2002年10月28日
日本共産党国会議員団「干潟・湿地チーム」(責任者・岩佐恵美)は、10月28日、「干潟等の保全及び復元の推進に関する法律案」(大綱)を発表しました。
「自然再生」の名のもとに、新たな自然破壊の公共事業の推進となるおそれが強い与党・民主党の「自然再生推進法案」と違って、現存するすべての干潟を存続させることを中心としたものです。
今後、環境NG0などのご意見をうかがいながら、法文化を進めたいと思いますので、ぜひ、ご意見をお寄せください。
今年は、一九九二年の地球サミットから十年目。八月末には、ヨハネスブルグ・サミットが開かれました。この間の世界の取り組みを点検するとともに、二十一世紀の地球環境保全にむけたさらに新たな一歩を踏み出す年です。また、十一月にはラムサール条約の第八回締約国会議が開かれ、失われた湿地の再生が大きなテーマとして論議されます。
国の内外で、湿地や干潟の重要さが改めて認識されていますが、日本国内でも、昨年十月、環境省が、干潟を含む全国五百ヶ所の重要湿地を指定し、ラムサール条約への登録を求める運動が強まっています。
日本の沿岸では、工業用地開発の埋め立てや干拓事業などによって、二十世紀の後半に約四割もの干潟が失われてしまいました。特に東京湾では九割、伊勢湾は三分の二、瀬戸内海も三分の一の干潟が失われました。ところが小泉内閣は、すでに事業目的が全く失われている諫早干拓事業をはじめ、八代干潟に重大な影響を及ぼす川辺川ダム建設や、沖縄本島最大の泡瀬干潟の埋め立てなど、環境破壊の無駄な公共事業を力ずくで強行しようとしています。さらに米軍普天間基地移設計画は、沖縄のサンゴ礁がつぶし、ジュゴンの餌場である海草群落を壊滅の危機にさらそうとしています。
干潟や浅海域は、海の環境を浄化し、多様な生物を育てる海のゆりかごです。また、渡り鳥の中継地を保全することは、日本の国際的な責務です。もうこれ以上、干潟や浅海域の破壊を続けることは許されません。干潟・浅海域の環境は、埋め立てなどで一度破壊されれば、回復は極めて困難です。いま、破壊を止めなければ、手遅れになってしまいます。また、壊された干潟等の環境を回復することも急務です。
そのために、日本共産党は、「干潟等の保全及び復元の推進に関する法律案」を提案します。
法案は、つぎのような特徴をもっています。
干潟がとりわけ海域の環境保全と渡り鳥にとって重要な役割を果たしていること、すでに広大な干潟が失われ、残された干潟・浅海域の全面的な保全が必要であることから、従来の環境保護法と違って、指定地域だけでなく、原則として一定規模以上のすべての干潟・浅海域を現状のまま保全し、その重要な機能の維持、回復、復元をはかります。
保全計画、復元計画を定める場合には、関係住民やNGOなどが参加する協議会を設置し、その協議の結果を尊重します。協議会は、保全事業の進め方について協議します。
また住民等は、保全地域・復元地域の指定や、本法に基づく規制等について、知事に求めることができます。
干潟等における埋立等(人命・安全に不可欠なもの)の知事の特別許可は、環境大臣の承認を要することとするほか、環境大臣は、本法に基づく知事の権限行使に対して意見を述べることができます。また環境大臣は、特に重要な干潟等を指定し、自ら保全計画を定めて保全事業を実施することができます。
この法律は、現在および将来の国民の健康で文化的な生活に資する良好な環境を確保し、あわせて国際的な環境保全の責務を遵守するため、自然環境及び生活環境の向上に重要な役割を果たす干潟及び浅海域を保全し又は復元することを目的とする。
国および地方公共団体は、ラムサール条約、生物多様性条約、渡り鳥に関する条約及び協定などの国際的取り決めを踏まえ、干潟・浅海域の現状を把握し、その保全のために必要な措置を講じなければならない。
1、 この法律において「干潟等」とは、次のいずれかに該当する区域または3に規定する区域として、知事が告示したものをいう。
2. 知事は、前項(1)(2)に該当する区域があるときは、その区域を定めて告示しなければならない。
3. 知事は、潮間帯の砂地、泥地、礫地、砂泥地区域であって、干出域の最大幅、面積が1の(1)の要件に満たない区域が、自然環境及び生活環境にとって、1の(1)に準ずる価値を有すると認めるときは、その区域およびそれに連続する浅海域を干潟等の区域と定め告示することができる。
1、 「干潟等の保全」は、次のことを言う。
2、 干潟等の復元
過去に干潟等であった区域において、干潟等の機能を復活させること
国及び地方公共団体は、干潟等の保全を的確に推進するため、干潟等の現状、干潟等が有している機能、野生動植物の生息・生育状況、干潟等の利用の状況など、干潟等の保全を図るために必要な調査を継続的に行う。
