮称)の制定にふみきるときです。その柱として、世界人権宣言や国際人権規約などの国際的な流れと日本国憲法の精神をふまえ、国民の文化的権利とそれを実現するうえでの国や地方自治体の責任を明記し、創造・表現の自由と文化活動の自主性の尊重をうたいます。また、専門家の役割にふさわしい社会的地位や、国民の文化的生活への参加を具体的に保障すること、財源の裏づけをもった基本計画の策定を国に義務づけ、文化政策の立案と実施への国民・関係者の意見の反映をはかることなどを盛り込みます。
学術研究の積極的な振興をはかり、多様な特性をもつ各分野のつりあいのとれた発展を保障することは、国の重要な責務です。ところが、研究開発費に占める基礎研究費の割合が一三%程度にとどまるなど、基礎科学の振興は軽視されてきました。今年度から政府がすすめる新たな「科学技術基本計画」でも、国家的要請の強い研究への重点投資や産業への応用策に偏重しています。基礎科学の豊かな発展を保障するために、科学技術予算の配分を見直し、人文・社会科学を含め、基礎研究への支援を土台にすえます。大学・研究機関の経常的な研究費の大幅な増額や、研究支援者の増員をすすめます。
国の学術振興策は、政府機関である総合科学技術会議だけでなく、科学者の代表機関である日本学術会議の意見を尊重しつつ、国会審議をへて決めるべきです。
わが国の学術の中心である大学の教育・研究機能を強めることは、社会の豊かな発展にとって不可欠の課題であり、ユネスコの世界高等教育会議が採択した「二十一世紀の高等教育宣言」(一九九八年)にも示されている世界的な流れです。ところが政府が検討している国立大学の独立行政法人化は、「効率化」の名のもとに、大学の予算と教職員を削減し、大学を政府の強い監督と関与の下におくという、教育・研究とは相いれないものであり、学術の衰退をもたらします。また、小泉首相がいう「国立大学の民営化」は、国が本来負うべき学術と高等教育にたいする責任を放棄するものです。
いま政府がなすべきことは、国立大学の独立行政法人化や民営化ではなく、国民の高等教育への期待にこたえる方向での各大学の自主的創造的な改革を支援することです。わが国の高等教育予算は、国内総生産(GDP)の〇・五%におさえられ、欧米諸国の半分以下にすぎません。予算を抜本的に増額し、国公私立にわたる教育・研究全体の豊かな発展の条件を充実させます。そして、スペース不足で新しい機器も導入できないなど、狭く老朽な国立大学の施設を抜本的に改修・整備し、私立大学への経常費助成を大幅に増額します。
文部科学省は、大学への予算配分権を利用して大学運営への関与を強め、大学の自主性や創造性を損なっています。大学の自治を尊重し、政府のゆきすぎた関与をあらためさせます。
自民党政治は、スポーツ予算を低くおさえる一方、スポーツをギャンブル化する「サッカーくじ」を導入するなど、スポーツをゆがめ、その発展の障害となってきました。これをただし、だれもがスポーツに親しめ、競技能力の向上をはかれるスポーツ振興に力をそそぎます。
身近で使いやすいスポーツ施設を拡充するため、施設の運営費まで利用者に負担させる使用料値上げにストップをかけ、車いすでも使えるバリアフリー化や全国十万人のスポーツ指導者の協力と参加によるサービス向上などをすすめます。企業チームの一方的な休・廃部や選手の解雇は、競技水準を停滞させ、選手の人権をおびやかしています。これに歯どめをかけ、ケガ・故障への労災保険の適用、選手の肖像権の確立、スポーツ科学の発展とその成果の活用などで、選手・コーチが安心して競技に専念できる環境づくりにつとめます。
「サッカーくじ」の収益金にたよる「スポーツ振興基本計画」(文部科学省)では実効あるものになりません。スポーツを国民の権利として保障し、国の責任と財源の裏づけをもつ基本計画の策定を定めた「スポーツ振興基本法」(仮称)を制定します。
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