日本共産党

中小企業は「日本経済の主役」、それにふさわしい本格的な対策を

1999年11月22日 日本共産党


 日本の中小企業は、全企業数の九九%を占め、生産、流通、サービスの各分野で大きな役割を果たしているだけでなく、勤労者の七八%が中小企業で働いているように、雇用の重要な担い手にもなっています。また、中小企業は「モノづくり」の基盤を形成し、日本経済や社会を土台で支えています。中小企業は、まさに「日本経済の主役」です。

 いまその中小企業が、かつてない危機にさらされています。大多数が赤字経営におちいり、これまでに例をみない高水準の倒産・廃業がつづいています。下請中小企業は、大企業のリストラ、大幅なコストダウンによって塗炭の苦しみを押しつけられ、商店街、中小小売店は、消費不況と大型店の進出で“二重苦”におちいっています。銀行の貸し渋り・資金回収が激化し、商工ローンの被害も急速に拡大しています。

 このような中小企業の深刻な危機は、日本の経済や社会を土台から危うくすることになります。いまの不況の最大の要因である個人消費の落ち込みを回復させる思いきった対策によって、不況を打開するとともに、中小企業にたいし文字通り「日本経済の主役」にふさわしい対策を確立することが強くもとめられています。

〈中小企業基本法の理念・建前を踏みにじってきた自民党政治〉

 現行の中小企業基本法は、その前文で「中小企業の経済的社会的使命が…今後も変わることなくその重要性を保持していくものと確信する」として、「特に小規模企業従事者の生活水準が向上するよう適切な配慮」「中小企業の経済的社会的制約による不利を是正」「中小企業者の創意工夫を尊重し、その自主的な努力を助長」して、「中小企業の成長発展を図ることは…国民に課された責務」と積極的な理念を明記しています。これを建前に終わらせず、文字通り実行することこそ国の責任です。

 ところが自民党政府は、これらの理念・建前を大きく踏みにじってきました。たとえば、中小企業基本法を制定した一九六三年に、「予算の大幅増額に道をひらく」と公約したにもかかわらず、この三十数年間、数年を除けば一貫して予算に占める中小企業予算の割合を減らしつづけ、ついに今年度は一般歳出のわずか〇・四一%と史上最低にまで落ち込ませてきました。

〈許せない中小企業基本法の大改悪〉

 しかも重大なことは、いま、この中小企業基本法の理念や建前すら完全に放棄する大改悪をおこなおうとしていることです。

 今回の改悪によって、積極的な理念・建前をうたっていた前文など、条文そのものが削除され、過当競争の防止、下請取引の適正化、中小企業製品の輸出振興や需要の増進、事業活動機会の適正確保、地場産業をまもるための「輸入制限(セーフガード)」など、中小企業の振興に不可欠な政策目標とされてきた規定も大半が削除されることになっています。

 代わって強調されているのが、「経営革新」「創業」「創造的事業活動」などです。これは、堺屋経企庁長官が「中小企業対策も、弱者として保護する対策をとらず、中小の中から強者を育てていく」(「朝日」九九年十月十日付)とあけすけに語っているように、中小企業対策をベンチャーなど一部の企業のてこ入れに重点化しようとするものです。しかし、ベンチャーといわれる企業は、いま六百五十万中小企業の〇・一五%、一万社程度にすぎません。もともとベンチャーというのは、これから中小企業になろうというものであり、これに中小企業対策を重点化するということは、圧倒的多数の中小企業は、冷たく切り捨てるということでしかありません。ここに貫かれているのは、「非効率な企業が淘汰される」のは「経済全体の効率化に寄与する」(中小企業政策審議会答申)という中小企業切り捨ての論理です。

〈いまもとめられるのは「日本経済の主役」にふさわしい対策の強化〉

 中小企業が日本経済と社会に果たしている役割をみても、中小企業の切り捨てが日本経済と社会にとって大損失であることは明りょうです。いま世界では、あらためて中小企業の役割に光をあて、対策を強化する方向こそが本流になっています。OECD(経済協力開発機構)やILO(国際労働機関)も、「持続的な経済成長」「地域の均衡のとれた開発」「雇用の創出」に果たす中小企業の役割に光をあてるよう強調しています。アメリカでは「中小企業週間」を制定して、その振興の重要さを国民のものにする努力がされるなど、欧米諸国では、中小企業を守り、振興するためのルールを強化することに力を注いでいます。そのときに、現にあるルールをなくしたり、積極的な理念・建前すら放棄するというのは、世界の流れにも逆行する異常なものです。

