障害者施策の拡充についての申し入れ
2002年11月27日
日本共産党国会議員団
「障害者の全面参加と平等推進委員会」
委員長 児玉健次
二十七日、日本共産党国会議員団の「障害者の全面参加と平等推進委員会」委員長の児玉健次衆議院議員と小池晃参院議員が、小泉首相にたいして、新「障害者基本計画」や来年度予算で、障害者施策を抜本的に充実させるよう申し入れました。その全文を紹介します。
「全面参加と平等」をかかげた国際障害者年(一九八一年)から二〇年余が経過しました。
この間、障害者施策は、関係者の努力で一定の前進がみられますが、障害者を取りまく現実はいぜんとして厳しい状況にあります。
とりわけ、来年度からの「支援費制度」実施にあたり必要なサービスが保障されるのか、また、難病患者や小児慢性疾患患者への医療費補助制度の「見直し」で自己負担が増えたり対象患者が減らされるのでないかなど新たな不安が起こっています。雇用や所得保障の課題も現下の不況のもとでますます深刻化しています。
国連では障害者権利条約の制定が検討されており、来年から新たな「アジア太平洋・障害者の十年」も始まろうとしています。政府においては、障害者の人権保障とノーマライゼーション実現のために、策定を予定している新「障害者基本計画」および障害者諸施策の抜本的充実をはかることがつよく求められています。
日本共産党国会議員団は、去る九月二十五日に障害者・患者団体との懇談会を開き、ここで出された要望をふまえて左記の重点的事項をまとめました。
年末に策定予定の新「障害者基本計画」や二〇〇三年度予算にもりこむなど、国の責任でこれらを着実に実施されるよう申し入れます。
1、21世紀にふさわしい障害者計画の策定と障害者福祉法の制定を
- 新「障害者基本計画」「障害者プラン」が二十一世紀初頭の計画・プランにふさわしく障害者の自立と社会参加を促進するものとなるよう、各省庁が数値目標を持つとともに、計画目標の引き上げ・充実をはかること。支援費制度の発足をふまえ、三年程度の重点期間を設定し、緊急整備を推進すること。全ての自治体において数値目標と年次計画を明らかにした障害者計画が策定されるよう義務化するとともに財政支援を行うこと。
- 障害ごとに法律、施設体系、福祉施策等が設定されている現状を改め、障害者の範囲を拡大し、総合的な障害者福祉法を制定すること。
- 国連で「障害者の権利条約」の制定の検討がすすめられているが、DPI世界会議の札幌宣言にあるように、日本においても、障害者にたいする人権侵害や差別のない社会をめざす「障害者差別禁止法」(仮称)を制定すること。
- 障害者の自立を阻害する扶養義務の範囲の見直しをすすめること。
- ICF(国際生活機能分類)の視点に沿って、選別的「手帳制度」を見直し、障害認定・等級制度の改正を行うこと。
2、支援費制度への移行をめぐる課題
- 障害者が必要とするサービスを選択できるよう十分な基盤整備を行うこと。そのため障害者関係予算を大幅に増額し、施設・在宅サービスの抜本的充実をはかること。
- 知的障害者の施設入所者の大幅負担増が予定されているが、利用者負担は現行を上まわることがないようにすること。
- 国の支援費基準は、障害者の自立支援にふさわしい額に設定すること。
- 支援費制度周知のため、障害者・家族にたいしてくり返し説明会を開催すること。
- 障害者支援のための人材の育成や障害者ケアマネージャーの養成、配置を積極的にすすめること。
- 利用料補助を増やすなど後見的支援制度を充実すること。
- 小規模通所授産施設を支援費の対象とすること。
3、難病対策の充実強化
- 難病患者の特定疾患治療研究事業について、自己負担増や対象疾患・対象者の削減を行わないこと。対象疾患を増やし予算を増額するとともに全額公費負担にもどすこと。 患者数五万人以上を理由とした対象疾患からの除外や、コンピューター判定による機械的認定取り消しを行わないこと。
- 小児慢性特定疾患治療費助成制度における全額公費負担を継続し、拡充をはかること。
