一、「農家の代表」にふさわしい役割がはたせるようにします
二、農地をまもり、有効利用をはかります
三、地域農業振興の提案をおこない、実現に努めます
四、国に農家の願いを反映した農政を要求します
五、「農民が主人公」の運営に努めます
農家のみなさん。この7月、全国の約3分の2の市町村で農業委員選挙がおこなわれます(沖縄は9月)。農産物の輸入増や価格暴落、BSE(狂牛病)の発生などで農業がますます大変になり、その立て直しが切実に求められているなかでの選挙です。
小泉内閣は、輸入急増や価格暴落は野放しのまま、大規模経営に農地や施策を集中し、大多数の農家を切り捨てる農業の「構造改革」をすすめています。農家にいっそうの低米価や米生産の削減を押しつける「米政策の見直し」も始めています。「こんな農政では農地は荒れ、村はさびれるばかり、なんとかしなければ」――多くのみなさんに共通した思いではないでしょうか。
地域住民も消費者の方々も農業の現状を憂えています。食の安全や環境への関心が高まり、農業の再建を願う声が広がっています。いまこそ、農家の思いを結集し、多くの関係者・団体との共同を広げながら、農政の転換をめざし、農業を立て直すとりくみを地域から大きく発展させようではありませんか。
農業委員会は、委員の大半が農民の選挙で選ばれ、国や自治体に意見を反映させることを大事な仕事にしています。同時に、農地の転用や売買・貸し借りなどにたいする許認可の権限をもつ行政委員会です。その権限や機能を最大限に生かすならば、国政にたいする農民の意見反映でも、地域農業の立て直しでも、農地行政でも、農家の利益をまもる積極的な役割をはたすことができます。
日本共産党は、農業の再建と食料自給率の向上を21紀の国民の生存にかかわる課題と位置づけています。そのとりくみの一つとして農業委員の活動を重視してきました。現在、日本共産党の農業委員は、公認・推薦、議会からの選任を含めて八百数十人が活動しており、農業委員会がその役割を発揮できるようがんばっています。
みなさん。農業委員会の活動をもっと発展させ、農業を立て直す力を強めようではありませんか。日本共産党は今度の農業委員選挙にあたり、次の政策をかかげて奮闘するものです。
いま、農業委員会は大きな岐路に立たされています。一つは、農業をめぐる情勢が厳しくなるなかで、日頃の活動が見えにくくなっている農業委員会が生まれていることです。とりくみが農地案件の処理に終わっている委員会も少なくありません。
もう一つは、政府が、農業委員会に大規模化の推進をおしつけ、政府の下請け機関に変質させる動きを強めていることです。全農家から選ばれる委員では一部の農家だけを優遇する構造政策は推進できないとして、公選制の廃止を含めた制度「改革」まで持ち出しています。全国農業会議所(農業委員会の全国段階の組織)も、大規模経営の育成を中心課題に掲げ、国にたいする要請も自民党政府の農政の枠内にとどめる傾向を強めています。
それだけに、農業委員会の「農家の代表」にふさわしい役割を強める活動が、今日ほど求められているときはありません。
農民の要求や農政問題を日常的に取り上げる――多くの委員と協力しながら、農地問題のとりくみとともに農家の要求や農政にかかわる問題を日常的に議論し、建議や意見書などを提出できる農業委員会にするためにとりくみます。
4年前に初当選した島根県瑞穂町の日本共産党の委員は、農民の思いをそのまま発言することに心がけ、最初は相手にされませんでしたが次第に共感を広げ、農政部会の設置の提案がみのりました。その結果、地域の農業問題を日頃から議論できるようになり、農家へのアンケートをもとに提案した町当局への予算要望案が建議として初めて採択されるなど、「共産党が出れば農業委員会も変わるもんだね」といわれるようになっています。
要求実現のため積極的に行動する――建議や意見書などでとりあげた要求を実現するために行動する農業委員会をめざします。そのために、市町村長や行政担当者との協議、議会活動との連携、関係団体との共同など積極的な働きかけ、世論づくりの先頭に立ちます。
学校給食への地元農産物の供給が各地で広がっていますが、茨城県藤代町では、農業委員会として教育委員会に食材調査を申し入れ、農協、町、父母などと協議を進め、先進地を視察するなど実現にむけてとりくんでいます。秋田市では、市の農林行政にたいする建議や要望書を毎年提出し、その執行状況などを市長や担当者と定期的に協議するとともに農道整備など市独自の施策には農業委員会の提案を受けて具体化するようになっています。