 日本共産党は、(1)中小企業予算を抜本的に増額する、(2)中小企業の経営に直接役立つ支援をおこなう、(3)大企業・大銀行の横暴をおさえ、中小企業の事業活動をまもるルールを確立する――ことを柱に、国と地方の経済・産業政策を大企業中心から中小企業重視に根本的に切りかえるよう、以下の提案をおこなうものです。

中小企業予算を抜本的に増額し、経営基盤を効果的にささえる支援をおこなう

 これまでの政府の中小企業予算は、融資対策が中心で、中小企業の経営実態に立ち入って、困難を打開する、新たな発展への支援をおこなうということが軽視されてきました。この三十数年間、予算の割合が年々減りつづけてきたのもそのためです。ここにも中小企業の振興に本気でない自民党政治の姿がよくあらわれています。今回の大改悪のもとになった中小企業政策審議会の答申も、中小企業予算について一言もないばかりか、「受益者負担」の導入を提起する始末です。これでは、国の責任を放棄し、中小企業対策をますます後退させるだけです。

 いま必要なことは、このあり方を根本的に転換し、予算の大幅な増額をはかるとともに、その内容を中小企業の経営支援に本当に役立つものに変えていくことです。

(1)国の責任を明確にし、中小企業予算を抜本的に拡充する

 政府の中小企業予算は、千九百二十三億円(九九年度)で、一般歳出のわずか〇・四一%にすぎません。ところが、その一方で無駄と浪費の大型公共事業を積み増し、大銀行に六十兆円も支援枠をつくり、破たんした長銀に中小企業予算の二十三年分にあたる四兆五千億円もの公的資金をつぎ込んでアメリカ企業に売り渡すという逆立ちぶりです。

 中小企業の保護・育成について国の責任を明確にするとともに、中小企業予算を抜本的に増額し、これまでの出資金や利子補給金などの融資偏重から、中小企業の経営を直接支えるものに改革します。

 東京・墨田区では、日本共産党の提案をきっかけに、一九七九年に中小企業振興基本条例を制定し、それを指針に対策を充実させ、すべての中小企業が共同利用できる中小企業センターをつくりました。担当職員もそれまでの八名から八十一名へと抜本的に拡充し、仕事おこしのためには商工関係以外の区の幹部もあげて参加するなど、融資・技術・人材・市場の各分野にわたって経営の内部にまで立ち入った支援をおこない、それが区内中小企業の大きな支えになっています。そのため、国からも都からもほとんど補助金がないなかで、一般会計の約二%を中小企業予算(融資を除く)にあてています。中小企業を本当に支援するためには、人の確保、振興のための施設の拡充がどうしても必要です。

 国の中小企業予算についても、少なくとも墨田区なみに一般歳出の二%に引き上げるべきです。

 中小企業向け官公需発注を増やす

 ……国の官公需の中小企業むけ発注率は、四〇・九%、地方は六九・四%にとどまっています(九七年度)。これをそれぞれ五〇%、七五%程度に引き上げるべきです。そうすれば官公需の予算はそのままでも、二兆円を超える仕事や物品を、あらたに中小企業に発注することができます。公共事業の浪費などをなくし、教育・医療・福祉など公共施設や住宅の耐震補強、高齢者むけへの住宅改造などにたいする補助を緊急に拡大し、中小企業の仕事を増やすことも重要です。

(2)中小企業施策を区市町村の仕事として法律上位置づけ、国が財政支援をおこなう

 政府は、「地方公共団体は中小企業の振興をはかる行政主体」(中小企業政策審議会)といって責任を押しつけていますが、そのための権限や財政措置はまったく保障しないという無責任さです。

 「都道府県には権限はあっても実態がわからず、実態がわかる市町村には権限がない」といわれていますが、中小企業は地域に根ざして事業活動を営んでおり、その業種もきわめて多様です。画一的でない中小企業施策は、基礎的自治体である区市町村が対策をすすめるのが適切です。そのため、中小企業施策を区市町村の仕事として法律上も明確に位置づけ必要な権限をもたせると同時に、それを国が財政面でも保障するようにします。

