保育所の待機児童問題を緊急に解決するために

2001年7月20日 日本共産党の提案


 「保育園に申し込んでも入れない」――子どもが減っているなかでも待機児童が増えつづけています。毎年4月の保育所入所時期には、3万人を超える乳幼児が入れず、年度途中の入所はいっそうむずかしく、10月の待機児童は6万人近くになります。最初から入所をあきらめている「潜在的な待機児」は、10万人とも15万人ともいわれています。

 こうした事態をつくりだした最大の原因は、大銀行・ゼネコン最優先の財政運営のもとで、保育所そのものの整備が極端に抑えられてきたことです。実際、70年から80年までの10年間で、約8000ヵ所の保育所が整備されたのにたいして、働く女性がふえてきたにもかかわらず90年代ではわずかに428ヶ所(1999年まで)しか増えていません。2000年度の創設はたった17ヶ所です。これでは待機児が急増するのは当然であり、自民党政府の責任は重大です。

 さらに、政府が1986年に、保育所運営費の国庫負担率を、それまでの10分の8から10分の5に引き下げたことは、国の劣悪な保育水準(最低基準)を補い、独自に予算を加算してきた地方自治体の財政負担をさらに過重にし、自治体の保育行政を後退させる要因となりました。

 待機児童問題を解決するにあたっては、こうした政府の責任を明確にすることが必要です。ところが、自民党小泉内閣は、定員の25%増しという「つめこみ保育」のやり方にくわえて、さらに「規制緩和」の名で、保育所の設置・職員配置を決めた最低基準(国基準)をも「緩和」し、保育を民間営利企業などの手にゆだねようとしています。国の責任を投げ捨て、「最小のコストで最大の受け入れ」を追求する、小泉内閣の「待機児童ゼロ作戦」は、乳児の死亡事故をおこした「ちびっこ園」のような所をいっそう広げることになりかねません。

 すべての児童は最善の環境のなかで保育されなければなりません。日本共産党は、待機児童問題を緊急に解決するために、小泉内閣の「安上がり」政策ではなく、公的責任を明確にした、以下の提案をおこなうものです。

 

一、保育所を緊急に新・増設し、ただちに3万人の待機児童を解消します。引き続き「保育所整備計画」をつくり、待機児童のでない保育体制を整備します。

(1)4月時点の3万人の待機児童をただちに解消するために、90人規模(全国平均)で370ヶ所の保育所が必要です。70年代には、公立だけでも毎年500〜600ヶ所の保育所がつくられています。政府がやるきになれば一気にできます。これに必要な財源は600億円程度で、国庫補助分は300億円にすぎません。公共事業等予備費の3000億円(2001年度)を削って、保育所の新・増設に振り向けます。

(2)15万人ともいわれる潜在的待機児問題に対処するために、国の責任で緊急に保育所の入所希望調査をおこない、調査をふまえて「保育所整備計画」を作成します。「計画」には、産休・育休明けなどの年度途中の入所と、待機児童の7割を占める0〜2歳児の受け入れ枠の拡大を盛りこみます。「整備計画」の進捗状況を毎年明らかにします。

(3)無認可保育所への国の補助・支援制度を創設します。無認可保育所は、公的保育の遅れを補い、乳児を中心に23万人の子どもを保育していますが、政府はいっさい支援措置をとっていません。一定の基準で保育をおこなっている無認可保育所に国の支援措置が急務です。また、認可を希望する無認可保育所への財政的支援をおこない、認可の促進をはかります。届け出と報告を義務づけ、行政が保育の実態を掌握し、指導できるようにすることも重要です。

 

二、国の保育予算を増やし、実態にあわない最低基準を抜本的に改善し、多様化している保育要求に応えられるようにします。

(1)保育時間を、勤務時間と通勤時間の実態にあわせたものにします。保育時間は、いまも午前8時から午後4時までの8時間が原則となっています。保護者の勤務時間と通勤時間をあわせた11時間を通常の保育時間とし、それ以降を「延長・夜間保育」とします。そのために必要な経費は、現行の補助制度による「つけたし」の扱いではなく、運営経費として位置づけ、増額をはかります。

(2)国の保育士配置基準を抜本的に改善します。保育士一人が受け持つ子どもの人数は、1・2歳児で6人、3歳児で20人、4・5歳児で30人です。いずれも数十年前に決められた基準のままで、諸外国と比べても格段に少ない職員配置です。安全な保育を保障するためにも、自治体の超過負担を解消するためにも、保育士配置基準を改善することが急務です。雇用の創出にも有効な対策となります。

(3)以上の改善をおこなうためにも、当面、保育所運営費を現在の2倍程度に引き上げ、新たに4000億円程度の増額を提案します。

 

三、「最低基準の規制緩和」による民間営利企業の参入に反対し、市町村の保育責任を定めた児童福祉法(24条)にもとづく保育行政をすすめます。

 小泉内閣は、民間営利企業のいっそうの参入をはかるために、劣悪な国の最低基準をもとりはらい、市町村の保育責任もあいまいにしようとしています。小泉流「改革」は、保育サービスを市場原理にゆだね、サービスが買えない低所得者を制度から排除する道をひらくものです。保育の公的責任を維持・拡大することがいま重要です。

 


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