大規模化など農政の推進役でなく、農家の要求を第一に――輸入は野放し、農産物価格はすべて市場にゆだねる農政が、小規模農家だけではなく育成の対象とする大規模経営にも大打撃となることは、最近の経験でもあきらかです。こうした農政を無批判的に受け入れるのではなく、農地問題や担い手確保のとりくみでも、政府に対する建議でも、地域の実情や農家の要求を第一にし、農業つぶしの悪政には厳しい批判の声をあげられる農業委員会とするために努力します。
農業委員会の日常の大事な仕事は、農地を守り、有効利用をはかることです。農地法などにもとづく行政権限がある農業委員会にしかできないことであり、地域農業の維持や環境の保全にかかわる重要な仕事です。耕作放棄地も増えていますが、地域農業を立て直すとりくみとあわせて農業生産を続けることの意義と誇りを訴え、農家を励ましながら、農地にたいする農業委員会の責任がはたせるように努めます。
違法な農地取得、無秩序な転用を厳しく抑える――農地法は、耕作を目的としない農地の取得を禁止し、優良農地の転用を厳しく制限しています。そのために農業委員会に、農地の売買・貸借や転用にたいする許認可、違反した場合の告発や原状回復命令などの権限を与えています。この権限を生かし、違法あるいは無秩序な農地の取得、転用を許さないため毅然として対処します。
農地の有効利用をすすめ、荒廃農地の復旧に取り組む――高齢化などで耕作困難な農地が増えていますが、地域・集落での話し合いによる耕作者のあっせん、作業の受委託などによる耕作の維持をはかります。その際、引き受け手に過大な負担とならない地代や受委託料金などを決め、行政による援助なども求めます。退職高齢者や都市住民などの就農希望者にたいする農地のあっせんもすすめます。
荒廃農地の復旧などに自治体の助成を強め、有効利用をはかります。千葉県多古町では農業委員会が提案して荒廃した谷津田の復活に住民参加でとりくみ、近くの里山を含めて自然公園づくりを進めています。
農地にたいする重税を軽減する――多額の固定資産税、相続税が農地つぶしに拍車をかけています。当面、市街化区域内農地で生産緑地をもうけている自治体での追加指定と、未設定の地域での新設を関係市町村に求めます。和歌山市では標準小作料を上回る固定資産税を条例で減額していますが、この経験を普及します。
農業施設用地の固定資産税は農地並みが基本であると政府も認めています。地域の実態を調査し、宅地並み課税になっている施設用地・畜舎などの是正を求めます。その際、税額を上げている施設用地の造成費を実態に合わせて減額するよう要求します。
政府税調は農地の維持に大きな役割をはたしている相続税納税猶予制度の見直し・廃止を打ち出しています。全力で反対するとともに、農家や地域住民が保存を切実に求めている屋敷林や平地林も対象にするよう運動を広げます。
産廃や建設残土による農地汚染を防止する――産業廃棄物や建設残土の無秩序な埋め立てや投棄が横行し、各地で農地の汚染や周辺環境への悪影響が出ています。農地法にもとづく規制とあわせて自治体などに独自の条例をつくらせ、より厳しい規制を加えている例も各地に見られます。自治体や議会、住民運動などと連携しながら、農地や環境をまもる対策を強めます。
株式会社の農地取得をチェックする――株式会社の農地取得に道を開いた「改正」農地法が2001年3月に施行になりました。農外企業による投機や農地の荒廃を防ぐため、農業委員会に監視や調査・勧告などの権限が与えられましたが、それを実効あるものにするためにも、必要な体制や予算の充実を求めます。
武部農水大臣は昨年夏「民間企業の(農業への)参入を認める。そのために農地法『改正』も視野に」と表明しました。家族経営の解体、農地の一層の荒廃に導くものであり、農業委員会として反対の声を広げるために奮闘します。
自治体などに農業振興策などを提案・建議し、実現に力を尽くすことも農業委員の重要な仕事です。農協の広域合併がすすみ、市町村行政に対応した全農家を代表できる唯一の組織となってきている農業委員会のこの面での役割はとりわけ重要です。