 中小企業は、個々の分野で高い技術をもっていても、それを生かし、顧客に支持される商品の開発や販売を具体化する情報、人材、資金などの経営資源を持ちあわせていない場合が多く、行政が中小企業の経営努力を実らせる支援をおこなう必要があります。そのためにも、地域の中小業者がどういう困難を抱えているか、どういう意欲をもっているかなど、中小企業の実態をよくつかむことがなによりも重要です。墨田区では、担当職員だけでなく幹部職員なども動員して区内全中小業者の実態把握につとめ、それが画期的な中小企業対策の強化につながったのです。こうしたことをすすめていくうえでも、中小企業を担当する職員の抜本的な増員をはかるとともに、区市町村ごとに中小企業振興条例をつくり、地元業者・住民・専門家を加えた「地域経済振興会議」を設置し、中小業者の要求、地域の要求を機敏に、正確に施策に反映できる仕組みをつくります。

(3)顧客の要求、社会的ニーズにこたえた製品開発・販路開拓を支援する

 政府は、「意欲のある中小企業」と「そうでない中小企業」とに区分していますが、とんでもありません。意欲をもてるようにするのが政治の責任であるにもかかわらず、意欲を奪ってきたのが自民党政治です。

 多くの中小企業は、「どんな製品を顧客が望んでいるか」を探究し、それにこたえた製品開発や商品調達に意欲を燃やし、力を注いでいます。そのため顧客にかんする情報の収集、製品化への技術や設備、人材の確保に真剣にとりくんでいます。共同化、ネットワーク化や異業種交流のとりくみも熱心で、異業種交流は全国で三千とも五千ともいわれる規模にひろがっています。「横移動のできる車いす」などの介護用品や「生ゴミ処理機」の開発などにみられるように、福祉・介護や環境という時代の要請にこたえた製品づくりも、中小企業の意欲と努力のなかから生まれたものです。このような努力にたいして、行政が大いに支援することこそ必要です。

 自治体に「中小企業支援センター」を設置する

 ……区市町村が、設備・技術・経営指導・情報提供・人材養成などで中小企業を支援する「中小企業支援センター」をつくり、それを国が援助するようにします。中小業者が手軽に利用できる場所に設置し、夜間開放など使いやすい運営をはかります。センターには、個々の中小企業が持ちえない高性能の機器を用意し、製品検査や新たな技術の習得に役立てたり、無料でパソコン実習や各種の技術研修会を開くなどします。また、新製品開発のための異業種交流や共同受注をおこなうグループの事務局を引き受け、専門家が種々のアドバイスをおこなうなどの運営をおこないます。

 モノづくりの集積地域への支援を強化する

 ……板金、鋳造、鍛造、切削、プレス、メッキ、塗装、プラスチック成型などの加工技術や金型づくり、試作品づくりなどはモノづくりの基盤であり、日本の製造業の土台です。この点で東京・大田区や大阪・東大阪市など、中小製造業が集中した集積地の中小企業を守り、発展させる対策の強化がもとめられています。日本共産党は、東京・大田区などの中小企業のみなさんと力をあわせて、九六年に東京都で独自の「工業集積地域活性化事業」を実現させました。いま国の制度としても、「地域産業集積活性化法」がありますが、予算を抜本的に増やし、指定地域や業種の拡大、補助率の引き上げなど支援内容を拡充します。

 人材の確保、技術の継承をはかる

 ……中小企業にとって人材は“宝”です。雇用を確保する中小企業を支援するとともに、中小企業退職金共済制度の拡充など中小企業で働く労働者への福利制度を充実します。衰退しつつあるモノづくりの基盤となる技術を継承し、発展させることを目的とした「ものづくり基盤技術振興基本法」がありますが、理念をのべただけで予算や具体策の裏づけがありません。高度な製造技術や伝統産業の技術を継承し、発展させるために、各分野のすぐれた技能者・職人の認定制度を創設し、報償金制度をつくるなど、そのために努力している中小企業や労働者を支援します。

 伝統産業・地場産業の振興のために

 ……輸入の急増によって繊維、皮革製品、木工、石材など各地の地場産業が深刻な事態におちいっているのに、政府は現行「基本法」にある「輸入制限(セーフガード)」を一度も発動したことがありません。WTO(世界貿易機関)協定でも認められている「輸入制限(セーフガード)」を適時に発動するとともに、地場産業がすすめている新商品の開発や販路開拓などを支援する対策をつよめます。

 創業を積極的に支援する

 ……創業に必要な経営上のノウハウを提供するとともに、事業展開に応じて相談にのる体制を区市町村に設けます。資金面では、無担保無保証人の開業融資を拡充します。女性創業者を積極的に支援し、差別をやめさせます。創業者は大部分自営業者であり、事業が失敗しても、最低限の個人生活が保障されるように、借入金の返済猶予などの措置を取ります。

