日本共産党

「主張」

大学の再編・統合
地方から国立大をなくすのか

2002年2月11日


 ことしも、大学入試のシーズンですが、受験生からは、「大学の統廃合で、志望する大学や学部がどうなるのか心配だ」という、不安の声がきかれます。

 文部科学省が、昨年六月に発表した「遠山プラン」で、「国立大学を再編・統合して大幅に削減する」とし、国立大学の八割が、統合について他大学との協議や、学内の検討をすすめているからです。

教育うける機会奪う

 わが国は、戦後、高等教育の機会を地方に拡大するという考えから、「一県一国立大学」を原則としました。これを文科省は放棄するとし、国立大学のなくなる県が多数うまれることになります。

 これでは、各地に均等に保障している高等教育の機会が失われていくとともに、国立大学が貢献している地域の経済や文化、教育に打撃をあたえることになります。
 いまでも多くの県で、進学する高校生の四割〜五割が、県内の大学に入学しています。国立大学がなくなれば、自宅通学のできない他県の大学に進学するか、学費の高い私立大学に通うことを余儀なくされます。生活の苦しい家庭には、大学へ行くなというに等しいものです。

 また、文科省は、教員養成の大学・学部を、半分以上の県からなくす方針です。これをすすめれば、地域に根ざした教員の養成や、地方がもつ教育問題の研究などが困難になります。ゆきとどいた教育のために、三十人学級を導入する自治体が増えて教員増が必要なのに、その足をひっぱります。

 実際、地域から国立大学がなくなるような動きに対し、地元の自治体や教育関係者、商工団体などから、大学の存続を求める運動がおこっています。「地場産業の育成など地域経済に、国立大学の役割は大きい」、「地域の教育と密接な関係をもっている地元の教員養成学部は必要だ」。この切実な声に、文科省は耳を傾けるべきでしょう。

 文科省は、昨年六月の国立大学長会議で「努力がないなら見捨てざるをえない」などと脅し、個別の大学には統合の組み合わせを指図するなど、強引に統合へと誘導しています。しかも、「最終的には当省の責任で具体的計画を策定する」というのです。

 自民党の文教族である森喜朗前首相にいたっては、地元の金沢大学が教員養成課程を「存続させたい」と主張しているのに対し、「金沢に残さなければならない理由はない」と公言しています(「北國新聞」昨年十二月九日付)。

 このような強権的なやり方は、大学の自主性を押しつぶすものであり、ただちにやめるべきです。

 学生や大学教職員に事態を知らせず、国民不在の非公式な検討だけですすめているのも問題です。文科省は、情報を公開し、各大学の自主性を尊重して、大学内での討議を保障する必要があります。

共有の財産として

 「遠山プラン」は、小泉内閣の「構造改革」の一環として、「効率至上主義」を大学にもおしつけるものです。こうした方向に、学術や高等教育の発展はありません。

 国立大学は国民共有の財産です。その数を強引に減らすのでなく、国民の期待にかなう方向で、それぞれの大学を充実・発展させることが必要です。地方の大学については、その地方にふさわしい総合的な大学として、発展することが期待されます。政府に求められるのは、そのための条件整備です。


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