全国町村会は昨年、農林漁業を重視した地域づくりを提言しています。「安全で新鮮な地場農産物」を求める地域の住民や消費者も増えています。この条件を生かし、多くの団体との共同を広げれば地域で実現できる施策はあります。そのために農業委員会が積極的なイニシアティブを発揮できるようにします。
実態をふまえた農業振興計画づくり――農家や地域住民の声を反映し、地域の実態にあった振興計画づくりを重視します。京都府宮津市では、農業委員会が集落座談会を繰り返しながら地域の「村づくり計画」を作成しています。それをきっかけに集落での営農組合の設立、そこでの機械導入・更新に対する補助、住民の九割が参加する「元気村・いきいき夏祭り」の開催などに発展しています。
地域特産物の振興、農家経営にたいする支援――高知県本山町、愛媛県野村町、岩手県九戸村などでは地域特産物にたいする価格保障をおこなっています。秋田県十文字町では農業用資材を無償貸与して農家の意欲を引き出しています。農産物価格の下支えなど経営が成り立つ農政への転換を国に求めつつ、自治体で可能な振興策、農家支援策の具体化にとりくみます。
新規就農者をふくめ多様な家族経営を育成する――認定農業者や法人だけではなく集落営農などを含め、地域の条件にあった多様な家族経営を農業の担い手と位置づけたとりくみを強めます。群馬県の甘楽富岡地区では兼業農家、退職高齢者、女性など農家すべての力を引き出し、多品目の生産を発展させて注目されています。
日本共産党は、国の制度として「青年農業者支援制度」(月15万円、最低3年間支給)を提案していますが、すでに各地の自治体で実現している、生活費、農地・住宅・施設のあっせん・貸与、技術援助などの支援策を広げます。土地購入の負担を軽減するため、農地保有合理化法人などが所有する農地を新規参入希望者に長期に貸し出す制度を提案します。北海道の帯広市では日本共産党の委員の提案で農家の負債を無利子の資金に借り換える制度などを創設し、後継者の負担を軽減しています。
地域の消費者・住民と結んだ振興策――学校給食への地場農産物の供給、朝市・直売所など消費者や地域住民との交流、共同を通じて農業に元気を取り戻す例が各地に広がっています。そこに自治体などの支援を求めるとともに農業委員会としてもその具体化に努めます。千葉県酒々井町では日本共産党の農業委員の提案で、農業委員会が朝市の定着・発展に力をそそぎ、地域農業の活性化につなげています。
都市農業や中山間地の農業を守る――都市農業における集出荷施設、ほ場整備、温室・ハウスなどの整備を支援し、市民農園・体験農園などのとりくみを広げます。
中山間地農地は大規模化中心では守れません。長野県栄村では農家負担の少ない、簡易な「田直し事業」を村独自におこない、農家から喜ばれています。中山間地の直接支払い制度の実態に合わない要件の緩和、地域や山林の維持も対象に加えるなどの拡充を政府に求めるとともに現場での柔軟な対応を要求し、その適用を広げます。
農地を守り、地域農業を振興させるとりくみは、農政の転換と結びつくなかで本格的に実を結びます。農業委員会が農家の切実な要求を結集することは、新たな農業つぶしが強まっている時だけにとくに重要になっています。
BSEの発生は消費者に食の安全にたいする不信を広げるとともに酪農・肉牛農家はもとより、食肉の加工・流通、焼き肉など関連業界に大きな被害を与えました。政府の責任を追及し、食の安全性確保や万全な補償を求める幅広い運動が広がっています。また2000年には、野菜の輸入急増にセーフガードの発動を求める運動が大きく発展し、昨年四月、ネギなど三品目に暫定発動させる力となりました。残念ながら小泉内閣によって本発動にはいたりませんでしたが、農家の切実な要求を背景に、農協や自治体、多くの諸団体と共同して世論を盛り上げれば政府を動かせることを示しました。国政に対する要求は多様です。日本共産党の農業委員は各地で消費税の引き下げ、米軍の低空飛行訓練の中止、町村合併反対など幅広い問題で意見書をあげさせてきました。
当面、国政に対して次のような要求、課題を重視してとりくみます。
BSE(狂牛病)被害を国の責任で補償する――BSE発生は、WHOやEUの警告を無視し、必要な対策を怠った政府に責任があります。原因究明や牛肉の安全確保など消費者の信頼を得る対策とともに、感染牛やその疑いのある牛の買い入れ、肉骨粉・廃用牛の買い入れなど畜産農家や関係業者の損失を補償するために野党4党が共同提案した「牛海綿状脳症対策緊急措置法」案を成立させるなど万全の対策を政府に求めます。あわせて地方自治体にも可能な施策を要求します。