(4)中小企業経営と生活を安定させる税の仕組みに切りかえる

 中小企業の事業承継については、事業の存続が可能となるよう、土地、建物、設備などにかかる相続税について、通常の評価額とは別の評価をおこない、通常の評価額による税額との差額は猶予し、十年以上事業を継続した場合は差額を免除することとします。個人所有の事業用土地については、二百平方メートルまで八〇%を控除する現行の措置を拡充します。

 法人税は、二段階、最低税率は二五%となっている最低税率を引き下げ、累進制を導入します。アメリカでは法人税は四段階の累進制、最低税率は一五%となっています。また、創業者の大部分をしめる自営業者への差別的な税制をあらため、自営業者本人や家族の労働にみあった勤労控除(自家労賃)を認めるとともに、自営業者の課税最低限を引き上げます。第二消費税となる外形標準課税の導入には反対します。

 九七年四月の消費税増税で、中小企業は売り上げと利益を激減させ、消費税の滞納は四年間で四割と倍加しました。消費不況の打開と中小企業の経営の安定のため、ただちに消費税を三%に減税します。日本は主要国で「納税者の権利憲章」を持たない数少ない後進国です。政府の強権的な税務行政で苦しんでいる中小業者をまもるため、「納税者憲章」を制定します。

(5)「中小企業政策会議」を設置する

 従来の中小企業政策審議会は、通産大臣の諮問機関であり、歴代自民党政府の大企業中心の産業政策の補完的性格がつよいものです。中小企業の実態を反映するよう、これを改組し、広く地方の中小企業経営者・自営業者の代表の参加による「中小企業政策会議」を設置し、直接、中小業者の声を行政に反映させます。アメリカでは、一九九五年「ホワイトハウス中小企業会議」を開き、全国から千八百名を超える中小企業経営者・従業員が出席、大統領への政策提言をおこなっています。

大企業・大銀行の横暴を規制し、中小企業の事業活動を守るルールを確立する

 日本の「モノづくり」は、下請・中小企業をぬきにして考えることができません。学者・専門家は「高品質なものを早く供給する体制はもちろん、ほとんどの分野で少量生産や試作品の生産体制においても、わが国は他国のレベルから抜きんでている。こんな高度な部品をこんなに早く作ってくれる国は世界に二つとない」と、日本の中小企業の役割と能力を高く評価しています。事実、新幹線や宇宙ロケットから携帯電話等々まで、先端産業といわれる分野の「モノづくり」も、その重要な部分を日本の中小企業の高い技術力がになってきました。また、中小商店や商店街は、住民の暮らしのよりどころとなり、地域経済と地域社会をささえています。

 このように日本経済を土台からささえている中小企業が、大企業・大銀行の横暴によってつぶされることは、産業や社会の土台を崩壊させることにつながりかねません。この中小企業の事業活動をまもるルールや体制の確立がどうしても必要です。

(1)大企業の横暴から下請中小企業を守る体制とルールの確立を

 不況のなかで、下請へのしめつけと切り捨てが拡大し、全国で悲鳴があがっています。

 下請代金の支払いや下請への発注にかんする一応のルールはあっても、それが実際には守られず、ほとんど効果を発揮していません。全国中小企業団体中央会の「下請中小企業(団体)の最近の動向調査」でも、「下請法の制度を利用すると、下請業者名がただちに判明し、当該業者の取り引きが縮小するというリアクションがあるので、これを恐れて活用できない」という、大企業の無法の前に、声もあげられない中小企業の悲惨な立場が報告されています。

 公正取引委員会自身、「下請取引の性格上、下請事業者からの下請法違反被疑事実についても申告が期待できない」(九八年版「公取白書」)とのべています。実際、公正取引委員会への申告による違反は、わずか年間十三件(九七年)となきに等しいものです。

 ソニー前会長の故盛田昭夫氏は、下請企業との前近代的な関係を「世界に通用しない」日本型経営の悪習の一つにあげましたが、いまこそ下請取引の公正化を、国の産業政策の柱として位置づけ、法的な面で充実をはかるとともに、行政面でも本格的な体制をとるようにしなければなりません。