- 難病治療に関する研究を進め、最新の診断基準等の普及をはかること。
- 肝炎ウイルス検査をすべての自治体で希望者全員が受けられるようにすること。肝炎キャリアについて、早期の専門医受診、医療費の公費負担を行うこと。国民への広報を徹底すること。
4、障害者に対する所得保障
- 無年金障害者に対する年金給付を速やかに実現すること。
- 障害者が自立して生活ができるように障害基礎年金、各種手当を大幅に引き上げること。
5、介護保険の負担軽減、医療体制の拡充
- 高齢の障害者の介護保険の負担を軽減すること。
- 障害者に対する医療費助成制度を確立すること。
- 高次脳機能障害、てんかんなどについて、障害に見合った対策を講ずること。
- 人工肛門・人工膀胱など補装具給付制度における自己負担を軽減すること。
- 診療報酬を再改定し、人口透析の時間制と食事加算を復活させること。
6、働く権利の保障
- 深刻な不況のもと、障害を理由にした解雇を禁止すること。
- 障害者の働く場の確保のために、法定雇用率、納付金を引き上げ、精神障害者を含むすべての障害者を雇用率および納付金の対象とする法制度に改めること。国及び自治体で、障害者の特別採用を行う等、雇用の場を確保すること。
- 重度重複障害者等にあわせた福祉的就労の場を整備すること。
7、小規模作業所に対する補助の拡大
- 概算要求では、無認可の小規模作業所に対する補助対象施設数が減らされている。大幅に増額するとともに、希望するすべての施設に対し補助を行うこと。
- 小規模通所授産施設の補助金を増額し対象の大幅な拡大をはかること。
8、障害児の発達と教育の保障
- 専門家による就学相談を充実し、障害児一人ひとりの障害と発達に見合った就学指導を行うこと。
- 地域に身近に通える小中障害児学級や養護学校及び養護学校高等部を計画的に増設するとともに訪問教育の拡大をすすめること。養護学校、寄宿舎の教職員定数の改善や老朽化解消をはじめとする施設改修など教育条件を整備すること。学童保育の受け入れ体制をすみやかに整備すること。
- 障害児のための医療・福祉・教育・子育てなどの支援策を拡充すること。障害の早期発見と治療、発達保障のための発達クリニックや通所指導相談などを整備すること。
9、情報アクセス権の保障
- 障害者情報バリアーフリー化支援事業の対象品目にパソコン本体を加えるとともに助成限度額を引き上げること。障害者向けパソコン講習を実施すること。
- テレビ放送の手話・字幕番組の拡大充実と受信機器の普及をはかること。緊急時の字幕放送について研究を進めること。
- 点字郵便物の無料制度や第三種、第四種郵便物の減免制度を継続すること。
10、バリアフリーなど社会参加の推進
- 役場、公民館、福祉施設など公共の建築物は、規模による除外規定を外し、「ハートビル法」によるバリアフリー化を義務づけること。既存のものは、改善計画を作らせ、補助を行い、整備目標をもって進めること。
- 障害者の移動の自由と安全確保の権利を保障するため、すべての施設・設備を対象に計画的に交通バリアフリー化を推進するよう、JR、大手私鉄などへの指導を強化すること。
- 交通運賃割引制度を、精神障害者等すべての障害者に拡大するとともに、一〇〇キロメートル制限を撤廃し、JRの特急・寝台料金も割引の対象とすること。
- 障害者むけ公営・公団住宅の建設を促進するとともに、ケア付き公共住宅の建設促進をはかること。
- 「身体障害者補助犬」の理解促進に努めるとともに補助制度を拡充すること。
11、障害者の参政権の保障
- 在宅投票制度の拡大、点字広報、点字記載の投票用紙の配布、投票時のガイドヘルパーの派遣、投票所のバリアフリー化など障害者の参政権を保障すること。
二〇〇二年十一月二十七日
日本共産党国会議員団障害者の全面参加と平等推進委員会
委員長 児玉健次
内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
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