小泉版農業「改革」に反対し、家族経営を大事にする――小泉内閣の進める農業「構造改革」は、日本農業の多くを担っている中小農家を切り捨てるものです。この「改革」に反対し、「続けたい人、やりたい人はみんな大事な担い手」として支援し、農政の対象にすることを要求します。
農家経営の安定には農産物の価格政策が不可欠です。政府が検討する「経営所得安定対策」は、価格暴落を野放しのままです。価格低落が続けば所得低下は防げず、本格的な経営安定を期待することはできません。国の農業予算の重点を価格・所得保障に据え、価格の下支えを確立するよう政府に意見書を集中します。
米作りと稲作経営を守る米政策に転換する――「米政策の見直し」の一つである稲作経営安定対策からの小規模農家の除外は集落での米作りを困難にします。生産調整の配分を米の生産数量に変更することは米べらしの確実な達成を最優先し、豊作時の青刈り、エサ処分も農家の負担に押しつけるものです。生産意欲を奪い、水田をいっそう荒廃させずにはおきません。このような「米政策の見直し」は中止し、ミニマムアクセス米輸入の削減・廃止、米価の下支え制度の確立、減反おしつけをやめ、転作作物に手厚く支援するよう要求します。
セーフガードの発動、WTO農業協定の改定――ネギなど3品目を含めて、輸入急増による国内農産物の打撃を回避するため、セーフガードの発動や実効をある輸入規制を強く求めます。
WTO新ラウンドが開始され、農業交渉も本格化します。政府は、「多様な農業の共存」を掲げ、多面的機能や食料安全保障を求める「日本提案」の実現をめざすとしています。それを真剣に追求するのなら自由化一辺倒の農業協定の改定は避けられません。WTO体制がもたらしている地域農業の深刻な現実をふまえ、米を自由化の対象からはずし、農業保護の一律削減を義務づける条項を削除するなど、WTO農業協定を改正する立場で交渉にのぞむよう、政府に強く要求します。
「農民の代表」にふさわしい役割をはたすためには、運営の面でも「農民が主人公」を貫かなければなりません。その立場から、農業委員の公選制廃止の議論にはきっぱり反対します。農業生産に実際に携わっている青年農業者や女性の農業委員への選出を重視します。
農民の要求に耳を傾ける――集落での座談会や要求アンケートなどを随時おこない地域農業の実態や農家の要求を委員会運営に反映できるように努めます。
京都府宮津市では、市の農業施策に初めて建議することになったときに、党の委員が「建議等専門委員会」の設置を提案し、1年かけて農家の意向調査や地域ごとの懇談会をおこなったうえで建議をまとめています。滋賀県長浜市の委員は市への意見書案を地域の農家にあらかじめ配布し、採択されるよう努力しています。
農業委員会だよりを発行する――農業委員会の活動を農民に知らせることも大事なことです。国は自治体の農政の解説だけではなく、農家の要求や関心にこたえられる内容で「農業委員会だより」が発行されるよう努力します。農業委員個人としても「農業委員ニュース」、地域民報などで農業委員の活動を報告するよう努めます
農地や税金問題などで農家の相談にのる――農業委員会の事務局や関係者の知恵も借りながら、農地の貸し借りや転用、相続や贈与、融資や補助金の活用などで農家の相談にのります。農業所得標準が廃止され、自主計算がいっそう重要になっている税金申告について、農民連などとも力をあわせて相談活動を強めます。
農業者年金の新たな制度が発足しました。一定の政策支援があり、年齢などにより条件は違いますが、旧制度より不利になる農業者が少なくありません。新制度の仕組みをよく説明させ、今後の経営や暮らしの見通し、希望に応じて選択できるよう相談にのります。
市町村行政からの自立、事務局の強化――農業委員会が市町村行政から自立することも大事です。自治体の首長が会長を兼務しているところは改めさせ、事務局体制の強化を求めます。委員定数の削減が各地で問題となり、町村合併を見こした広域化の動きもありますが、地域農業を維持・発展させる役割を弱めることには反対します。
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