 下請検査官を抜本的に増員し、告発まちにしない

 ……日本共産党は政府にたいし、あまりにも少ない下請検査官の問題を一貫して追及してきました。政府は一九七八年、日本共産党の不破委員長(当時、書記局長)の追及にたいし、「調査し、相談する」(福田首相)とのべ、二十六名しかいなかった下請検査官について「お答えするのはちょっとはずかしい」(橋口公取委員長)と答えざるをえませんでした。この追及が契機となって、ここだけは「行革」でも減らされず、六十三名にまで増員させました。しかし、数十万の下請業者にたいする大企業の「ルール」やぶりをチェックするためには、下請検査官の人員を抜本的に拡充・増員するとともに、きめ細かな検査をおこなうため検査官を自治体にも配置する必要があります。下請業者の告発を待つのではなく、系統的に「立ち入り検査」をおこない、「ルール」やぶりが発見されたら大企業・親会社にペナルティーを科すなど罰則を強化し、ただちに是正させるようにします。

 建設業界における工事代金の不払いや元請の倒産による下請の連鎖倒産など、下請被害が多発しています。ところが建設業の下請不払い問題の相談を受ける窓口は、建設省・建設業課にたった三名の担当者が置かれているだけで、ほとんど機能していません。各自治体では、専門の相談窓口そのものもありません。建設省に専任の下請検査官を配置し、自治体にも相談窓口を設置します。下請いじめを取り締まるために、元請責任を明確にした行政指導を強化し、不法・不当な行為にたいしては建設業法にもとづく「是正勧告」をおこないます。

 下請二法の改正・強化をはかる

 ……現行の下請代金支払遅延等防止法、下請中小企業振興法が無力であることは、政府の担当官も認めているところです。下請二法を改正・強化し、対象を製造業だけでなく他の業種にも拡大します。発注元大企業の責任を二次以下の下請にも及ぶようにします。一方的な発注の打ち切りや大幅な発注削減にたいしても、罰則が適用されるようにします。単価の切り下げ、取引条件の変更、納品拒否などをやめさせるとともに、下請代金の支払いは三十日以内、手形サイトは六十日以内とします。中小企業の労働条件を悪化させる終業後発注・翌日納品、休日前発注・休日明け納品などを禁止します。

 リストラ・アセスメントを実施する

 ……EU(ヨーロッパ連合)では、大規模な海外移転や、そのための企業規模の縮小・閉鎖、大量解雇などについては労資間で協議する仕組みがつくられています。わが党が雇用政策でも提案してきたリストラ・アセスメントは、雇用だけでなく、下請問題でも重要です。大規模な生産縮小、海外進出などによる下請企業切り捨てや人減らしを計画段階で自治体に報告させ、影響を調査したうえで計画の変更・中止を勧告できる法整備をはかります。

(2)無秩序な大型店の進出を抑えるルールをつくり、商店街・中小小売店の振興を

 大型店の出店ラッシュによって、この十年で、東京と神奈川の小売店合計に相当する二十万軒の小売店がつぶれ、商店街はますます疲弊し、九割を超える商店街が衰退を訴えています。商店街は、たんに小売業者だけの問題ではありません。高齢化社会をむかえ、顧客とのコミュニケーションを大事にする商店街の役割はいよいよ大きくなっているのに、大型店の身勝手な出店や撤退で、商店街をさびれさせ、街を荒廃させています。二十四時間営業で騒音・排ガスをまき散らし生活を脅かす事態も大問題となっています。このままでは、街は高齢者に住みにくくなり、子どもたちを育てる環境は悪化し、住民の暮らしの基盤が失われてしまいます。

 フランス、イタリア、ベルギーなどヨーロッパ諸国では、大型店の出店にたいして許可制がとられています。とくにフランスでは、大型店の出店を規制する法律「ロワイエ法」をいっそう強化する改正がおこなわれました。

 ところが小渕首相は、大店法を廃止して大型店の出店ラッシュを野放しにしておきながら、国会でのわが党の追及に、「欧米主要国の多くでは生活環境や都市計画の観点からの規制が主流。昨年の都市計画法改正等、大店立地法の制定によるわが国の対応はこれと同様の観点にたつもの」と答弁しました。しかし、「改正都市計画法」や「大店立地法」には、ヨーロッパと違って大型店の進出が生活環境や都市計画に悪影響を与えることが明らかな場合でも、一番肝心な出店を拒否する条項がありません。また、フランスなどでは、中小小売業の保護のため大型店の出店は許可制ですが、日本は原則として、出店自由です。このように日本の大型店への対応は、ヨーロッパとは“似て非なるもの”です。