保全地域の指定、保全計画・復元計画の策定、保全事業・復元事業の実施にあたっては、関係住民、その干潟等の保全や利用等の活動をしている団体、干潟等について専門的知識を有するもの、関係地方公共団体、当該干潟等を含む公共施設の管理者などによる協議会を設置し、その協議の結果を尊重しなければならない。
1. 干潟等において、干潟等の機能を損なう次の行為は、保全計画に基づくものの他は、原則として禁止する。
2. 人命・安全を確保するために必要不可欠な改変については、知事が特別に許可をすることができる。特別許可は環境大臣の承認を要する。
3. (3)に該当しない工作物の設置は知事の許可制とし、許可の基準を設ける。
4. 非常災害のために必要な応急措置や、干潟等機能に重大な障害を及ぼさない軽易な行為などについて、除外規定を設ける。
1. 法施行の際、干潟等を改変する事業を実施している者は、知事に届け出なければならない。
2. 知事は、事業の中止または干潟等の機能を維持するために必要な事業の変更を求めることができる。中止等が困難であると認められる場合は、干潟等の機能の維持を旨として、知事と事業者が協議する。中止等を求められた場合または協議中は、干潟等の機能に影響を及ぼす工事等は知事の同意がなければ実施してはならない。
3. 関係住民等は、知事に対し、2の措置を講ずるよう求めることができる。
4. 事業者が知事または国の行政機関であるときは、前2項の「知事」は「環境大臣」とする。
知事は、干潟等への車両や船舶の乗り入れ、汚水の排水など、干潟等の機能を損なうおそれがある行為を禁止又は制限することができる。
環境大臣は、干潟等の保全を図るための基本的な方針を定める。方針を定める際には、公聴会を開催し、中央環境審議会の意見を聴く。
1. 知事は、干潟等保全基本方針に即して、干潟等の保全のための措置を講ずることが特に必要な区域を「干潟等保全地域」に指定する。
2. 干潟等保全地域には、保全措置を講ずべき干潟等の区域を定める外、干潟等の保全のために環境を保全する必要がある周辺区域を定めることができる。
3. 保全地域を指定しようとする場合は、あらかじめ協議会で協議し、その結果を尊重する。保全地域を指定したときは環境大臣に届け出る。
4. 関係住民等は、知事に対し、保全地域の指定を求めることができる。知事は、求めがあった場合は、協議会を設置して、協議を求めなければならない。
1. 知事は、干潟等保全地域を指定した時は、干潟等保全計画を定める。保全計画には、干潟等の現状、保全目標、保全のための事業、その他保全のために必要な事項を定める。
2. 保全計画を定めようとする場合には、あらかじめ干潟等の機能に及ぼす影響評価を行い、保全計画の案について協議会で協議し、その結果を尊重する。
3. 保全計画は環境大臣に届け出る。環境大臣は意見を述べることができる。
1. 知事は保全計画に基づいて保全事業を行う。
2. 保全事業は、環境影響評価を行わなければならない。保全事業の実施中及び実施後のモニタリング調査を行い、調査結果を協議会に報告する。協議会は、事業の推進又は見直しについて協議し、知事に意見を述べる。
1. 知事は、周辺地域における事業活動が干潟等の機能を損なう恐れがあると認める場合には、干潟等の保全のために必要な勧告を行なうことができる。特に干潟等の機能に重大な障害を及ぼす恐れがあると認める場合には、改善命令を行なうことができる。
2. 知事は、干潟等保全地域以外の事業活動が、干潟等の機能を損なう恐れがあると認める場合には、干潟等の保全のために必要な措置を講ずるよう、要請することができる。
3. 関係住民等は、知事に対し、1、2の措置を講ずるよう求めることができる。知事は、協議会の協議に付さなければならない。知事は、協議の結果を尊重する。
1. 環境大臣は、国際的又は全国的見地から、特に重要な干潟等を「国設干潟等保全地域」に指定することができる。指定しようとするときは、あらかじめ知事の意見、中央環境審議会の意見を聴かなければならない。
2. 本法の規定に基づく知事の権限は、「国設干潟等保全地域」においては環境大臣の権限とする。
3. 環境大臣は、国際的又は全国的見地から、干潟等の保全を図るために必要があるときは、本法に基づく知事の権限の行使に関し、意見を述べることができる。
1. 過去に干潟等であった区域(民有地を除く)で、特に干潟等の機能を復活させる必要がある区域を干潟等復元地域として政令で定める。知事は、復元地域を定めるよう求めることができる。住民は、知事に対し、復元地域を定めることを求めるよう要請できる。
2. 環境大臣は、土地の所有者等と協議して、干潟等復元地域について復元計画を定め、復元事業を実施する。手続きは保全計画、保全事業に準ずる。
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