 大型店の身勝手な進出・撤退を規制する

 ……日本共産党は一九九八年二月、「大店法改正案の法案要綱」を発表し、(1)大型店の出店を許可制にする、(2)自治体独自の規制ができるようにする、(3)中小小売商・消費者代表も加えた大規模小売店舗審議会の構成にする――などの提案をおこないました。その実現をめざします。

 大店法が廃止され、大型店の出店にあたっては「改正都市計画法」や「大店立地法」によることとなりましたが、それでも「生活環境を保持するために必要な施策を講ずる」ことができるという条項が残っており、それを活用することも重要です。当面、これが実効性を持つよう、地方自治体が独自の「まちづくり」条例などで、大型店の出店に必要な規制措置がとれるようにします。

 商店街の役割を発揮させるため、駐車場の確保、公共施設の配置、野菜・魚・肉類の生鮮三品を販売する小売店の確保、高齢者への配達など消費者の要求にこたえた商店街づくりを支援します。

 コンビニ本部の横暴から中小商店を防衛する

 ……加盟店を無権利状態に置き、本部に従属させるコンビニ契約は「奴隷の契約」といわれ、その被害が拡大しています。流通大手と納品業者との取引、コンビニなどフランチャイズ本部のフランチャイジー(加盟店)との取引関係など、中小企業にかかわるすべての取引について、独禁法の禁止している「不公正な取引方法」、「優越的地位の濫用」条項をきびしく適用します。ドイツでは約款規制法(一九七六年)で、事業者間契約について、「疑わしきは約款使用者(コンビニの場合は本部のこと)の不利に帰する」などを定めていますが、日本でも加盟店の本部にたいする権利を保護する法律をつくります。

(3)大銀行の貸し渋りを規制し、中小企業経営を安定させる金融の流れをつくる

 大銀行は、公的資金を手に入れながら、国際的投機でもうけをあげるため、国内では貸し渋りや支店の閉鎖など、地域経済や中小企業がどうなろうとおかまいなしという経営に走っています。また、銀行が国に提出した「中小企業への貸出計画」さえ未達成なのに、中小企業に高利で貸し暴力的な取り立てをおこなう「商工ローン」にたいし大規模に融資をおこなうなど、反社会的な行為さえおこなっています。このような大銀行の横暴を規制し、金融機関としての社会的役割を果たさせます。

 大銀行の貸し渋り規制、商工ローン被害の救済

 ……銀行の貸し渋りと商工ローンを野放しにしてきた自民党政府の責任は重大です。中小企業へ資金を供給するのは、銀行本来の社会的責任です。金融監督庁はただちに銀行の「貸し渋り」を是正し、本来の社会的責任を果たすよう指導すべきです。また「商工ローン」にたいする銀行の融資を厳しく規制すべきです。出資法、貸金業規制法等を改正し、商工ローンの悪質な過剰融資や連帯保証人への詐欺的手口などをやめさせ、年四〇%もの高利を利息制限法の水準にまで引き下げさせます。

 「地域再投資法」の制定

 ……アメリカの「地域再投資法」にならい、金融機関が地域の資金ニーズにどのように応じているか、具体的な数字を公表し一定割合の融資を義務づける日本版「地域再投資法」を制定します。融資審査は、「物的担保主義」にかたよることなく、中小企業のもつ経営方針や技術力、経営者の能力等を総合的に評価する仕組みをつくります。信用金庫や信用組合、地方銀行など、地域に根ざした金融機関の健全な育成をはかります。

 政府系金融機関の中小企業向け融資条件の緩和

 ……政府系金融機関が役割を発揮するよう改めます。貸し出し枠(予算)を実績が大幅に下回っている国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の融資をただちに是正します。また、返済期間の弾力化、金利の引き下げ、限度額の引き上げ、借り換え、手続きの簡素化など、利用しやすいものに改善します。政策投資銀行の「中堅企業向け貸し出し枠」が、大企業に横取りされている実態も改めさせます。

 無担保・無保証人融資制度の拡大

 ……中小企業信用保険法を改正し、特別小口保険の無担保保険との併用を認め、無担保無保証人融資制度の利用を広げます。信用保証協会、信用保険(中小企業総合事業団)への出資と補助金を増やし、信用保証を拡大します。倒産防止共済制度を改善し、中小業者が加入しやすいよう掛け金を引き下げ、連鎖倒産の被害を最小限にします。また、当面の資金繰りのため、「中小企業金融安定化特別保証制度」を来年四月以降も延長し、現行返済期間・すえ置き期間の弾力化をはかります。


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